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「ミニシアター、今どうなってますか?」シネマスコーレ・坪井さんの話

ご承知のとおり、未曽有の事態になっている昨今であります。
私の生活には欠かせないミニシアターの現状が知りたいと思い、劇場にインタビューをお願いしました。名古屋シネマスコーレ・坪井篤史副支配人のお話です。
いま、何が起きていてどんな状況になってるのか、何を考えてるのか? 

私自身の個人的な意見を正直にいうと、この状況下では映画館も流石にちょっと行けないなー、と思ってます。海外のニュースなどを見るにつけ、自分が感染源になるかもしれない前提で、今はなるべく外出は避けるべきじゃないかなと考えてます。

矛盾しますが、それでも映画館が心配だ。とても心配だ。なくなったら、本当に困る場所のひとつなのです。
だから、現状を知っておきたいと思いました。
これは名古屋の小さな映画館の話。しかし窮状に陥っている映画館、ミニシアターの状況は、多かれ少なかれ全国的に共通する部分があると思います。知ることや伝えることも支えになるのではと記事を書きました。自分にできることはそれくらい。映画に興味がない人にも、こういうことが起きていると知っていただけたら幸いです。以下、坪井さんのお話です。
(取材日:2020/03/29)

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― 劇場として異変を感じたのはいつ頃ですか?

うちの支配人・木全も僕を含めたスタッフも、最初はすぐ収束すると思っていたんです。こういう状態になるとは想像してなかった。
だんだん深刻になってきたのは2月下旬からですね。北海道が緊急事態宣言を出し、名古屋が全国2番目といわれた時には、まずいかなと思った。
「あ、マジで来るんだ」と実感したのは、木全の姿勢を見た時です。木全はご存知のとおり、もともと無頓着で何も考えてない人ですが、僕らより先に消毒、換気とか言い出した。そこで初めて実感しました。20数年付き合ってますが、こういうことを自分から言い出したのは初めてでした。
その矢先、1ヵ月間でみるみる事態が変わり、客がいなくなっていきました。
3月、シニア層が消えました。窓口で「シニアのチケットください」という言葉を聞く回数が激減し、1週間の合計人数がかつての1日分にも届かない数になりました。これはヤバイと思っていたら、他の客もいなくなり始めました。
最初はシネコンだけの話だとも思ってたんです。シネコンでは、春の稼ぎ手だったアニメ映画が公開延期になりました。ツイッターでもガラガラの映画館の危機的な写真がどんどん上がってくる。でもその時点では、ミニシアターはまだ大丈夫でした。館の特色が薄いシネコンで人気映画が突然なくなるのは本当に怖いことです。独自でプログラムを組んでいる我々のようなところは、まだ何とかなると思ってた。でも今は、急激に目に見える減り方をしています。

― 動員数的にはどんな変化ですか?

土日が2割~3割減になり、平日も翌週は3割減、先週は4割減くらいになってきました。1回の上映に1人や2人の時もあります。
デッドラインの数字を切る月が2、3か月続けば、いよいよアウト。お客さんが来なければ当然収入が入らず、支払いができなくなります。光熱費や家賃含め、もうどん詰まりになり始めてます。そうなれば自動的に終了しなくてはいけない。今が結構ギリギリで、今月はおそらくデッドライン寸前。最低ギリギリで3月は終わりそうです。

― 4月で上を向くようには思えない状況ですね。
  
コロナは3月で終わる、それまでの我慢だと思っていたら、それどころじゃなかった。ロックダウンもそうですが、都内の映画館が麻痺することは想定外でした。僕らは愛知で「客が0になるまでやるんだ」とか言ってたけど、東京が麻痺して映画そのものが入って来なくなるという危険を想像してませんでした。子ども向けアニメ映画の公開が延期になっても、映画館ごと閉まるとは思ってなかった。週末に映画館が閉館すると、そこで始まる映画が全国的になくなってしまうわけです。それはいずれ我々のところにも来る。
都内はシネコンだけでなくミニシアターも閉まりました。時間短縮で営業しているところもありますが、やってる方が少ない。通常ミニシアターの場合、東京と名古屋同時公開の映画はほとんどなく、1週、2週遅れ。うちも1週遅れの公開作が4月も5月もありますが、東京の劇場が休館し、週末休館はしばらく続く。そのうち名古屋の公開日が来てしまうとその映画は公開できない。今は世の中がさらに悪くなり、土日どころか完全シャットアウトのギリギリになってきました。もう仕方ないです。4月に入り、多分我々が今考えているよりもさらに悪化するでしょう。

― 名古屋も閉館を余儀なくされる可能性はありますね。

強制的であればもう仕方ない。けど、そこまでギリギリどう戦うかですよね。
東京が閉じ、名古屋はまだなんとなくやってますが、これが都市封鎖とかで例えばGWまで規制になるとヤバイですね。愛知県がどう対応するか。自主規制で閉館か、それとも強制的なのか。1ヵ月休館ならどうするか。
例えば3ヵ月間休館すると、以前の状態に戻すのに1年半くらいかかります。経営的にも超マイナスからのスタートになり、お客さんも3ヵ月後に急に来てはくれない。となると自動的に経営アウトになる可能性があります。その前にスタッフがいなくなるかも。そうなる前に、とにかく何か考えないといけないと思います。

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― 坪井さん個人的には、今はどんなお考えですか?

僕としては「なったらなった時」という精神ではあります。それまではやれるんじゃないか、とは思う。問題は集客ですよね。例えば今日は日曜ですが、昼までの2本で計25人くらいで、これは奇跡的です。一桁でも来てくれたらすごいと思ってた。もう上映できることが奇跡になってきました。うちはまだ客0人で上映が止まったことだけはないんです。1人とか2人の時もありますが、ずっと劇場として生かしてもらってる。その人たちがまだいる限りはやりたいし、国のお達しがくるまではとにかく戦うつもりではいます。ただ、悲しいのはスコーレの特色だったことができないんです。

― 舞台挨拶などのイベントですね。

はい。ゲストを呼べない。途中で何かが起きたらと思うと呼べない。来てくれても動員はもう見込めない。自主的に来てくれるゲストも、おそらく今後は自粛されていきます。換気や消毒はもう当たり前、今は最前列を封鎖したりして対応してますが、今後は確実になくなっていく。今週も3つあった舞台挨拶が1つ消えました。

― 今はお客さんにも「皆さん来てください」と言えないですよね。

そうなんです。映画も同じで「この映画すごく面白いです、映画館で見てください」と言えない。「自ら病気になれと言ってるんですか?」と言われてしまう。声を大にして「見に来てください」とはやはり言えない。

― ライブハウスで無観客演奏とかありますが、映画館は集まって大画面で映画を見ること自体が存在意義そのものですよね。

そうなんです。「無観客映画」なら配信でいい。ただ僕が思うに、微々たる人数かもしれないけど「らしいことやってるよね」というプログラムを組むことはできるかなと思いました。こんな世の中だけど、これをやってるスコーレなら一回くらい行ってもいいかなと思わせることを考えるしかない。

― ゾンビ特集とかですか?(笑)

そうですね。日本映画でゲストを呼ぶ集客はもうできないから、逆にスコーレらしいことやってるねと思ってもらえる劇場にするかなと。そういうことをしたって来ないかもしれないけど、やっていかない限り、お客さんは映画館で映画を見ないと思います。すでにシネコンでは映画の数が減ってしまい、最初は「シネコンで見るものがないとミニシアターに目が向くんじゃないか」と冗談を言ってました。例えば韓国映画ファンが、シネコンで上映されなければこっちに来るかと思ったんです。今週も多少そういう人たちがいます。「スコーレってよく分からないけど行ってみよう」と新しく劇場を覚えてもらうチャンスかもしれませんが、まずうちが存在してないと、そこまでたどり着けない。

― 映画館って、無いなら無いで、慣れていきますからね。

はい。すでに慣れている人が半分くらい。「家で見ればいいじゃん」って。それでも映画のことを忘れないでいてくれるなら嬉しいです。どんな状況でも映画を見てくれてたら、映画館が安心できる場所になった時、また来てくれるかもしれない。

― そこまで継続できずに、すでに映画館がない状況だとどうしようもないですもんね。

ライブ、スポーツ観戦、全部そうですが、こっち側が火を消したらアウトだと思います。映画館だということは言っていくべきだと思うんですよね。映画館が閉鎖されたら例えば無観客で映画トークをして配信とかもできる。でも今はそこまでしたくない。なるべく劇場を継続させたい。
シネコンの場合ですが、映画業界的なターニングポイントがあるんです。今、どこの劇場も切羽詰まってますが、ある一つの光をみんな信じてる。それは、春に公開予定の人気シリーズ映画。地方シネコンもどうにかそこまで我慢して続ければ景気を取り戻せると思ってる。今の最終デッドラインです。

― でも今の感じだと…。

はい、多分アウト。そうなればシアターは崩壊して、おそらく自主的にみんな閉めてしまうと思ってます。とにかくそこまではやろうとしている劇場がほとんどです。最悪の事態は自主的に閉館。うちと名古屋シネマテークさんは名古屋で唯一の独立映画館ですが、もし生き残れてもバタバタと他の映画館が倒れたら、その風潮に勝てるかですよね。

― 今は本当に厳しい状況だと思います。映画以前に都市機能がなくなって、海外のようにスーパーと薬局だけになるかもしれない。もしそうなったら、どうなりますか? もし閉めたら、復活は可能ですか?

僕らの場合、いつ開くかの保障がない。その制度もないまま閉じろということになると、経済力がなければ再オープンはできない。まだその実感がないところではありますが。現場にお客さんはまだいるから、今はとにかく彼らに見てもらう作業をしていかないと。閉まる可能性、自粛しろといわれる可能性も頭の片隅にはあります。「経営していただくのは自由です」と言われて×じゃないけど△なら、自ら×にならないこと。△の状態でずっと継続して、もう舞台挨拶もない、入ってくる作品もない、新しい映画なんかやれない、もう企画力云々という話でもない。それでも劇場としてやることを示すなら、過去にあるものを引っ張り出して企画していくしかない。

― 自主映画もたくさんありますよね。この逆境で、逆に燃える個人映画みたいなのはたくさん生まれるんじゃないかと思います。

そうですね、唯一助かるのは、うちの劇場は昔から、監督たちが持っている過去作品と独自の付き合い方をしてきているのは良かったです。シネコンはそれがないから大変です。映像作家たちは新作が撮れなくてもカメラと自分でドキュメンタリーもできるし、セルフで自主映画を撮る人もいます。作品が生まれたら配信したり、ミニシアターで上映してくれという人はいるでしょうね。連携して映画館をつぶさずにいけるか。そこはスコーレは強いと思います。
映画があるならどんな方法でもいいから、1日1本でもいいからうちは映画館として開けますよ。今はいい時代になったのでネット配信も使えますし。

― シネマスコーレ有料チャンネルですね。

お客さんがいなくても、配信の舞台挨拶やトークショーは生まれるかも。生で観たい人は劇場に来てくれればいい。スコーレの強さは出せると思います。それで面白い映画があれば、また来てもらえればいい。

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― 映画館を応援したい人は、多いと思います。

まだ我々も危機感を伝えていないから、まだやれていると思われてるだろうけど、現実はそうじゃないですからね。日本だけ、名古屋だけならまだどうにかと思うけど、なんともならないところに来てます。
本当に、外国映画でたくさん見てきた「世紀末になって地球上にウィル・スミスしかいません」みたいな状況に近いですよね。もう復活も難しい。映画みたいなことが現実になっている。
でも僕や支配人みたいな人間が挫折したら、本当にアウトだと思う。劇場が閉まっても、映画のことを忘れてもらいたくないし、その方向だけは考えたいです。自分は映画に生かされてるような人間で、そこにまだ来てくれる人のことを考えようと思います。でも本当に今日も何が起きるかも分からない。昔なら1ヵ月後の予想で良かったけど、今は明日すら見えない。数時間後に何が起きるか分からない。その怖さをみんな背負って、やってます。肝はもう据わっている。

― こうして話してても「あの日は呑気な状況でしたね」という可能性もあります。本当に何が起きるか分からない状況になりました。

あり得ます。夕方には何かが起きて「たった数時間後でしたね…」とか。いい経験だけど、あんまり経験したくなかったなーと思う。目に見えないものと戦うなんて最悪のシナリオ。
とにかく目の前のことをやりつつ、ダメになった未来も想像しないといけない状況です。明日どころか、今日夕方の上映ができるのか。今日一日やれて良かったなって、今日のお客さんのために映画が上映できれば。それが救いです。

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状況が刻々と変わりつつある今、この後どうなっていくのかもお届けできればと思っています。
インタビュー記事は上記が全て。で、以下は有料記事にして劇場支援に回します。有料部分には「映画狂人坪井さんが、このパンデミックに『あの映画と同じだ…!』と動揺した映画のタイトル」が2本書いてあります。それだけです。しかし映画館への応援投げ銭としてポチッとしていただければ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。

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「ミニシアター、今どうなってますか?」シネマスコーレ・坪井さんの話

miyabi yamaguchi

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