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本読みの履歴書 14

さて、下書きにあと何回か入っているので出してしまいましょう。
前回はこちら。そして今回もまだまだ高校生でございます。


<ヲタク少女の系譜>

80.トーマス・マン 「ヴェニスに死す」 岩波文庫

これはもう同人誌やってた頃、大学生のお姉さま達が
「ビョルン・アンドレセン! きゃあきゃあ!」(←映画)
と騒いでいたので読んでみた本。当時の私はまったく彼には興味もなく、というかどちらかというと「なんでこの顔が好き?」みたいな感想でした。しましまの水着も自分的には興ざめだったし。

ああ、そうなんです。JKのころ、同人誌を作ってました。マンガの。
お姉さま達とは親しかったわけではなく、こちらが勝手に憧れてファンのように彼女らの数段レベルの高い同人誌を購入してた、というただそれだけの関係でした。
一緒に同人誌をやっていたのは同学年の少女たち。
うまい子もいればうまくない子もいて、自分はどちらかというとうまくない方のメンバーでしたね。

まあそんなわけで読んでみたんですが、本の方が良かったです。
マーラーがモデルとされる主人公の作家が、少年を求めて病魔の巣くう街をフラフラ徘徊するのが強烈でした。

いま? いまだったらお姉さま達と一緒にきゃあきゃあでしょう(笑)。


81.ヘルマン・ヘッセ 「知と愛」 新潮文庫

お姉さま達の「きゃあきゃあ」からもう一冊。ナルチスとゴルトムント。

やはりへなちょこ同人誌時代、勝手にファンになった大変お上手な某お姉さま(当時はアマチュア)がいらして、レベルの高い同人誌でガンガン描いておられたんですね。その中でQUEENのブライアン・メイとロジャー・テイラーをモデルにこの本のイメージイラストを描いていたのです。それが著しくお耽美で美しかったので、本も読んでみました。

ブライアンは年を取っても全然イメージ変わんないけど、ロジャーは当時は若くて痩せてて金髪で美形だったです。 ←実は金髪系英国男が好きな森野。

それまでヘッセは「車輪の下」、「デミアン」のイメージしかなくて食わず嫌いだったんだけど(本当に食わず嫌いで「車輪の下」もあらすじだけ見て読んだことがなかった)、これを読んでかなりイメージが変わりました。
後に「荒野のおおかみ」を読み、いろいろと胸に迫るものがありました。ヘッセって悩める人だったのかなあ。まあ作家なんて悩みがないと何も書けないのかも。



82.稲垣足穂  「少年愛の美学」 文庫だった・・・?

やっぱり素質があったのかしら。

同人誌にどっぶりつかってたころ、ルパン三世のコミックス(原作のモンキー・パンチのやつ)を探していて、本屋で目に付いたこれをいきなり買ってしまいました。ルパンと全然違うがな。当時はamazonなんかなかったので、というかamazonどころかインターネットも携帯電話もなかったので、本屋を何軒も歩いてはしごしていました。

同じ足穂でも飛行機がたくさん出てくるのはダメ。機械系は興味がなくてパス。これは森博嗣でも同じです。機械やメカってあまり興味がわかないです。こうした「興味」「関心」ってどこから来るんだろう? なぜ興味のある領域とない領域が分かれるのだろう?

素質はあって嫌いではないのに、どうしてもBL方面には行かなかったのですね。これもなぜかなあ?
でもブロマンスは大好物。
あれかな、性的な関係が入ってくると好みじゃないのかな。


83.森茉莉 「恋人たちの森」 新潮文庫

これははずせない絶対。BLいまいち、日本文学ダメと言いながら、唯一、この時期にのめりこんだのが森茉莉。父上より娘。女の子系オタクとBLの元祖だと思います。だけど全集は買ってないんだなー。「甘い蜜の部屋」だけはハードカバーで家のどこかにあるはず。

ところで、その昔、大学の授業でYG性格検査というのをやりました。ちょっと前まではあちこちの採用試験なんかでも使われていたと思います。開発者の名前の頭文字を取ってYG。Gの方は元々のアメリカの学者の頭文字ですが、Yの方は日本人で、矢田部達郎という昔の京大の教授だそうです。
でね、この本にはそれぞれ別の短編が4つ入っているのですが、最後の「日曜日には僕は行かない」という物語のモデルは矢田部先生なんだそうですよ。知ったとき仰天したよ。 

ええとネタバレ上等であらすじを書くと、主人公は中年のイケオジ作家で、弟子だった若い男が結婚するというので嫉妬して彼を婚約者の女性から奪い取ってしまうのです。BLの極北ですなあ。

もちろんこの小説のようなことが実際にあったのではなく、森茉莉が妄想の限りに羽ばたかせたのですけどね(そうだよな多分)。矢田部は森茉莉の離婚した夫君の友人だったようで、実際にイケオジだったのかな。

ただ、わたしが一番好きなのはこの作品ではなくて表題作の「恋人たちの森」の方です。お耽美の限りを尽くし、どのような結末であろうと圧倒的な美しさを失わない文章が、好きだなあ。
麵麭パン牛酪バターとかね。



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