仮想現実が広がる世界【210】
1.そもそも仮想現実とは
仮想現実とは英語にするとVirtual Realityと訳されVRと略されることもあります。広義のVRとは、その創造された仮想現実をまるで現実であるかのように、人間の五感を刺激して体験させるテクノロジーや概念の総称を指します。VRには明確な定義はありませんが、一般的にはVRヘッドマウントディスプレイやVRゴーグルなどを使用することで、360度に渡る視野や音場、あるいは触感などを確保し、仮想現実で創造された空間に自身が入り込んでしまったような覚を得られるものという形で認識されています。
2.VRの実用例
Ⅰゲーム
VRが最も活用されている業界といえばゲーム業界です。
すでにイギリスではVRゲーム市場が85億円だと推定されており、2016年から2020年にかけて世界のVR市場は84%以上成長すると言われています。
日本ではまだまだ遊べるソフトが少ないことから下火ではありますが、今後のVRの普及をけん引する分野と言えます。
Ⅱエンターテイメント
身近でVRを体験するのに最も適しているのが、VRスポットと言われるテーマパークです。VRの特徴を生かし、スペースが取れない都心の一角でも、エンターテイメントの可能性を無限に広げてくれます。
現在VRアトラクションを体験できる施設が増えてきています。
Ⅲ広告
FacebokなどSNSを見ていると360°動画が流れてきたのを見たことがある人もいると思います。広告業界でも積極的にVRを活用する企業が増えてきました。すでにVRが優れた広告効果を出しています。
サンフランシスコの動画メディア「#LYVE」の調査では、視聴完了率は通常の広告が20%だったのに対し、VR広告動画は80%という結果が出ました。広告効果が大きいので、今後VRで広告を行う企業が増えてくるでしょう。
Ⅳ旅行・観光
VRがあれば簡単に疑似旅行体験もできます。宇宙から地球を眺めたり、鳥の目線で世界中を自由に飛べます。また地方自治体によっては既に観光用のVRアプリを制作して地元のPRを図っています。
写真だけだとなかなか伝わらない魅力が、360°見渡せるVRによって体験できます。
多くの人が利用したことのある「Google Earth」は既にVR技術に対応しており、VRヘッドセットを利用すれば世界中どこでも一瞬で飛び回れます。
Ⅴファッション
ファッション業界では各ブランドがVRを活用したプロモーションで激しい競争を行っています。
有名ブランド「Dior」は2015年にオリジナルのヘッドセット「Dior Eyes(ディオールアイズ)」を発表し、ファッションショーの舞台裏も360°映像で体験できるプロモーションを行いました。これを機にファッションショーをVRで配信するサービスを各ブランドが展開しています。
Ⅵショッピング
VRを利用すればショッピングも簡単かつ安心して行えます。地方に住む人が都会へ買い物に来るのは一苦労ですし、ネットショップでの買い物も何か味気ない。
VRを利用すれば大型店舗に本当に買い物に来たような体験ができ、決済までVR上で行えます。バーチャル空間とリアル空間を融合させて、新たなショッピング体験を作り出しています。
Ⅶインテリア
家具を買ったあと、実際に家に置いてみたら思っていたのとイメージが違ったという経験はありませんか?展示されているものを見るのと、実際に家に置くのでは印象が違うものです。
そんな不満を解消するため、仮想空間に用意された部屋にインテリアを設置できるサービスが開発されています。
コントローラを使うことで自在に部屋の中を動き回れるため、狭いスペースでも利用が可能です。AR技術を使えば、実際の部屋に家具を置いてみるとどうなるかも試せます。
Ⅷ不動産
実は不動産業界にもVRの技術は導入されています。部屋を買ったり借りたりする際には内見がつきものです。しかし、部屋をいくつも回ったりするのは時間がかかります。とはいえ、写真だけではわからない情報も多くあります。
そんな時にVRを利用すれば、まるでその部屋にいるような体験ができるので、内見の手間が省けます。もちろん最後は現地に行って直接見るのが理想ですが、内見する件数を絞れるのは嬉しいです。
Ⅸ教育
VR技術は、教育現場でも大いに活用されています。深海や宇宙といった実際に行くことが難しい場所でも、VRを利用してバーチャルトリップが可能です。
また3Dメガネと専用のペンを使うことでさまざまな疑似実験も行えます。例えば、ホログラフィックで浮かび上がった生物を専用のペンを使って解剖したり、車など複雑な機械の仕組みでも内部を確認しながら理解できます。
バーチャル空間の中でも生徒同士でグループワークできるコンテンツもあるため、1人の世界に没頭しがちなVRでも複数の生徒で同時に利用できます。
精神病を持つ子どもでもVRをつけることで学校の授業を体験できるようになります。
Ⅹ医療
VRは医療分野でも活用されています。患者がVRで高所や人混みを体験し、高所恐怖症や対人恐怖症を治療するなど効果的な心理療法が可能となっています。
また、医者がVRを利用して職業訓練をしたり、手術現場をよりリアルに体験することができるので、研修医の育成にも使われています。
また患者の体内をVRで見ることにより、これまでの技術では見落としてきたような症状も漏らさずチェックできるようになりました。
Ⅺ介護
意外に思うかもしれませんが、介護の現場でもVRの技術は活用され業界の発展に貢献しています。
映像だけでなく五感を使うプログラムで、失禁体験や認知症体験等、介護の現場を仮想体験することで、介護に携わる従業員のスキルの底上げをしています
3.VRとARとMR
VR(仮想現実:Virtual Reality:バーチャルリアリティ)
AR(拡張現実:Augmented Reality:オーグメンテッドリアリティ)
MR(複合現実:Mixed Reality:ミックスドリアリティ)
VRにはARとMRという似た物があります。
ここでVRとAR,MRの違いを説明します。
❶ARとは
AR(Augmented Reality:オーグメンテッドリアリティ)とは、日本では拡張現実とも呼ばれています。
ARは、CGなどで作った仮想現実を現実世界に反映します。
スマホアプリにおいて多く活用されており最も有名なのは『Pokémon GO』でしょう。
❷VRとARの違い
VRは現実世界とは切り離された仮想世界に入り込むのが目的なのに対し、ARはあくまで現実世界が主体なのが最大の違いです。
ARは現実世界と組み合わせて利用するので、ゲームだけじゃなく交通事故シミュレーションや安全運転のためによく利用されています。
❸MRとは
MR(Mixed Reality:ミックスドリアリティ)とは、日本語では複合現実とも呼ばれています。
MRは、仮想世界と現実世界の情報を組み合わせて仮想世界と現実世界を融合させる技術のことです。
VRとAの上位互換のようなもので仮想世界を現実世界に組み合わせられるのが1番の特徴です。
4.まとめ
このように現在世界中でVRが広く活用され応用されています。今後仮想世界での生活をメインにする人たちが登場する可能性があります。生活のほぼ全てを、VR上で完結できるようになるために、現実世界で生活しなくても、仮想世界をメインにして生きる事も実質可能となります。それでも生活が楽になるのは嬉しいことです。