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ユキちゃんのビジネスモデル調査ノート〜キューピー編〜

こんにちは!
今回はマヨネーズでお馴染みのキューピーを調査した様です。ちなみにキューピー人形とキューピーは人形の方が先で、当時人気だった人形にあやかりこの名前を付けたそうです。

●今回のテーマ
キユーピー:「食を通じて社会に貢献する」を掲げ、「おいしさ」「健康」「安心・安全」を追求し、人々の豊かな食生活をサポートすることを使命としています。創業以来、品質第一を守り続け、食文化の発展に寄与しています。
あくまでユキちゃんの調査結果です



【第1話: キユーピー ~強みを見つける~】

 「……これって、結局ありふれたドレッシングよね。」
 夕方の小さな会議室で、上司の何気ない一言が私の心を突き刺した。その日は、私が勤める中小企業で販促企画の打ち合わせがあった。入社して2年目、販促担当になったばかりの私、ユキ。だけど、自信たっぷりに提案した企画は「これといったインパクトがない」と上司に切り捨てられてしまった。

 うちが作るのは地元産野菜を使った特製ドレッシング。素材は悪くないはず。でも、「何が強みなの?」と聞かれて、私は口ごもってしまった。味もそこそこ、値段も手頃、パッケージもまあまあ可愛い。なのに、消費者の心を掴めていない。会議室を出て、自分のデスクに戻る頃には、肩が重く垂れ下がっていた。

 帰宅途中、夕焼けに染まる商店街を歩きながら、ため息が止まらなかった。「はあ……私、一体どうすれば……」

 そんな私を待っているのは、小さなマンションの一室。ドアを開けると、出迎えてくれたのはモフモフな毛並みのウサギ——いや、「うさぎ先生」だ。
 「ユキちゃん、お帰り。今日はまた、悩んでいる顔だね。」
 先生は人間の言葉を話す不思議なウサギ。かつては伝説のマーケティング教授で社会心理学の権威だったらしいけれど、闇の組織によりウサギに変えられたという。その来歴は信じがたいけど、日々の助言は確かに鋭く、頼れる存在だった。

 私は靴を脱ぎながらぐったりと告げる。「上司にね、商品に強みがないって言われちゃって。せっかく企画考えたのに、全然評価されなくて……」
 「なるほど。で、ユキちゃん自身は、そのドレッシングの強みを何だと思っている?」
 「えっ……美味しいけど、スーパーにも似たような商品は溢れてるし……やっぱり特徴が薄いのかな。」
 すると、先生は前足をぴこぴこ動かしながら言った。「強みがない商品などない。気づいていないだけだよ。たとえば……キユーピーの話、聞いたことがあるかな?」

 「キユーピー……あのマヨネーズで有名な会社ですよね。」
 「そうだ。キユーピーはマヨネーズを核に、実に多彩な商品展開をしている。サラダドレッシング、パスタソース、卵加工品……いろいろあるが、根底には常にマヨネーズ文化を広める思想がある。そしてその“核”があるからこそ、多角化が可能なんだ。」
 先生の言葉に、私はハッとした。マヨネーズ一つを軸に世界を広げるって、なんて分かりやすいんだろう。

 「うちの商品にも、何か“核”となるものがあるはずよね……」と呟くと、先生は楽しそうに耳を動かした。「そう、その核が“強み”だよ。君の会社のドレッシングは地元野菜が売りだろう?それをただ味が良いとだけ言うのではなく、その素材が生まれる背景や、土地の価値に注目してみるんだ。」

 ふと、学生時代、地元の直売所を訪れた時の光景を思い出した。おばあちゃんたちが大切に育てた野菜が並び、手書きのPOPで「今年も甘くできました!」なんて書いてあったっけ。あの温かさこそ、このドレッシングの持つ力じゃないか……?

 翌日、出社した私は早速資料を引っ張り出した。ドレッシングに使う人参はどこの畑から、トマトはどの農家さんから仕入れてるんだろう? 商品パンフレットには細かい記載がなかったけれど、仕入れ先リストを見ているうちに、地元で長年続く農家さんの名前が並んでいるのがわかった。

 (このドレッシングの強みは、“地元のストーリー”にあるんじゃない?)
 私は上司に再提案することにした。地元直売所とタイアップして、農家さんの顔写真やコメントをPOPに添える。野菜の育て方や、素材への思いを伝えることで、普通のドレッシングとは一味違う「地域色」を前面に打ち出すのだ。
 「なるほど、確かにこうすれば他社との違いが分かるな。」上司は興味深げに頷いた。

 直売所からも好意的な返事をいただき、少しずつ準備が進む。週末にはその直売所で小さな試食会を行った。地元の人たちが「これ、美味しいわね。あ、この人参、うちの近所で作ってるんだ!」と嬉しそうに話してくれた。前は「ありふれた」と言われた商品も、地元のストーリーを添えると、消費者は自然と笑顔になる。


 帰宅後、私は先生に報告した。「先生、なんだか手応えがありました!普通の商品だと思ってたけど、素材の背景を伝えると反響が出てきたんです。」
 「それが“強み”に気づくということさ。キユーピーがマヨネーズを軸に世界を広げたように、君たちも地元野菜を核にした商品価値を伝えていける。」
 先生は嬉しそうにホクホク顔。私は思わず笑ってしまう。モフモフのウサギが誇らしげに語る姿はなんとも可愛らしい。

 こうして、小さな手応えながら私たちの商品は一歩前進した。何気ない日常の中で、私は強みを見つけることの大切さを学んだ。ほんの少し、仕事が楽しくなってきた気がする。


【第2話: キユーピー ~消費者の心をつかむ~】

 「あの……なんか古臭くない?」
 これは上司や同僚ではなく、若手の社内モニターからの率直な意見。私は新しい販促ターゲットを健康志向の若者層に定め、従来のパンフレットデザインを流用して企画を出した。結果、「全然刺さらないっすね」「イメージがぼんやり」という厳しいフィードバックを浴びてしまった。

 若者向けに打って出るはずが、私のアイデアは全然響かなかった。健康志向の商品を並べて「ヘルシーです!」と書いただけじゃ、相手の心は動かないんだ。会社を出る頃には頭が痛くなっていた。

 部屋に戻ると、うさぎ先生が今日も待っている。「今日はどうしたんだね、ユキちゃん。眉間にしわが深いぞ。」
 私はジャケットを脱ぎ捨てながら説明する。「若者向けに健康志向の販促を考えたんですけど、デザインや言葉選びが古臭いって……全然ウケなかったんです。」
 「なるほど、健康志向の消費者は情報に敏感だ。流行りの食材や、SNS映えを狙った見せ方など、共感ポイントを探らなければならない。」
 先生は私にクスッと笑いかける。「キユーピーは健康志向の商品も多い。低カロリードレッシングや機能性食品を出しているが、ただ“健康”を言うだけではない。“共感”や“安心感”を視覚的にもメッセージ的にも伝えている。」

 「共感や安心感……」私はハッとする。そもそも若者層は、商品そのものの特徴以上に、「自分のライフスタイルに合う」「このブランドなら安心できる」という気持ちを求めているのかもしれない。

 会社の資料室でキユーピーの事例を調べてみると、訴求方法が巧みだ。パッケージデザインはシンプルでやわらかい色味を使い、わかりやすい栄養情報を伝え、ブランドストーリーや商品が生まれた背景を示すことで安心感を与えている。SNSではヘルシーなレシピ動画を発信して、ユーザーとの対話を大切にしているみたい。

 (なるほど、“伝え方”が古いと感じさせる一因は、消費者が求める心理を考えずに押し付けていたからかも。)

 私は考え直し、健康志向の若者層向けに新たな販促策を打ち出した。「健康×手軽さ」をテーマに、SNSで映える簡単アレンジレシピを発信し、写真投稿キャンペーンを実施する。おしゃれな食卓風景や、忙しい朝でもサッと使えることを伝えるような短い動画、コメント欄でのやり取りも想定した。

 結果は上々だった。SNS上で「これ可愛い!」「忙しくてもヘルシーに食べられる」といった反応が増え、投稿に“いいね”がつくようになった。同僚からは「今度社内で試してみようよ」と言われ、社内でも少し注目を浴びる。

 「先生、SNS企画、当たりました!」と帰宅早々報告すると、うさぎ先生は鼻をぴくりと動かし、「だろうね」と得意げだ。
 「健康志向の消費者にとって、情報は氾濫している。彼らは自分にフィットするものを求めているんだ。安心感や親しみやすいイメージをシンプルに伝えれば、心を掴むことができる。」
 「最初は‘ヘルシーです!’と押し付けるだけだったけど、相手の気持ちを想像して共感を呼ぶ表現に変えたら、違いが出たんですね。」
 私は満足げに頷く。今日も少し成長できた気がする。

 こうして、ただ商品を並べるのではなく、消費者心理を踏まえた伝え方が鍵だと学んだ。キユーピーのように、健康志向の商品も“消費者目線”で見直せば、新たな展開が生まれる。少しずつ、自分なりのマーケティング感覚が芽生えてきたのかもしれない。


【第3話: キユーピー ~サステナブルな視点~】

 「また売れ残りか……」
 商品の廃棄処分リストを見て、私はため息をついた。食品を扱う以上、どうしても期限切れで売れ残りが出てしまう。でも最近は特に廃棄量が増えていて、もったいないし、会社としてもコストがかさんでいた。

 「販促でどうにか売り切るしかないのか。値引きする?それとも強引にキャンペーン打つ?」私の頭は「どう売るか」にばかり固執していた。でも、空回り感が拭えない。「結局、無理に売るだけじゃ解決しないし、環境面でも良くないよね……」

 部屋に帰ると、うさぎ先生がひょいと近づいてきた。「今日は廃棄のことで悩んでるのかい?」
 「先生、売れ残りを減らしたいんですけど、いいアイデアがなくて……サステナブルとか、最近よく聞くけど、具体的に何をすればいいの?」
 すると先生は目を細めて言う。「キユーピーが卵殻まで再利用している話を知っているかい?食品ロスや廃棄物削減は、単に売り切るだけの問題じゃない。“サステナビリティ”を意識すると企業価値が高まるんだ。」

 キユーピーはマヨネーズで使う卵の殻を肥料や建材の材料にしたり、食品ロス削減の取り組みを行ったりしているらしい。ただ売るだけでなく、環境や社会への責任を果たすことで、ブランドへの信頼が増すのだ。

 私は考えた。売れ残った商品をただ値引きで処理するのではなく、何か意味を持たせて再提案できないか?たとえば「福袋セット」や「ギフトセット」にまとめて販売することで、無駄を減らしつつ消費者に新しい価値を感じてもらう。さらに、その売上の一部を地域貢献活動に回したり、環境への取り組みをアピールしたりすれば、人々は「この会社は社会に配慮している」と感じてくれるかもしれない。

 翌週、地域のイベントがあると聞き、その福袋セットを持ち込んでみることにした。POPには「余剰商品を有効活用したサステナブルな福袋」と書き、社会や環境への想いを添える。来場者からは「面白いアイデアね」「廃棄しないでこうして楽しめるのは素敵」と、好意的な反応が得られた。残った在庫もかなり減り、廃棄量は目に見えて少なくなった。

 会社の上層部も「うちもサステナブルな方向でブランド価値を高められるかもしれない」と興味を示した。今まで薄かった社会貢献や環境配慮の視点が、マーケティングと結びつくなんて想像もしていなかった。

 「先生、イベントで好反応でした!サステナブルな取り組みに興味を持ってくれる人が多かったんです。」
 「だろう?サステナビリティは単なる流行り言葉ではない。企業の信頼性にも関わる重要な価値観だ。キユーピーが卵殻を無駄なく使うように、君たちも商品の循環を考えることでファンを増やせる。」

 私は嬉しくなった。今までは売ることばかり考えていたけど、商品の行き先や、その背景まで考えることで、企業としての在り方が変わるなんて。
 日常の一コマに過ぎないイベントが、私に新しい視点を与えてくれた。企業は社会の中に生きていて、それを伝える販促だってできるんだ。私の中に、小さな誇りが芽生え始める。


【第4話: キユーピー ~理念を届けるプレゼン~】

 「明日、取引先へのプレゼン、君がやってくれないか?」
 ある日の夕方、上司に呼び止められ、突然そう言われた。大手の取引先への新企画提案。私にとっては大きなチャンス。でも、資料を見ても膨大な情報を詰め込んだだけのパワポ、まとまらないコンセプト……自分の企画に自信が持てない。

 部屋に戻り、うさぎ先生に相談する。「先生、大手とのプレゼンで緊張してます。情報を大量に詰め込んだだけで、全然心がこもってない気がするんです……」
 「なるほど、君は会社の理念や商品の想いを理解しているかい?」
 「理念……?」私はあまり意識したことがなかった。
 「キユーピーは、マヨネーズを通じて人々の食卓を豊かにするという想いが根底にある。それは単なる商品説明ではなく、企業が大切にしてきた哲学だ。理念は顧客の心を動かす原動力になる。」

 私は会社の創業の経緯や、社長がよく口にする言葉を思い出した。うちの会社は、地元の味を全国に届けたいという想いから始まっている。単なる商品開発ではなく「食卓を笑顔にする」ことを目標に掲げていたはずだ。
 忘れていた。私が最初に入社した頃、先輩が「うちは地元の恵みを届けることで、お客様の暮らしに彩りを加えたいんだよ」と話してくれたことを。

 その想いをプレゼンに反映させてみよう。データや機能面だけでなく、「なぜこの商品を作っているのか」「顧客にどんな価値を提供したいのか」を明確に伝える。情報量は減らしてもいい、心に響くメッセージを大切にしよう。

 翌日、プレゼン会場で、私は少し緊張しながらも笑顔で話し始めた。「私たちの会社は、地元の野菜や果物を通して、お客様の食卓に季節の彩りと笑顔をお届けしたいと思っています。」ただの商品説明ではなく、そこに込められた想いと理念を丁寧に語る。そして、その上で具体的な販売戦略や提案を提示した。

 取引先の担当者は真剣に聞いてくれ、「想いが伝わりました。ぜひ一緒に進めていきましょう」と好意的な反応。私はホッと息をつく。

 帰宅し、先生に報告する。「先生、プレゼン成功しました!情報を削って理念を伝えたら、相手が共感してくれたみたいです。」
 「良かったな。キユーピーが常に人々の食卓を豊かにする理念を持ち、それを体現しているように、君の会社も自分たちの姿勢を示せたんだ。」
 「単なるデータや機能じゃなくて、‘何のためにその商品があるのか’を語ることが、相手の心を動かすんですね。」
 私の声は弾む。プレゼンで緊張したけど、そのおかげで理念の大切さに気づけた。


【最終話: キユーピー ~日常の中の成長~】

 朝、カーテンの隙間から差し込む光が優しい。いつものマンションの部屋、いつもの匂い、いつものキッチン。でも、私はふと感じる。「あれ、最近、仕事がちょっと楽しいかも。」

 入社当初は不安定で、何をやっても手応えがなく、自信がなかった。だけど今、少しずつ「強み」を見つけ、「消費者の心」を掴み、「サステナビリティ」を意識し、「理念」を届けるプレゼンができるようになった。キユーピーの多角化戦略や取り組みをヒントに、私の発想は広がった。そして、うさぎ先生の助言を聞きながら、私は成長してきた。

 リビングでモフモフなうさぎ先生がのんびりくつろいでいる。「おはよう、ユキちゃん。今日はなんだか上機嫌だね。」
 「はい、最近少しずつだけど成果が出てきて、仕事が面白くなってきたんです。」
 私がそう言うと、先生は満足げに頷く。「そうか、良かった。君はもう、どんな課題にも自分なりの答えを探す力がついてきたんじゃないかな。」
 「先生がずっと見守ってくれたからですよ。最初は何も分からなかったけど、キユーピーの事例や先生のアドバイスで、一歩ずつ前に進めました。」
 「私が何か特別なことをしたわけじゃない。君が日常の中で自分の目で見て、考え、行動した結果さ。」先生はさらりと返す。

 今日はまた、小さな新企画を立ち上げる準備をしている。健康志向の商品をもっと広げるか、サステナブルなパッケージを試してみるか、悩みは尽きない。でも、今は不安よりもワクワクの方が大きい。

 「さあ、行ってらっしゃいユキちゃん。君ならもう自分で考えて進めるはずだよ。」
 先生がそう言って微笑む。その言葉に背中を押されると、なんだか自分自身が少し誇らしく思える。

 玄関で靴を履きながら振り返ると、先生は私に視線を送る。その瞳は優しく、少し寂しそうにも見えるが、そのモフモフな体は揺らめく陽射しの中で穏やかな光を受けている。

 「いってきます、先生!」
 「うむ、行っておいで。」

 扉を閉めてエレベーターに乗る。いつもと同じ風景だけど、心はほんのり温かい。小さな成長が重なって、日常が少し違って見える。

 ふと想像する。キユーピーだって、長い歴史の中で地道な努力と工夫を積み重ねて今がある。私もそうやって、少しずつ前へ進んでいる。

 きっとこれからも、課題は山積みだ。でも、その度に私は考え、感じ、行動できるだろう。うさぎ先生との不思議な日常は、まだまだ続く。部屋で羊羹をかじる彼の姿が脳裏に浮かんで、思わず笑みがこぼれた。

 この小さなマンションから、私の仕事と人生は、静かに、でも確かに広がっていく。そんなノスタルジックで温かい日々が、これから先も続いていくのだと思う。


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