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記憶の断片

イヤホンを外して 外の空気に触れてみると

少し肌寒い風と共に 光に照らされた

子供達の笑い声が木霊して聞こえた。

忘れていた何かが心の中に
温もりを広げたようだった。

社会の声、誰かの干渉を見向きもしない
堂々たる愛らしい笑い声は

世の中の人間に昔々、あったものだった。

いつからだろう。

周りの声を気にして 何かが壊れるのを恐れて
自ら手を伸ばさなくなったのは。

いつからだろう。
偽りの言葉で自分を正当化しだしたのは。

大人になればなるほど、

協調性が 繊細なほど磨かれ、

もはや個性の欠片すらない ロボットのような
人間になっていく。

未来の道を自ら異世界に創造する人も居れば

暗闇の中で差し伸べられた手を振り払う人もいる

道に咲く花を見て 高らかな声を響かせた
あの日々は記憶の断片で美しすぎるほどに
輝いている。

進みすぎた砂時計は 戻すすべもなく、
大切であったはずの純粋無垢さは、
あの日 忘れた宿題とともに どこかへ行った。


気づけば 青空の下、忙しなく動くあの雲と共に
追い風を受けていた

もう誰も甘えさせてくれない。
どこか知らない世界に放り出された私は

まだ大人になりきれないまま
子どもにも戻れないまま
ただただ今この瞬間、息をしている。

届かなかった恋慕は心を締め付け
誰かに消された私の声は 一瞬にして飽和して

痛い程に複雑な想いが交差した。

変化する世の中を、変化する環境の中を

影響されすぎることなく、
鈍感になりすぎることなく、
うまく航海する術は無いのだろうか。

自分の声を生かしたまま、
他者の声も取り入れ

社会の雑音をシャットアウトしながら
うまく 世の中を 詠むことは 出来るのだろうか。

分からない。
私にはまだ分からない。

ただ記憶の断片を拾い上げて、
純粋無垢な 子供の 笑い声に 憂いを感じていた。

戻れないものが、手放したはずのものが
忘れていたものが、春風に交じる今日この頃、

誰かの限りなく愛おしい 記憶の断片が

今も心の中に在り続けていることを、

只々、願うばかりである。





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