見出し画像

「担当病棟がコロナ病棟に転用、やむを得ず転職」

2021/05/25



TONOZUKAです。


担当病棟がコロナ病棟に転用、やむを得ず転職


以下引用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病床の確保が急務となる中、既存の病床を転用するケースが増加。そこを持ち場としていた医師からは、「やりたい診療ができなくなった」という声も聞かれる。今回は、そうした経緯から、実際に転職に至った医師のエピソードを紹介する。
 緩和ケア科を専門とするB氏が、C病院に転職したのは4年前のこと。緩和ケア病棟の立ち上げに一から携わり、その後も緩和ケア病棟での業務を仕事の中心に据え、やりがいのある日々を過ごしていた。

 そんな状況が一変したのは2020年春のこと。緩和ケア病棟をCOVID-19病棟に転用することが、病院上層部からある日突然通達されたのだ。「現場に何の相談もなく、トップダウンで決められてしまった。他の病棟も候補に挙がったのかどうか、何も分からない状況のまま緩和ケア病棟を転換することになった」とB氏は振り返る。

 緩和ケア病棟が転用された後も、緩和ケアチームの一員として、引き続き一般病棟などの患者の緩和ケアに従事した。しかし、「自分が、よりやりがいを感じるのは緩和ケア病棟の業務。緩和ケアチームは各病棟の医師や看護師へのコンサルテーションが中心だが、緩和ケア病棟では、自ら主治医として携わることができる」。緩和ケア病棟に入院する患者の中には、化学療法などを終えて「最期を自宅で過ごしたい」という希望を持った患者も多い。主治医として、近隣医療機関などと連携を図りながら、患者の希望をできるだけかなえることがB氏にとってのやりがいだという。

 このまま病院に残り、緩和ケア病棟の再開を待つか、転職するか──。悩んだ末に、B氏は転職を決意した。以前勤めていた近隣のD病院の元上司に相談した際に、「うちに戻って来ないか」と言われたことが決め手となった。

 もちろん、心残りがなかったわけではない。緩和ケア病棟にいた看護師は、他の病棟に移ったり、そのまま残ってCOVID-19対応に当たっていた。「緩和ケア病棟で働くことを希望して入ってきた看護師がほとんどなのに、自分だけがやりたいことを追い求めてよいのだろうか」という葛藤もあった。ただ、COVID-19が収束する気配はなく、新たに緩和ケア病棟を増設するといった病院の方針も見えなかったため、古巣のD病院に転職するに至った。

 もっとも、転職先のD病院でも、この先、緩和ケア病棟がCOVID-19病棟に転用される可能性はゼロではない。一般的に、緩和ケア病棟は、個室率が高い上に他の病棟から離れていることが多く、構造上の理由でCOVID-19病棟に転用しやすいからだ。実際、コロナ下で緩和ケア病棟がCOVID-19病棟に転用されているケースは少なくない。この点についてB氏は、「D病院は2次医療圏の中で唯一緩和ケア病棟がある病院のため、転用されにくいのではないか」と考えた。加えて、緩和ケア病棟を設置・運営することの意義について上層部が理解していることも、過去の勤務経験から分かっていた。

 D病院に転職してから半年ほどが経過したが、「今は、やりたいことができている状況だ」とB氏は話す。現在は、交代制で数カ月に1週間ずつCOVID-19病棟での勤務が求められているものの、緩和ケア病棟での業務自体には充実感が得られている。近隣医療機関との連携についても、「以前から一緒に仕事をしていた医師が多く、非常にやりやすい」という。

 とはいえ、C病院への思いが少なからず残っていることも事実だ。実は、B氏は過去に、現在の勤務先であるD病院の緩和ケア病棟の立ち上げにも携わったが、当時は複数いた緩和ケア科の医師の中でも最年少で、重要な業務に関わることはほとんどなかった。一方、C病院で緩和ケア病棟を立ち上げた際にはB氏がチーム作りの大部分を担ったため、愛着もひとしおだからだ。

 今後、COVID-19がある程度落ち着き、C病院で緩和ケア病棟が再開された暁には、戻ってくるよう病院から要請されることも十分にあり得る。しかし、現時点では「2病院は距離的にも近いため、D病院に在籍したままC病院ともうまく連携できたらと考えている」とB氏。「勤務先がどこであれ、地域の中で様々な形で連携を図り、今後も地域で求められる緩和ケア医であり続けたい」と話している。
(エピソードは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

宜しければサポートお願い致します。いただいたサポートはポータルサイトの運営費用として大事に使わせていただきます。 https://music-online.kingstone-project.jp/