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「COVID-19患者の凍瘡様病変にはI型インターフェロン応答が関与か」

TONOZUKAです。


COVID-19患者の凍瘡様病変にはI型インターフェロン応答が関与か

以下引用

COVID-19パンデミックが始まった頃から、SARS-CoV-2感染との関連が疑われるしもやけのような皮膚病変(凍瘡様病変;CLL)の報告が相次いだが、病態生理学的な機序は明らかではない。フランスSaint-Louis病院のL. Frumholtz氏らは、2020年4月に同病院に紹介されたCLL患者の検査結果を、季節性凍瘡患者や健常人と比較して、活性化している遺伝子の違いなどを2021年10月5日のBritish Journal of Dermatology誌電子版に報告した。

 通常のしもやけは、寒い季節に生じる皮膚の炎症性の病変で、主につま先や手の指に認められる。多くが特発性で、それらは季節性凍瘡(SC)と呼ばれる。

 SARS-CoV-2感染は、I型インターフェロン(IFN)によって誘導される遺伝子(IFN誘導遺伝子)の発現を強力に刺激する。I型IFN介在性の疾患としては、単一遺伝子変異による自己免疫性のインターフェロノパシーやループスエリテマトーデスが知られているが、それらの患者にも臨床的な凍瘡が見られる。

 SARS-CoV-2感染症は、毛細血管内皮の損傷を引き起こし、内皮細胞の抗血栓活性を低下させる。これにより血栓性微小血管症が生じる可能性がある。COVID-19関連のCLLにおいても、組織学的特性として、内皮障害と微小血管障害が指摘されていた。そこで著者らは、CLL患者と健常人やSC患者を比較し、CLLの免疫学的および血管病態生理学的な特性を分析しようと考えて、観察研究を実施した。

 対象は、2020年4月9~16日にSaint-Louis病院の皮膚科に紹介されたCLL患者で、PCR検査によりSARS-CoV-2感染が確認された人。凍瘡や凍瘡様ループスの病歴がある人は除外した。0日目と14日目に臨床評価と血液検査を実施した。比較のための対照群は3種類設定し、1つはPCR検査で確認した軽症COVID-19患者で凍瘡がない人、2つ目はパンデミック前の2015年1月から2019年3月に評価を受けたSC患者、3つ目は健常人グループとした。

 条件を満たしたCLL患者は50人で、そのうち29人には、皮膚以外にも、発熱や疲労感などといった、COVID-19を示唆する症状が見られた。20人はCOVID-19患者の濃厚接触者として検査を受け、診断されていた。COVID-19発症から皮膚症状出現までの日数は中央値で7日(四分位範囲2~16日)、CLL発症からこの研究に参加するまでの日数は、中央値で24日(16~31日)だった。

 CLL患者のうち、つま先に病原があった患者が86%、手の指に病変があった患者が24%で、ほかに広範なリベド(4人)、斑状丘疹状皮疹(4人)、蕁麻疹(1人)、関節痛(1人)などが認められた。受診日から15日後にCLL症状が寛解していたのは16人(32%)で、その間に7人(14%)には新たな病変が生じていた。

 13人のCLL患者に生検を実施して、過去に調べていた13人のSC患者と皮膚の組織学的特徴を比較した。いずれも、真皮中の血管の周囲にリンパ球の浸潤が見られた。組織学的所見は多くの点で類似していたが、IgA染色では、CLL患者だけに、真皮乳頭層の間質成分に沈着が多く認められた。

 10人のCLL患者と4人のSC患者、4人の健常人から採取した皮膚生検標本を対象にトランスクリプトーム解析を行い、免疫関連の598遺伝子の発現を比較した。CLL患者と健常人の間には296遺伝子の発現に差があり、それらのほとんどが、CLL患者において発現が上昇していた。

 CLL患者とSC患者の間で発現に差があったのは、I型IFN経路とII型IFN経路にかかわる遺伝子や、I型IFNによるヘルパーT細胞の分極化(サイトカインなどによる刺激を含む、組織の環境に応答して、性質を可逆的に変化させることを言う)にかかわる遺伝子、細胞傷害性のマーカー遺伝子、ナチュラルキラー細胞のシグナリングにかかわる遺伝子、その他の免疫活性化と調節のマーカー遺伝子などだった。また、CLL患者では補体系と血管新生にかかわる遺伝子の発現が活性化されていた。

 次にCLL患者の全身性の免疫反応について分析した。その結果、74%の患者から、好中球細胞質と反応するIgA抗体が検出された。SC患者は全員が、そうしたIgA抗体を持っていた。CLL患者におけるこの抗体の意義は現在のところ不明だ。

 最後に、血管内皮機能障害のマーカー、血管内皮の活性化に関するマーカー、血管新生のマーカー、血管内皮前駆細胞の動員に関するマーカーを利用して、健常人に比べ、CLL患者では、血管内皮機能不全が生じていることを確認した。また、CLL患者の皮膚および全身における血管内皮障害のマーカー(アンジオポイエチン-1、アンジオポイエチン-2、VEGF-A)は、0日目に比べ14日目には正常化しつつあった。しかし、それらマーカー値の変化と、CLL病変の改善の間には、有意な関係は見られなかった。

 これらの結果から著者らは、CLL患者の皮膚では血管内皮に変化を起こす活性化ループが働いており、これには細胞傷害性の分子やI型IFNに誘導された細胞が関連して、皮膚の臨床症状を起こすようだと結論している。

 原題は「Type I interferon response and vascular alteration in chilblain-like lesions during the COVID-19 outbreak」、概要はBritish Journal of Dermatology誌のウェブサイトで閲覧できる。



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