見出し画像

「医療管理下にないコロナ関連死、多発の理由大阪府の第4波から見えてくる教訓」

2021/06/14



TONOZUKAです。


医療管理下にないコロナ関連死、多発の理由

大阪府の第4波から見えてくる教訓

以下引用

 新型コロナウイルス変異株の急拡散によって、感染者が爆発的に増えてしまった大阪。3月からの第4波からは、これまでになかったリスクが見えてくる。それは、「医療管理下にないコロナ関連死」の多発だ。大阪府ではこれまで第3波の1例しかなかったが、第4波では2021年5月28日までに19例に上った。どうしたら防げたのだろうか。

基礎疾患なしの30歳代にも「急変死」


 表1は、大阪府が毎週月曜日に公表している「医療の管理下になかった自宅(施設含む)・宿泊療養でのコロナ関連死の死亡事例」だ。1例目は第3波の際に確認された事例で、それ以外は3月から始まった第4波の中で確認された。以下、第4波の死亡事例を見ていきたい。

 第4波の19例の療養状況を見ると、自宅療養中が8例、宿泊待機中3例、入院調整中4例で、保健所の介入前も4例あった。介入前の事例を除く15例全てが療養決定時の症状は軽症(発熱、咳など、経過観察または必要時の解熱薬等の内服で軽快が望めると思われるもの)で、基礎疾患が7例にあり、男性が12例と多数だった。

 個々の事例を見ると、「急変して死亡」した事例が6例と多いことに驚かされる。6例のうち4例に基礎疾患があり、50歳代が1人、60歳代が2人、80歳代が1人だった。また基礎疾患のない2例は70歳代と80歳代だった。つまり、「基礎疾患」と「高齢」が「急変して死亡」のリスクになっているわけだ。

 だがリスクは、それだけではなかった。留意すべきは、30歳代で基礎疾患のない人にも死亡例が出ている点だ。表1の10例目と20例目だが、前者は4月14日に発生届があり自宅療養していたものの6日後に死亡。後者は保健所介入前の事例で、4月28日に発生届があり5日後の5月3日に死亡している。「30歳代と若くて基礎疾患がないから、自宅療法でも大丈夫」というわけにはいかない。現行の保健所に依拠した健康観察だけでは限界があるということだろう。対応としては、訪問看護や往診に加えて、京都府で展開されている公的なCOVID-19訪問診療チームの編成など、自宅や施設へのアウトリーチ(早期治療を行って入院を予防する仕組み)の稼働を急ぐべきではないだろうか(関連記事「COVID-19自宅療養中の死亡例は、もう出さない」)。

重症定義の枠外での死亡が80%近くに

 表1でもうひとつ気になる点がある。それは、入院調整中の死亡例が4月末から5月にかけて相次いでいる点だ。70歳代の1人、80歳代の3人だが、4例とも発生届出の時点で入院申請となっていた。しかし、本人が入院を拒否した1例(表1の16例目)を除き、2例は入院申請から2日後に、もう1例は5日後に死亡している。

 背景にあるのは、重症病床のひっ迫だ。大阪府では、流行の急拡大に伴い重症者が急増したため、確保していた病床(224床)では足りなくなり、軽症中等症患者受入医療機関でも重症例を診なければならないという非常事態に陥っていた(図1)。4月5日からまん延防止等重点措置に入っていた大阪府では、その2日後に「医療非常事態宣言」を発出する事態に追い込まれた。まん延防止等措置も医療非常事態も感染者急増を抑えることはできず、ついに4月13日に重症者総数が確保病床総数を上回ってしまった。この重症者総数には、他府県の医療機関で受け入れている重症者数と軽症中等症患者受入医療機関等で治療継続をしている重症者が含まれる。また確保病床総数とは、大阪府が病床確保計画にのっとって確保した224床に加えて、医療機関の努力によりさらに積み増した重症病床を含む。


図1からは、重症者総数/確保病床総数が100%を超えた4月13日以降、医療のひっ迫度がより深刻化し、4月後半以降、死亡例が相次いでいることがうかがえる。留意しなければならないのが、死亡例の80%ほどは、重症の定義の枠外で発生していることだ。重症の定義とは、重症病床におけるICU入室、人工呼吸器装着、ECMOの使用のいずれかに該当する場合とされている。

 重症の定義の枠外の死亡とは、診断時の症状が「無症状か軽症あるいは調査中」だった人で、自宅(施設を含む)・宿泊療養あるは軽症中等症患者受入医療機関などの入院療養の間に、重症対応に至らぬまま死亡した人ということになる。大阪府の発表によると、5月19日時点で重症定義の枠外の死亡は681人で全死亡(869人)の78%を占めている。この中に、冒頭で触れた「医療管理下にないコロナ関連死」も含まれる。


変異株の拡散スピードに対策が追い付かず

 第3波(2020年10月10日~2021年2月28日)の重症定義の枠外の死亡は705人(全死亡の75%)で、「医療管理下にないコロナ関連死」は1例のみだった。これに対して第4波(2021年3月1日から)では5月19日までに、それぞれ681人(同78%)と19人だった。重症定義の枠外の死亡がそれほど違わないのに、第4波で「医療管理下にないコロナ関連死」が急増した背景には、感染スピードの差が影響している。第3波では重症定義の枠外の死亡が705人に達するまでに141日かかったが、第4波では79日と2倍近くも速かったのだ。その原因の一端は、変異株の拡散に他ならない。

 図2は厚生労働省がまとめている変異株スクリーニング検査の実施率・陽性率(速報値)から大阪府の数字をピックアップしたものだ。実施率が20~30%の中、陽性率は3月22~28日の週に54%と急増。その2週後に当たる、まん延防止等重点措置が実施に移された4月5日の週には79%に達していた。

 今また、インドで最初に確認された変異株(B.1.617、デルタ)の拡散が取りざたされている。大阪府新型コロナウイルス対策本部会議の専門家が警告した「6月末から8月にかけて予測される次の波」に向けて、変異株の拡散スピードの先を行くコロナ対策の意思決定が求められていることを忘れてはなるまい。




宜しければサポートお願い致します。いただいたサポートはポータルサイトの運営費用として大事に使わせていただきます。 https://music-online.kingstone-project.jp/