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最善観~起きることは全て天意と心得る、逆境は神の恩寵的試練なり        

 月1回、地域の読書会に参加しています。
 現在は「修身教授録」という、森信三先生が講義された内容がまとめられた本を読んでいます。戦前の大阪天王寺師範学校(現 大阪教育大学)の「修身科」の講義をされた記録がまとめられて、本になったものです。
 
 教育関係者をはじめ、特に経営者によく読まれているようです。それは、

 「生き方の原理原則」や「仕事に関わる身の処し方」等が書かれているからです。簡単に言うと「人間学の要諦」がまとめられていて、「リーダー」に必要な素養を学べるからです。
 
 教育哲学者であった森先生自身は、何度も死ぬような目にもあっていますし、億単位の借金を抱え、自殺を考えてあちこちを放浪した時もあるそうです。また、75歳の時に、子供に先立たれ、その後、尼崎で独居自炊の生活もしてみえます。
 読書からだけではなく、森先生自身が、ご自身の苦労の人生の中で得た真理をいろいろな場面でも教えてくださっています。
 そんな、教えの一旦を紹介します。よかったら、お付き合いください。 

今回のテーマは、「最善観について」です。


1 最善観とは

 簡単に言うと、

「世の中に起こることはすなわち必然であり、最善である」

という教えです。森先生自身はさらに「絶対必然 即 絶対最善」とも言っています。
 
 西洋の言葉でいえば、オプティミズム(楽天主義)に近く、ライプニッツという哲学者がとなえた説にもあります。

「神はこの世界を最善につくり給うた」
「したがって、この世におけるいろいろのよからぬこと、また思わしからざることも、神の全知の眼から見れば、それぞれに意味がある」

と言う内容です。そして、森先生は、

この考えを「自分自身の運命もまた、その人にとっては、最善という意味を有しなければならぬ」

と信じたようです。

生きていれば、辛いことや苦しいことをみんな経験していきます。でも、それが実はその時起こったベストのことであり、「天意と心得べし」

と言う意味になります。

2 小林正観さんの「感謝のレベル」との関連

 旅行作家で、心理学博士、教育学博士、社会学博士だった小林正観さんは、

「目の前に起きる出来事(自分が経験すること)に対して、「良い・悪いを選り分けているあいだは、人生の達人になれません。自分にとって、気に入ることばかり起きて喜ぶのは、悟りの初級の段階です」

「そこから一歩踏み出し、中級にならないと、辛く悲しい思いをするようになります」

と言っています。
 そして、人間の心には、感謝のレベル=初級・中級、上級があると次の9段階を示しています。
 
<初級>
1 一般的に多くの人が、嬉しい楽しいと思う現象について、喜ぶことができる。
2 一般的に多くの人が、嬉しい楽しいと思う現象について、幸せを感じる。
3 一般的に多くの人が、嬉しい楽しいと思う現象について、感謝ができる。
 この段階は、人生において五戒(不平不満、愚痴、泣き言、悪口、文句)を言うよりは進歩していて、喜びの領域に入っているといいます。
 
<中級>
4 一般的に多くの人が、当たり前と思う現象について、喜ぶことができる。
5 一般的に多くの人が、当たり前と思う現象について、幸せを感じる。
6 一般的に多くの人が、当たり前と思う現象について、感謝ができる。
 例えば、目が見える、耳が聞こえる、歩ける、友人がいてくれる・・・など誰もが当たり前の事として受け止めていることに対して、本当に幸せ、ありがたいと思える段階の人です。
 
<上級>
7 一般的に多くの人が、不幸と思う現象について、喜ぶことができる。
8 一般的に多くの人が、不幸と思う現象について、幸せを感じる。
9 一般的に多くの人が、不幸と思う現象について、感謝ができる。

目の前にどんなことが起きても、愚痴や泣き言を言わないようにすると、悲しみや辛さを感じなくなります。そして、自分の心が成長した結果として、物事に対して、否定的な反応をしないようになります、

と言っています。
 
 実際、正観さん自身も、「借金を抱える」「糖尿病になり、痛みがひどくなる」など、一般的な目からすると、「大変な」ことをも経験されていますが、いつも静かに、淡々と受け止められ、特に入院生活の中でも、痛みはありつつも冗談を言っては周りの人を笑わせ、明るい気持ちにしていたといいます。「上級」以上だったことがうかがわれます。
 
 凡人の私は、すぐにそんな受け止め方はできませんが、

森先生の言われる「最善観」~私にとって何か意味がある事、この経験から学ぶからこそ、次につながる~

で見方を変えると、少しは、目の前の出来事を受け入れられるようになるかもしれません。

3 人間形成の3要素

 森先生は、人間を形成する3つの要素として次の内容を上げています。
➀先天的な遺伝的素質
②逆境による試練
③師匠運

 
 遺伝的素質は自分では何ともしがたいですが、②と③については、努力と精進次第で獲得はできます。

 ただ、これも「縁」的な要素が強いので、必ずとは言えません。
 だからこそ、運、「天の恩寵」と言わざる得ない場合が少なくないです。
 
 ②は、人情としては、避けたいところですが、ある意味、そういう出来事~試練を経験するからこそ、自分が鍛えられて、成長するともいえます。
 
 
そして、「縁は求めざれば生ぜず」なので、自分自身が内に求めるものが無ければ、「引き寄せ」られもしないというところでしょうか。

4 まとめ

 人生にはいろんな出来事が起きます。
 自分が「望む」ようなものではないことも多々あります。
 でも、

一見、不幸だと思えることでも「これが、今の自分にとってベストであり、後々必ず役に立つ。意味はある。」と信じることができれば、経験した出来事に飲み込まれず、乗り越えていく原動力にはなりますね。

  
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです

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