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いまどきの社長(第4回)

会社を設立してから6ヶ月。預金通帳を見ると残高は50万円。2,000万円の資本金でスタートしたはずでしたが… 900万円のFC加盟金に加え、人件費に家賃など先行コストであっという間にお金がなくなっていきます。

そこで、監査法人での上場指導先の一社、家電量販店コジマの小島勝平社長を訪問しました。勝平社長の長男の章利常務には株主として200万円を出資いただいています。

勝平社長は、ほぼ一代でコジマを日本一の家電量販店チェーンに成長させた辣腕社長。人の良さそうな笑顔の奥にも鋭い眼光が迫力を感じさせます。章利常務からの出資のお礼を言おうとしたところ、「出縄さん、この度はありがとう。」と先にお礼を言われてしまいました。唖然としていると「息子にとって良い勉強になります。」と言うのです。

監査法人の担当者として勝平社長に初めてお会いしたのは1991年。ディー•ブレイン創業の2年前のことです。当時、勝平社長は55歳。私は32歳でした。
「コジマの太陽のマークには鼻がないんです。何故かわかりますか?」と、謎かけのような質問が初対面での言葉。面食らっていると「鼻は低ければ低いほどいいんです。」2006年に他界された勝平社長。私が最も敬愛する経営者の一人です。

さて、話しは戻ります。私は勝平社長を前に、緊張で震える声を押さえ、思い切って「私を御社の経営顧問にしていただけないでしょうか」と切り出したのです。少々、間があった後、大きくうなづいて「わかりました。では顧問団に相談しますので、しばらくお待ちください。」と勝平社長。コジマには税務顧問、法律顧問をはじめとする10名の顧問団がありました。しかも、顧問はみな社長よりも年上です。

それから1週間後、再びコジマ本社を訪問した私に「このたび、出縄さんを当社の顧問としてお迎えすることに決定しました。是非、息子のよき相談相手となってください。」との回答です。

こうしてコジマというか、むしろ章利常務の顧問に就任。条件は月額20万円。さらに当時150店の全店長を3グループに分けた6回シリーズの実践型の研修を提案したところ、年間1,000万円の研修を受注。これに気をよくして、その後、ディー・ブレインの株主のすべてを訪問。その結果、驚くことにディー・ブレインの初年度の売上1,900万円ほどのうち9割以上が株主または株主の紹介で占められることになったのです。

もし株主を集めていなかったら、ディー・ブレインの初年度の売上はゼロだったかもしれません。株主は単に出資で資金を支援していただけるだけでない。売上を通じて事業の立ち上げも応援していただける。株主が会社の成長の大きな力となっていただけることを、身をもって経験しました。

この経験が、この先30年に及ぶ私のエクイティ・ファイナンス支援の原点となっていくのです。(つづく)

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