閻魔様まで40歩【エッセイ】

1年ほど前だろうか。

その日はいつもと何かが違った。
職場で気分が悪くなっていた。

頭痛、はよくあることだが、それにしてもいつもの痛みと違う気がした。薬を飲んでもさほど痛みは退かない。
立ちくらみがひどい。
階段をかけあがり、動悸がするのは日常だが、その動悸もかつてないほどに異常にドクドクと喉元までせり上がり、身体中を揺らす。

何?
何かした?
わたし、呪われた?!

判断力が鈍っていた。
原因に気付いたのは帰宅後、症状から病気を検索した後だった。

※※

私はショートスリーパーである。
いわゆる短時間睡眠でも全く問題なく生活できる人間である。

と、思っていたが、さすがに寄る波には勝てないようで、3時間睡眠でも平気だった昔とは違う。
今そんなことをすれば、年々近付く閻魔様の部屋の、そこに立つ門番が、そこから動かずに首と顔だけ伸ばし見つめてくる感覚がある。
つまりこれを続けたら死ぬな、という感覚がある。

目覚まし時計でほぼ起きることができるし、家族に話しかけられたらそれが小声でもすぐに起きられる。
楽しみなことがある当日は、起床と同時に踊ることもできるくらいには寝起きがいい。
これはショートスリーパーの特徴でもあるらしい。

一年前のその日、ついつい昔と同じような感覚で夜更かしをし、ほぼ朝の3時半くらいに眠りについた。翌日も平日である。
6時に起き、家族のご飯の準備、送り出し、自身の支度、出勤。

その結果が冒頭の症状である。
完膚なきまでの睡眠不足。
がんか?心臓病か?と急いで調べ、各サイトでしょっぱなに睡眠不足と書かれていた。清々しさすらあった。


10代、20代の頃、時々、そのくらいの短時間睡眠をしても、翌日の学校や仕事への影響はなかった。
何も自慢がない人間の、やベーw寝てねーw自慢を地でいく人間だった。

しかし年を経て今、睡眠が足らないと体が悲鳴をあげることを知った。
現在は1時前後に寝ているが、時々心臓が震えるような動悸がある。
私は似非ショートスリーパーだったのだ。

早よ寝ろ

そう言われればそれまでだが、私には毎夜、遂行せねばならないことがある。

それは誰にも話しかけられることなく、一人で堪能したいもの。


私はいつか漫画アプリに殺されるかもしれない。

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