週刊「我がヂレンマ」<7月29日号>

 書きだしなんてどうだっていい。汗が溢れる真夏の夜です。そんなことを書かないと何も始まらない気がして、ほんの出来心で、稚拙であることは承知の上の犯行です。
 それはそうと、明日は有給休暇の消化のため、休みでございます。つまり今わたしは、無敵ということですね。洗濯も終わり、風呂まで焚いているこの瞬間の「自由」は格別であり、翼も大きく広がるというもの。
 だからといって「無職」は煉獄であると心にとめておきたい。
 無職は、誰もいない世界の水面を遊弋する、オールのないボートのようなもので、解放感と同時に空虚が支配する状態である。自分はこの世で何の役にも立っていないと、止まり木のない根無し草は水面を漂い、腐るのみだ。
 一応、正社員でやらせてもらっている有難味を胸に、
 今週のコンテンツ。
<メモについての解説と考察>
<購入した書籍の紹介>
<マンデーひとり歌会>
 以上です。
 前置きは不得意ですから、始めます。

<メモについての解説と考察>

「乾坤一擲(けんこんいってき)」
「乾坤」は、「天地」「陰陽」「サイコロの奇数の目と偶数の目」「一か八か」という意味。「一擲」は「サイコロを一回だけ投げて勝負にでる」という意味です。
 因みに「擲」は「なげうつ」とも読む字です。
 つまり「乾坤一擲」は「天下を賭けるような大勝負に出る」ことを意味します。
 私もどこかで乾坤一擲な勝負にでなくてはいけませんが、今は日々精進ですね。

「このままが幸せだけど、このままではいられない」
 耳が痛い話。
 現状の私、幸せを感じることはあるが、全く満足はしていない。このままではいたくない。常に変化を望んでいる次第です。「飢え」を感じ「渇き」に悶え、書物を貪り、noteを書く。
 どこへむかっているのか。五里霧中の暗中模索であって――

「生きるために、無様」
 カッコつけてられねぇ、ということですね。地面に伏しても這いずってでも前進し、石に齧りついてでも不撓不屈の想いで人生をつかみ取る。
 泥臭くいこうや。自分を鼓舞する言葉に反応する昨今の私。余裕をかましている時間はもうないのだ。後もない。それにしても汗をかきすぎて、危険な暑さのなか、無様です。

「飛べない猛禽の今後は悲惨ですが、それもまた運命」
 これはユーチューブチャンネル『飯島レンジ iijima renji」での一言(おそらくテロップ)。怪我をした梟に遭遇したシーンだった気がします。野生の世界は厳しいですが、人間界もなかなかのものです。これが心に響いた理由は、自分に置き換えることが出来るから。
「稼げない男の今後は悲惨ですが、それもまた運命」
 こういうことです。綺麗ごとなんて言える立場ではございません。
 頑張ります。

「何してんだ何してんだ、、、、(吐きそう)」
 出典不明。まぁアレでしょうね。やってはイケないことをやっている現場に居合わせて、それは取り返しのつかない出来事。
 目の前のソイツはこちらの絶望など無視して、その行為をエスカレートさせる。
「何してんだ」を繰り返す最中、現実にアジャストし、次の行動を決定しているのだ。

「エンジェルパーク武蔵」
 正式には「えんじぇるぱーく武蔵」
 ネット上にある不気味なサイトの名前。学園らしさとアニメチックが多分に含まれ、混ぜ合わさっている。
 サイトホームにある入室口をクリックすると、このサイトで特に有名なページに飛び、顔写真が酷く変形した八名のい学生が表示される。
 それぞれ目が消失していたり、顔が渦模様になっていたり、首が長くなっていたり、顔が黒く塗りつぶされたり、人形のように生気がなくなっていたりと変形している。
 彼ら、彼女らをクリックすると文字化け・暗く狂った写真や点滅、生理的にキツイ画像が表示される。
 特に点滅はかなり激しく注意。
 サイトホームにある《真実の間》に特定の数字を入力すると攻略され、そのヒントはサイトの隅々に転がっている。
 謎解きとして遊べる暇潰しと、肝試しにうってつけの電波ホラーサイト。

「温気(うんき・おんき)」
 読みが二種類あり、読み方によって意味が変わる。
 トリッキーな言葉です。
「うんき」は暑さ。特に蒸し暑さのこと。
「おんき」は気候・空気などの暖かみのこと。
 今の季節は「うんき」のほうですね。
「温気溢れる雑踏で大汗をかき、炭酸飲料をもとめ彷徨う白昼夢」
 ここに湿気も加わる。
 厭なことに。

<購入した書籍の紹介>

「ディストピアSF論 人新世のユートピアを求めて」
                              海老原豊
『誰かのユートピアは、誰かのディストピアである。』

「ユートピアがディスピアに変容するトポス(場所)を古典的な作品から現代までSFに探る。
《監視》《人工知能》《人工調整》《例外状態》《災害》《気候変動》
《労働解放》などを鍵語に、
 ユートピアとディストピアとの境界線をたどりながら、人新世のユートピアを想像/創造しよう。」

主な目次
はじめに◉欲望されるディストピア
第1章 ◉古典的ディストピア――三部作から二十一世紀ディスピアへ
第2章 ◉監視ディスピア――スマート化された身体のアイデンティティ
第3章 ◉人工調整ディストピアと例外社会
第4章 ◉災害ディストピアとニーズの分配
第5章 ◉労働解放ディストピアの製造コスト
第6章 ◉支配と抵抗の脱構築

「少年」 
                              川端康成
『旧制中学。寄宿舎。美しい後輩との<少年愛>。川端文学の知られざる問題作、初文庫化』

 お前の指を、腕を、舌を、愛着した。僕はお前に恋していた――。
 相手は旧制中学の美しい後輩、清野少年。
 寄宿舎での特別な関係と青春の懊悩を、五十歳の川端は追想し書き進めていく。互いにゆるしあった胸や唇、震えるような時間、唐突に訪れた京都嵯峨の別れ。
 自分の心を「畸形」と思っていた著者がかけがえのない日々を綴り、人生の愛惜と寂寞が滲む。川端文学の原点に触れる知られざる名編。

 床に入って、清野の温い腕を取り、胸を抱き、うなじを擁する。清野も夢現のように私の頸を強く抱いて自分の顔の上にのせる。
 私の頬が彼の頬に重みをかけたり、私の渇いた唇が彼の額や、まぶたに落ちている。(略)清野は時々無心に眼を開いては私の頭を抱きしめる。
 私はしげしげ彼の閉じたまぶたを見る。              
                            (本文より)

「関心領域 THE ZONE OF INTEREST」
                        マーティン・エイミス
                           北田絵里子/訳
『第96回 アカデミー賞国際長編映画賞・音響賞 受賞』
『強制収容所という”鏡”が映す人間の本質。英国を代表する作家による傑作長編。翻訳権独占・早川書房』

 フィクション作家としてのエイミスが最後にその実力を存分に発揮した白鳥の歌ともいえる。本書におけるアウシュヴィッツの表象は重い過去の記録ではなく、目前にある事実につながる生々しい証言として、私たち読者に突きつけられているのだ。
                          (本書解説より)
                    ――武田将明(東京大学教授)

第96回アカデミー賞2部門受賞!「今世紀最も重要な映画」と評された『関心領域』の原作小説――おのれを「正常」だと信じ続ける強制収容所のナチ司令官、司令官の妻と不倫をもくろむ将校、死体処理の仕事をしながら生き延びるユダヤ人。おぞましい殺戮を前に露わになる人間の狂気、欲望、そして――。
 諷刺と皮肉を得意とする作家エイミスが描きだす、ホロコーストという「鏡」に映し出された人間の本質。

「悪友」
                               榊原紘
『第2回 笹井宏之賞 大賞受賞!』

「楽になってほしいだなんて 憎しみの眼窩に嵌まる月をください
 もたれていたガードレールの粉はらい白夜みたいに笑ってくれた」

 一首一首が頑なに手放そうとしない純粋な心のきらめきのようなものを、とても得難いものだと感じた。しなやかで力みのない文体で、強い思念が一息に手渡される(……)
 奇跡が、この歌集のなかでは何度も起こっている気がする。
                            ――大森静佳

 ゆらぎはゆらぎのまま、韻律をあたたかく満たして歌う榊原の姿に、つい性別や関係性の重力に縛られている自分の姿を省みる。(……)
 どうか勝手に縛られて落ち着かないで、ゆらゆらと濡れて乾いていく作者の息遣いを聞いてみてほしい。
                           ――野口あや子

【目次】
名画座
悪友
はためく
飛び級
海鳴りの語尾
戯れに花
猫はどこへ行く
20ゼーロを賭けて(漫画・アニメ『血界戦線』より)
さらば楽園(漫画『ハイキュー‼』より)
DUNKIRK(映画『ダンケルク』より)
サードランナー(漫画『おおきく振りかぶって』より)
Krakow
いつかの冬
ゴーレム
メフィスト
由来
虹を
強くてニューゲーム
でも窓辺から
天国と春服
短い脚立
幽霊とスノードーム
生前
あとがき

「koro」
                               榊原紘
 眼の奥に錆びた秤が一つあり
 泣けばわずかに揺れる音する

救われたくない。ゆるされたくない。そう何度も叫んでいる。
                             ――江戸雪

榊原の美意識は現代短歌において実に独自性が高い。そしてその根底には、神秘への思慕がある。
                            ――黒瀬珂欄

この作家の器の大きさに感嘆した。自在な言葉が相応な重さを持って宇宙の謎に拮抗している。怖るべし・怖るべし・怖るべし。 
                            ――水原紫苑

銀漢に表裏があれば手触りは違うのだろう 指環を外す
百合のように俯き帽子脱ぐときに胸に迫りぬ破約の歴史
額縁を焼べてきたかのような貌ゆっくり上げてただいまと言う
ボトルシップの底に小さな海がある 語彙がないから恋になるだけ
ヘアバームのくらいにおいだ泣くのなら最初の一粒から見ていたい

<マンデーひとり歌会>

 榊原紘さんの鋭利な真剣さにすこしあてられて、幾ばくか本気で詠ってみようかしら。そう思い立ちました。
「五七五七七」と「季語はいらない(使用可)」だけ守っていればイイだなんて、なんて軽薄なことか。言葉を磨きたいだなんて大見得切って、恥ずかしい限りです。
 恥ずかしいのが、わたし。
 自慢できることなんて、何一つない。
 だからこそ文章を書くしかない。不器用というより、優柔不断の取り越し苦労にできている性根、腐って震える自我はガラス細工です。そよ風でヒビがはいる程度の強度で出来ています。
 さ。詠いますよ。

酒入れる酩酊せずにアテを食むこれでいいやとほとんどシラフ

母の死後 かつての日々は薄れゆく確かにあったけども陽炎

父の罪 許さざること虚しきかなされど燻るたしかな痛み

絵が好きで褒めてもらって嬉しくていつしか筆は折って投げ捨て

孤立してだからといって動かない根をはる意識沈む夕暮れ

信仰は自我を抑えて閉じ込めた付和雷同に安らぎ求め

幾千の時を超えても変わらない軸を外して投げろ虚空に

老け込んで萎れ腐りて世の果てに風が吹きこみ忘れる暑さ

人の目は我が目線です気づく夜水瓶濁る匂うジレンマ

偏見を かなぐり捨てて逃げ遅れ視界ぼやけて生きる現世で

 とりあえず十首、でっちあげてみました。
 少しは真剣になってみて、集中してみました。
 どうなんでしょうね。そこそこ続けているが、これでいいのかと自問自答です。やる気だけはあるんで、これからも続けますけど。
 それはそうと、
 鈴木福くんにお小遣い、貰いたいです。
 見下し切って冷徹、無感情な瞳で刺されたい。
 決して振り返らない福くんの背中、蹴りたい欲求を抑え込み、血が滲むまで唇を噛みたい。そして恵んでもらった銭で、富士そばでそばをすすりたいのです。
 芦田愛菜ちゃんでも、いいんです。
 思いっきり年下に自尊心を粉砕されて、自我のカケラを地道に拾って再生したいのだ。ここ最近、手遅れの雰囲気(ムード)が立ち込めて、視界はぼやけて大変です。
 しかし、短歌は楽しい。季語と常識にとらわれない自由さ。
 少しでも良い歌を詠えるよう、食事と排泄、仕事と怠惰、頑張ります。


  

 
 
 
 

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