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「動物病院四方山話」16(味付け海苔パニック)

私の名前は「みぃ」
動物病院で暮らしている猫
私が経験した動物病院での四方山話を紹介しています

前回の動物病院四方山話はこちら


仕事が終わって二階へ戻り、ほっと一息ついた時。
携帯電話の着信音がなった。

そう、当時はスマホではなく二つ折りの携帯電話だった時代


一平ちゃんは携帯電話の画面で電話をかけてきた相手を確認した。
近くに住むいとこからだったみたい。

「もしもし~」

と呑気そうに電話に出る一平ちゃん。

と、その声が一変した。

「どうしたの?」
「えっ!?」

緊張感が走った。

「分かった、すぐ行く。」

と言って、一平ちゃんは急いで出て行った。


いとこのおうちには、犬のハナちゃんがいたの。
ハナちゃんはビーグル犬の血が入っていると思われる雑種。
長らく河原で過ごし、その間に少なくとも2回程出産を経験していたらしい。

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当時、その話を聞きつけた叔母さんが10年くらい前にハナちゃんを引き取ったんだって。

ハナちゃんはとても大人しく人懐っこかったので、すぐにいとこ達には馴染んだんだって。
でもね、外での生活が長かったせいか、家の中の生活には全く馴染めなかったみたい。
家の中にいてもソワソワして、落ち着かなさそうにしていたらしいわ。

困ったいとこたちは、玄関にハナちゃんの寝床を作ってあげたの。
なんとかその寝床だとハナちゃんは安心したみたい。
そこで寝るようになってくれたんだって。

それから20年近くいとこのうちで可愛がられていたんだけど、とうとう最後まで玄関から上にはあがろうとはしなかったそうよ。

そんなハナちゃんの大好物が、味付け海苔なのよ。
夜ご飯が終わってから、1枚だけ味付けのりをもらうのが日課なんだって。

味付けのりを手に持って少しずつかじらせてあげるんだって。
そうすると、1枚の味付け海苔もすぐには食べることができないから、長く楽しめるんだって。

その日もご飯が終わり、お楽しみの味付け海苔タイム到来。
手に持っていつも通りに海苔をあげていたの。
ハナちゃんもおいしそうにカジカジと海苔を食べていたらしいわ。

うさぎ年の今年もあとわずかですね

三分の一ほど海苔を食べた時に、海苔が指から離れてしまったんだって。
海苔が大好きなハナちゃんは、パクっと残りの三分の二の海苔を口に入れちゃったの。
その途端、ハナちゃんは発狂したようにキャンキャン鳴きだし、暴れだしたそうなの。

顔を地面にこすりつけたり、両手で口を掻きむしりだしたりして。
パニックになったハナちゃんの様子に、いとこは何が起こったのか分からずおろおろするばかり。
そこで一平ちゃんに電話がかかってきたの。


急いでやって来た一平ちゃん。
ハナちゃんの状況を見て、ピンと来たみたい。
前にも同じようになって急いで病院に来られた子がいたのよ。

「味付けのりを食べたんだよね?」

「そう、その直後にこうなったの。」

と、いとこ。

「多分、海苔が上あごに張り付いたんじゃないかな?」

一平ちゃんは、ハナちゃんの口を強引に開けて中を覗いた。
普段絶対に人を咬まないハナちゃんなんだけど、パニックに陥っているので咬まれても仕方がない、と覚悟を決めながら。

案の定、上あごに海苔が張り付いていた。
一平ちゃんは指を口の中に入れて、ハナちゃんの上あごから海苔を剥がしたそうなの。
と、その瞬間
ハナちゃんは大人しくなったんだって。

ハナちゃんにしたら、口の中に何が起こってるかなんて分からないものね。
そりゃあパニックにもなるわよね。

人だったら海苔が張り付いたら、手や箸などで取り除くこともできるけど、ワンちゃんや私達には無理よね。
おまけに味付け海苔は焼きのりより、表面が少しベトっとしてくっつきやすいものね。

それからは1枚そのままではなく、小さく切ってさらにとクシャっと丸めてあげるようにしたんだって。

こうしてあげると、上あごにくっつくことはないですね

おうちに帰ってきてから、

「ハナちゃんはね、海苔をとってあげる時も決して噛みつこうとしなかったよ。」
「ハナちゃんは本当に優しい子だね。」

って、一平ちゃんが言っていたわ。

おわり


今年も残りわずかですね。
noteを初めて半年弱、つたない文章にお付き合い下さり、ありがとうございました!
次の投稿は年が明けてからになると思います。
来年もよろしくお願いします!

それでは皆様、良いお年をお迎えください!!

里塚

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