RE: 運命だと言うのなら、一緒に来い

書き始めは2:30。
深夜、時間の力、俗に言う深夜テンションの力を借りて貴方へのノートを書こうと思う。きっと後から紙の手紙も書くのだと思うが、noteにはnoteで返すのも良かろう。このプラットフォームの良いところは私が記事を好き勝手削除できるところだ。だって、私の書いたつまらない誕生日祝いの手紙をいまだに貴方は読み返すと言うのだから、いつでも消されうる手紙というのも悪くはなかろう。

先に言っておく。これは完全に個人宛ての記事だ。それを全世界に公開しようと言うのだからおかしな話だが、知らない誰かが誰かに宛てる心の片鱗がエンターテイメントになる2022年だ。許してもらおう。文豪の手紙は世界に読まれるのだ、と紙くず以下の文章を生産している小娘はほざいている。

さて。”貴方”こと、6月11日に突然『スウェーデンなんぞに行かないでくれ』と名の付くとんでもないラブレターならぬラブ記事を公開した貴方とは、出会って丸2年ほどになるだろうか。今年の８月からスウェーデンに留学する私に宛てて、学科の友である貴方は思いの丈をたっぷりと綴ってくれたわけだが、読んでるこっちは、嬉しいやら、恥ずかしいやら、「あの野郎っ、やりあがったな！」なんて照れの気持ちもあって、ちゃんと泣いた。

――くそっ。愛が重いんだよ。

貴方ったら、「きっと彼氏に求めていることと、貴方に求めていることはほとんど同じもので」なんて書いてるし、手紙を書くタイプの恋人がいるのはこんな感じなのか……とか考えてしまったよ。

貴方は私を何でも話せる人だと言ってくれる。そして貴方はそんな彼氏が欲しいらしい。

私だって同じ。恋人とは貴方とするような話をしたいし、貴方といるように、そんな関係を結びたいと思ってしまう。

有名人の結婚報告とかでよく聞く、「この人なら何でも話せる」とか、「話が尽きなくて、気づいたら何時間も経ってる」とか、私はそんなの嘘八百だと思っていた。耳触りの良い、外面の話。だって、話の種なんてやっぱりいつか尽きるに決まっているし、私は誰かと一緒はあんまり好きじゃない、お一人様万歳人間だから。

でも、貴方はそれが嘘じゃないことを証明してくれた。貴方の言う、「時間が溶ける」というそれ。０時過ぎに何となく始めた会話が気づくと朝の９時を迎えている。やっと電話を切る頃には何となく声が枯れている。笑える。

話の種とか、一人が好きとか、そういう問題じゃなかった。貴方と私の思考そのものが種で、日本語か英語か、共通で話せる言語を失わない限り、二人の言葉が交わされ、水となる限り、花は咲き続けるようで。少し英語系学科らしいことを言うなら、"I like being alone with you." ってことじゃないかな。

こんなことを言うのはぶっ飛びすぎでおかしいかもしれないけれど、私と貴方は”Pretend”という言葉がぴったりだと思う。私は貴方に重ねて色んな人を見ているし、貴方も私を誰かに重ねていることを私は知っている。

私は、貴方の人間関係を自分の人間関係と同じように考えることがある。それで煩わしいと思うことがある。貴方には貴方の世界が広がっていて、私には私の世界が広がっている。私と貴方は近くても違う国の住人だから、それだから私は貴方を魅力のある人だと思うし、尊敬するのだけれど。貴方を拉致してずっと目の前に置いておきたいと思う時があるし、貴方の国の全ての人間にガン飛ばしたい気分になる時がある。

ま、そんなことはしないけど。だって、貴方自身を生きている、貴方のままの貴方が好きだから。

課題そっちのけでアニメ見まくっている貴方が好きだし、何にでもエッチって言っちゃう貴方に共感するし、何でもかんでも「まぁいっか」で済ませちゃう時は心配になったりするけど、それで時々攻撃性出して「やっちまったなぁ」なんて戒めてる貴方を、ちょっと可愛らしいと思ったりする。

もうちょっと自分の健康に気を遣ってよ、と思うことはあるけど。
（ま、私が言えたことでもない）

そんなこんなで、
１年間、貴方が私の視界から外れるのは嬉しくはない。「心配」、なんて言うのはなんだか上から目線で嫌だけど、貴方のことが「気がかり」というのは私の素直な気持ち。

それに貴方、最近は「寂しい寂しい」ばかり言ってるしね。言ってなくても、それをありありと感じるしね。

いつか貴方は言っていた。「一緒にいること、そばにいること」に自分は重きを置いているのかもしれないと。だからきっと貴方は、１年間も一緒にいられない私に寂しいと言ってくれるのだと思うし、私との別れを嘆いてくれるのだと思う。

貴方が最初に「寂しい」と漏らしたとき、私は「嬉しい」と言った。ちょっとした悪戯心だった。だからあの時、「寂しくないのかと思ってた」なんて言わなきゃ良かったと少し反省している。貴方の反応があまりに深刻だから。

実は私は「それほど寂しいと思っていない」、なんて言ったら貴方は怒っちゃうだろうか。

勿論、私は自分の望みを叶えて留学に行く側で、言わば貴方は後に残される側だから、相応の心情の違いはあると思う。

でも私は、
「一緒にいられない」一方で、貴方だから「ずっと一緒にいられる」と思っている。例え物理的に離れても。

きっと私は、「繋がっていること」に重きを置いているのだと思う。

私の中では、スウェーデンにいようが、地球の果てにいようが、太陽系の外まで飛ばされようが、貴方とは繋がっていられる自信がある。私は貴方のことを忘れないし。貴方も私を忘れないに決まっている。

あの記事で、貴方ったら、

貴方は優しいから、「LINEする」とか「zoomで話す？」とか、連絡をとりあおうとしてくれる。

なんて書いていたけど……

あら残念。私はそんなに優しい人間じゃないの。

私がスウェーデンで見る新しい景色、面白い出来事、ぶち当たる壁だって、全部全部、貴方に見せたい。貴方と話したい。だからLINEするし、もしかしたらLINEじゃ足りないかもしれないから、「zoomする？」なんて訊いちゃった。

私は貴方が思うよりも、もっともっとワガママで悪い子だから。

「心置きなく忘れてほしい」とか、「思い出す暇もない」とか貴方はそんなこと言っているけど、貴方はこれから７時間の時差を越えて私のメッセージの相手をしないといけない。だから、申し訳ないとは思いつつ、覚悟しといて欲しいくらいだ。

だから、「行かないで」と言われるのは少し辛い。
だって私は、貴方に沢山の新しい話をしたいし、変な写真を送りたいし、とんでもないお土産を買いたいから。

つまりは、貴方だって、私と一緒にスウェーデンに行くんだから。

だから貴方こそ、「寂しい」ばかり言っていないで、面白いご友人達と面白いことを沢山楽しんで、そういうことを私に話して欲しい。

だからまずは、私がちゃんとストックホルムに辿り着けるように祈っておくれよ。私はどんくさいから、トランジットに失敗してドーハで足止めとか全然ある。

あ、あと、私は結構本気でイケメソ捕まえるつもりでいるからな。「葵々よりいい人いないから」とか言ってないで、ちゃんとアンテナ伸ばしときなさい！

それでもし、本当に貴方に恋人ができたら、帰国一番に私に会わせてね！

一発殴ってやるから。