マガジンのカバー画像

リレー小説集

6
ボーンと幸のリレー小説集
運営しているクリエイター

記事一覧

階段を登る君を見つめて➕追伸

階段を登る君を見つめて➕追伸

「初恋!?。いつの事か思い出すのも困難だ。
この歳になると。最初誰に恋したっけ?」
初老の男は、5歳の孫の質問に真剣に悩んでいる。
「そう、あれは・・・」

男は頭の中で時を戻し始めた。
目に浮かび見えてきたのは、五月雨の季節。
中学二年生だったあの時の体育館。

私が淡い感情を抱いている娘が僕の側にいた。

時々、彼女と目線が重なり合う。
トキメキを隠しながら、素知らぬ顔の僕。
その娘も恥ずかし

もっとみる
魂の記憶(短編小説)

魂の記憶(短編小説)

私は、まだ5歳。
と、いうことになっている。
私の初恋は、前世で中学生の時だった。
彼との初キスの時彼の頭の中でかかっていた曲は、映画音楽の「愚かなり我が心」だった。
彼はまだ、私を覚えているだろうか?

私は、おじいちゃんに、聞いてみた。
「ねぇ、おじいちゃんの初恋の話、聞かせてよ」
おじいちゃんは、困っているみたいだった。
やっぱり、私の事なんて、覚えてないかな?
寂しい。
私だけの秘密。

もっとみる
電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話)・起

電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話)・起

不思議色の空の下、向かい合うように、電柱と樹木が立っていました。
端から見ると、とても仲が良さそうに見えました。
でも、二本はいつも、テレパシーで会話して、いがみ合っていました。
女の電柱は、スレンダーで、黄色と黒の縞模様の衣装を身に付けて、お洒落をして、そんな自分を気に入っていました。
しかし、男の樹木は嘲笑しつつ、言いました。
「へっ!ブスほど身を飾るっていうけど、本当だな」
「何?それ、私の

もっとみる
電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 承

電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 承

一部始終を見ていた観音は、どの様にしたら二つの物達が仲良くなるかを
考えていました。
…お互い、何故憎しみ合うのか?樹木と電柱は物が違っていても、
歪み合う事はないはずだ。…
観音様はこの様に考えていました。

しかし残念な事に観音像は動けない。
あの物達の側にも行くことが出来ない。
また、私はあの物に対して言葉を伝える通力も無い。
観音の想いをどの様に伝えるかを、思案していました。
そうだ!お釈

もっとみる
電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話)・転

電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話)・転

「さて、どうしたものか?」
閻魔も困って首を捻りました。
お釈迦様も、観音像も、みんな、他人任せか。
ま、どうせ痴話喧嘩か何かだろう。
痴話喧嘩は犬も食わないというしな。
そうだ、韋駄天に頼んで、急いで、お互いに方便の恋文を届けさせるとするか。
善は急げと言うしな。
閻魔は心の中で思いました。
そして、閻魔堂から、目に見えない新しい巻物を、二巻き取り出して、眷属の太山府君に、恋文を書くように命じま

もっとみる
電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 結➕追伸

電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話) 結➕追伸

「物凄いスピードで走ってくるのは誰だ?」
と、電柱は目を細め、
走る姿を見て韋駄天という事が解った。
韋駄天は、電柱に宣伝の張り紙を貼る仕事をしているからだ。
「また、私の身体に変な物貼るのね。嫌だわ」

韋駄天は、着くなり、
「電柱さん、今日お手紙持ってきたよ。
これはそんじょそこらにある手紙と違うよ。
これは、樹木が貴女に宛てに書いた恋文だよ。
樹木は貴女の事が好きなんだよ」
「えっ、樹木さん

もっとみる