小説家志望

「俺、小説家になりたいんだよ。」
「そうか、何かコンクールとか応募してるのか?」
「いや、俺が書いてるのはショートショートと言われる短い小説でな。長いのもいつかは書いてみたいんだがまだまだ。」
「へぇ、でも今ならネットに載せて読んでもらうとかも出来るし、やれば良いんじゃないか?」
「それも考えたんだが、タダでせっかく書いたものをどんどん読ませるのもったいなくないか?頭を捻って出したアイデアなのに。」
「いや、小説家になりたいなら、たくさんのアイデアをどんどん出せるくらいじゃないと駄目だろ。とりあえず読んでもらって反応見ればいいと思うんだけどなぁ。」
「まぁ、そう言うならやってみるか。何に載せるのがいいかな?」
「お、これなんかどうだ?読者がサポートっていって投げ銭してくれる機能も付いてるらしいぜ?」
「あぁ、これいいな。じゃあ早速やってみるよ。お前も読んで感想聞かせろよ。」
「おぉ。楽しみにしてるぞ。」

「久しぶりだな。お前の小説読んだよ。なかなか面白かったぜ。」
「おぉ。少しは読者が付いてくれてな。小銭だけどサポート貰ったんだぜ。これ嬉しいもんだな。でもこれで生きてくためにはもっと書かなきゃなんだが、時間が足りなくてな。もうすぐ仕事辞めるつもりなんだ。」
「えっ!お前、仕事辞めて生活大丈夫なのか?」
「あぁ、少ないけど貯金あるし、俺の覚悟だな。頑張るよ。」
「そうか、応援してるよ。」

《ここから2つの結末に別れます》
パターン1

「お、久しぶりだな。どうだ、俺の小説は?
最近は評判良いんだぜ。読者もたくさん付いてサポートも貰えるようになってな。俺に合ったジャンルが分かってからアイデアがどんどん出てきて書くのが楽しいんだ。
 俺のおすすめは『古代の猛毒を蚊に入れてどんどん人が死んでいくやつ』とか『クローンに代理殺人させるやつ』とかだな。SFホラーっていうジャンルなんだが他にやってる人も見かけなくてな。パクリと言われることも心配せずやれて最高だよ。あとは書籍化とかあればいいのにな!」
「あぁ・・・。俺も読んでるよ・・・。評判良いのは結構だが・・・その・・・お前大丈夫か?」
「ん?大丈夫って何がだ?」
「いや・・・あの・・・公安だよ。お前、目つけられてるんじゃないか?
知ってるだろ。危険思想を持つやつは犯罪者と同じように捕まるって。」
「あははは。何言ってんだよ。全部小説だぜ。フィクションと現実の区別くらい付くだろ。」
「なら良いんだけど・・・。」

「失礼します。」
「あなた達は誰ですか?」
「公安の者です。あなたは危険思想がある犯罪予備者と判定されました。
よって逮捕いたします。」
「ちょっと待ってくれ!俺は小説を書いてるだけだ!」
「えぇ、ですが取材と称して様々な文献、研究を勉強なさっていますね。
その知識は悪用するととても危険です。そしてあなたが書いているものを読ませて頂いた結果、その知識を悪用するプランも持ち合わせていると私どもは判断いたします。」

パターン2

「久しぶりだな。調子はどうだ?最近のお前の小説読んだが、殺人とか犯罪の話ばかりじゃないか。しかもどんどんグロテスクになってて心配してるんだが・・・。」
「あぁ・・・。正直上手くはいっていないんだよ。サポートも増えなくてな。だから注目を集めようと思ってな。どんどん内容も過激になっていったんだ。そういうのが好きな人達で読者も少しは増えたんだが・・・駄目だな。全く生活していけないよ。」
「お前、少し小説書くの止めて働いたらどうだ?外に出て人と話すだけでも違うぞ。」
「いや、ここまで覚悟を持ってやったことだ。今更やめられない。」
「・・・無理するなよ。」

「なぁ、お前もうやめろ。小説でもなんでもないじゃないか!
反ワクチンとか政治批判とか芸能人批判とか。誰かの批判意見に乗っかってただ垂れ流しているだけじゃないか。お前信念あるのかよ。小説家になりたいんじゃなかったのかよ!」
「ははは。最近稼ぎがとても増えたんだぞ!これだけで十分生活できるほどだな!もっと注目を集めれば俺は大金持ちにもなれるさ!」
「お前・・・もう小説家の夢は忘れちまったのか。ただの金の亡者だな・・・。」
「はっ!なんとでも言うがいいさ。注目を集めれば多くの金が転がり込んでくるからな。もっと注目を集めるには何をすればいい?ふふふ・・・。」
「ちょっと待て!その手の包丁を離せっ!寄るな!やめてくれっ!!」

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