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市場動向の確認と経済ニュースの注目点(6/30~7/6)

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<マーケットチェック>


英国(7/4)、フランス(6/30に第1回投票、7/7に決選投票)、日本の東京都知事選挙(7/7)と政治のイベントが続いています。米大統領候補の討論会で現職のバイデンが冴えず、撤退圧力も高まっていますが、現時点ではトランプ優位を覆す様な候補は見つかっていません。政治イベントはかなり警戒されていましたが、やはり最大のイベントである米大統領選挙に関心が移ると共に、インフレが落ち着いてきているので、当面は米国の失業率にマーケットの関心が移りそうです。

株価


日本株は需給的にもテクニカル的にも下を見ていた投資家が多い中、上昇して高値を更新してきました。
まだ、大きな動きにはなっていませんが、アップサイドリスクを考慮する動きが徐々に出て来つつあります。
日本株独自の要素を見てみると、株主総会シーズンが終わりましたが、その集計結果を見ると、アクティビストからの株主提案に対する賛成の比率は高いものもありましたが、結果的に成立したのはストラテジックキャピタルのダイドーリミテッドへの提案にとどまっています。また、7月1日に発表された6月日銀短観における大企業の2024年度利益予想は前回比下方修正されていますし、小売企業の決算も一部のインバウンド関連を除くとあまり良くありません。
テクノロジーを中心とする世界的な株高に対して後れを取っていた日本株が少しそれを取り返した事。外国人はどちらかというとショートポジションであった可能性もあり、その修正が行われたという側面が強そうです。

金利

金利は国債買入れの減額計画など日銀の動きがどの様なものになるのかが気になりますが、大統領選のシナリオによって米国の金利に影響が出ることも気になります。現時点ではインフレ鎮静化への期待が高い訳ですが、トランプ大統領が圧勝し、議会も共和党が勝利した場合、法人税カットによって財政悪化リスクがあります。現在、米国の財政見通しはトランプ減税が終了するという前提で作られているため、それが崩れた場合、債務上昇懸念から金利が上昇する可能性を意識しておきたいと思います。
また、世界的にも今年は利下げが見込まれていたわけですが、物価高や、米国の政策金利が下がらない事で、利下げをした場合の自国通貨安懸念などから金利引き下げに躊躇する動きが出ている事も気になります。

為替


これまで通り、日銀のスタンスは金融引き締め方向に動いており、日本は金利引上げ方向、米国は短期的には利下げが先延ばしになっていますが、いずれにしても米国は金利引き下げ方向という見方は変わっていません。
しかし、そのペースは日米ともに市場が当初予想したペースよりもスローという事だと思います。もし米国の金利がなかなか下がらない、あるいは上昇するという事になれば、円高に向かうチャンスを逸するリスクもあります。ここは決め打ちしにくい状況だと思います。

<注目したニュース記事>


6/30日経 日本企業、新陳代謝の兆し

日本企業の新陳代謝が進む兆しが見えてきた。2023年の新設は14万社超と前年から約9%増加している。コロナ対策の公的支援の縮小に伴い、廃業も増加している。物価や賃金、金利の上昇により、企業は生産性向上が不可欠になっている。市場の規律が働かず低成長に苦しんできた日本経済の潮目が変わる可能性がある。

政府はスタートアップの支援を強化し、新興企業への投資を促す税優遇措置を拡大している。デジタル化の進展により地方での開業ハードルも下がっている。スタートアップで働く人を対象とする健康保険組合も設立され、企業の負担が軽減されている。

しかし、持続性に課題があり、特に合同会社の倒産が目立つ。新規企業の質の担保も課題となっている。競争による企業淘汰は市場メカニズムの健全性の表れであり、危機後の今こそ新規企業の参入や事業構造の転換を促す政策が必要である。

インフレと金利上昇の環境では、企業の実力が問われる。技術やアイデアを持つ企業が生き残りを競うことで市場に活力が生まれる。新陳代謝の動向は日本経済の再浮揚のバロメーターとなる。

<河北コメント>
米国に比べて日本は企業の新陳代謝が遅れていると言われてきました。コロナ禍でも米国では一気に倒産が増加し、その後、V字回復したのに対して日本は倒産が少なく景気の回復も緩やか、ここに来てやっと構造改革が進みだしています。

7/1日経 物流から見る景気 鈍い荷動き、今期も続く

<要約>
新型コロナウイルス禍が収束し、人の流れは戻ったが、原材料や部品、製品などの物流の回復は遅れている。セイノーホールディングスの西濃運輸社長、高橋智氏によれば、物流部門の2024年3月期は減収減益であり、個人消費の低迷や物価上昇が影響しているという。賃金上昇が物価上昇に追いつかず、物流にも影響を及ぼしている。

特積み貨物の物量は前期比3.5%減少し、2025年3月期もほぼ横ばいと予想される。今期の増益は主に運賃の値上げによるものであり、運賃への転嫁には時間がかかるとしている。また、医療やEVバッテリー関連などの分野は成長が見込まれるが、賃上げによる人材確保が必要である。

物流業界では提携や再編の動きが進んでおり、人口減少に伴うドライバー不足に対応するため、提携や再編が避けられない状況である。自動運転技術への期待も高まっており、セイノーHDは自動運転技術の開発投資を進めている。

全体として、物流業界は引き続き厳しい状況にあるが、新たな技術や戦略により、業界の改善と成長が期待される。

<河北コメント>
私は生産年齢人口が減少する事で、今後継続的に賃金が上昇して行くという見方をしています。ITなどではその様な動きも見られますが、物流業界などでその様な動きが顕在化して来るかに注目しておくことが重要と考えます。

7/1日経 高圧経済阻む人手不足

<要約>
日本経済は長期停滞から抜け出す一方で、新たな難題に直面している。労働力不足の深刻化により設備投資が先送りされ、省力化も思うように進まない状況である。政府と日本銀行は財政出動と超金融緩和で「高圧経済」の実現を目指しているが、人手不足が大きな壁となっている。

企業の設備投資意欲は強いが、実際の投資額は計画を下回っている。日本政策投資銀行の宮永径執行役員によれば、建設工事のパイプラインが各段階で目詰まりを起こしており、大型プロジェクトの遅延がコスト増加につながっている。また、24年問題による残業規制強化も影響している。

地方では人材の流動化が進まず、建設関連企業では資格を持つ技術者の引き抜きが難しい状況にある。労働力不足は建設業だけでなく、宿泊・飲食業や運輸、介護分野にも影響を及ぼしている。人手不足が続くと、実質GDPに年平均0.8%の下押し圧力がかかると予測されている。

コロナ後の米国経済と日本経済を比較すると、米国は急速な利上げによる高圧経済が雇用増や賃上げを促しインフレ懸念をもたらした。一方、日本では供給制約が続いている。労働力不足を解消するためには、高齢者や女性の労働参加の促進と外国人労働者の雇用拡大が必要である。

人口減少が進む中、働き手を増やすための改革を早急に実現しなければ、日本経済の停滞からの脱却はさらに遠のくことになる。

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