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夢見て生きるか、現実を生きるか【ラブライブ!スーパースター!!2期6話】

 アニメ『ラブライブ! スーパースター!!』2期も半分の6話まで放送された。直近の5~6話は新メンバー・オニナッツこと鬼塚夏美がLiella!に加入するまでの話をメインにしていた。高校1年にしてエルチューバー(≒YouTuber)としても活動し、さらにエルバーイーツ(≒UberEats)の配達員や引っ越しのアルバイトまでこなす多忙の彼女から考えさせられたことを記しておく(毎度のことですがネタバレあります)。

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 中学までは大きな夢を描いていた。オリンピックで金メダル、ノーベル賞を取れる科学者、世界を駆け回るモデル。しかし、現実は足が遅い、算数も苦手、あまつさえ低身長で、いずれの夢も叶える適性が無いことに気付く。

 こうして若くして現実主義者となった夏美は「マニー」が口癖となり、バイトや動画配信の収益で「お金を稼ぐ」ことでしかアイデンティティを見出せなくなる。だからこそ、既に加入済みの1年生3人にこんな台詞を吐いた。

夏美「超えるのが、夢なんでしょ? 先輩たちのステージを超える、それが皆さんの夢だったはず。だったら……責任は持つべきですの! 諦めるくらいなら、夢なんて語って欲しくない!」

夏美「皆さんの夢は、決して実現不可能な夢ではない。それはとても素晴らしいことですの。頑張れば手が届くかもしれない、そういう夢があるというのは」

6話より、一部略

 この時点で夏美はまだ「Liella!のプロデューサー(と言いつつ本音はLiella!を利用して動画の視聴回数を稼ぎたいだけ)」という名目だった。そんな彼女に正式メンバーの勧誘を図ったのは1期からの主人公、現2年生の澁谷かのん。

かのん「夏美ちゃんに、9人目のLiella!になって欲しいんだ」

夏美「……話の脈絡が見えませんの」

かのん「そうかな? 夢が無いなら、みんなと一緒に同じ夢、追いかけてみない?」

夏美「……無理ですの。私は、これまでたくさんの夢を見て来て、何も叶わないって分かったんですの」

かのん「私も色々挫折してきたよ。結ヶ丘の音楽科に入るって夢を持っていたけど、それは失敗しちゃって。でも、可可(クゥクゥ)ちゃんやみんなが教えてくれた。みんなとなら頑張れるよって。お互い欠けているところや届かないところを補い合って、一緒に夢を追いかけることは出来るよって」

6話より、一部略

 かのんも1期1話で音楽科の受験に失敗し、一時はヘッドホンで外界の雑音を遮断するまでにやさぐれていた。しかし、可可に誘われて始めたスクールアイドル活動によって、普通科でも輝くことが出来た。

 一人では叶わぬ夢も、みんなと一緒ならあるいは――かのんの想いを受け取った夏美はLiella!への加入を決意、文化祭のライブは“9人で”成功させたのだった。

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 ここからは私の考察だが、Liella!に加入するまでの現実主義者・夏美は楽しそうには見えなかった。学校に行きながら肉体労働のバイトもして腰を痛め、家では動画の撮影に編集、とても高1のキャパシティーとは思えない。あくまでも目的はお金であり、その手段自体にやりがいを感じていなかったのではないか。

 しかし、かのんに言われるがままダンスのステップを踏んでみると、その気持ち良さに気付く。夢を見つけてからの夏美は覚醒した。運動音痴を克服し、人一倍練習に励み、その結果学園祭ライブでいきなりセンターポジションを務める。感想は「最高だった……ですの」。

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「現実を生きる夏美」から「夢見る夏美」へ。彼女にとっては後者に生まれ変わったのが正解だったようだが、かのんに誘われることなく現実主義者のまま生きたとしても幸せだったかもしれない(人を騙して利用する行為は控えていただきたいが)。そして、私を含む多くの大人たちも現実を生きている。とうの昔に夢を諦め、第一志望でない会社に就き、お金の為に働く。これは普通と言えば普通なのだが、何かの弾みでアイデンティティやレゾンデートルを失い、ただ死んでいないだけの抜け殻と化してしまうかもしれない。そう考えると現実主義者もある意味では博打である。どうせ博打なら夢を見て生きる人たちのほうが格好良く見える。

 だからどちらでも良いと思う。私はこの先も現実を生きるし、夢見て生きる人を尊敬する。ただ、夏美の言うように「夢に責任を持つ」ことを忘れずに。それは万が一叶わなかった場合の責任、あるいは逆に叶った後の責任という意味も含まれると思う。

 というか現実を生きると決めた人も、その決断とそれに伴う結果に責任を持つべきである。いずれにせよ責任である。世知辛い世の中である。

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