当方128の『ちょっとだけ成長した話』
おはようございます、当方128です。
みょー様の第五回『 #ちょっとだけコンテスト 』、ギリギリになりましたが3本目のエントリーです。
第四回総評記事でクロワッさん様がリークしたお題にしました。実際のお題は『自由』となりましたが、素敵なお題だと思ったので僭越ながら使わせていただきます。
『下を見るか、上を見るか』
「現状維持でも構わない」
10年前、コンビニエンスストアの最終面接で社長に言われた台詞はそれしか覚えていない。成長はしなくても良いのかと当初は疑問に思っていたが、入社1年半後に店長に昇格してからその言葉の本当の意味を知ることになる。店員としての業務に加え、アルバイトスタッフへの教育、シフトの作成、発注に売場作り、給料計算など、どんなに長く居ても仕事が終わらない。店長就任初期は昼12時に出勤して朝5時まで帰れない日々が続いた。
現状維持でも構わない──その真の意味は「現状維持さえも難しい」だったのだ。サービス残業や休日返上をしてまでヘトヘトになりながら仕事に追われるだけの日々。とにかく店を止める事なく回し続ける、それしか考えられなかった。
そんな私に希望を抱かせてくれたのは、ありえない理由で辞めていったクズ社員たちだった。女子高生スタッフにLINEを送り続けた挙句デートに誘うなど執拗なセクハラをして解雇になった奴、部下と口論になり翌日にバックれた奴、高価な栄養ドリンクなど店内商品を何度も横領した奴、レジ金を10万円近く盗んだ奴、2時間以上の遅刻という信じられない失態を10回以上犯した挙句、突然辞めた奴。彼等がいずれも店長というから驚きだ。これは極端な例だが、単純に激務に耐えられなかったり待遇に不満があったりで1〜2年すら持たずに辞めていく社員も多数居たので、3年、4年と耐え続けてきた私は自動的に相対評価が良くなり、ただ居続けるだけでも何も言われなかった。
それでも人員不足で夜勤メインになった入社5年目、体調を崩し始め限界を悟った。辞めることを決意し、転職活動をした。これが試練だった。居続けただけの雇われ店長の私にどの会社も厳しい言葉を浴びせた。
「お前は10年を無駄にした」
中でも現職の社長が一番怒っていた。コンビニ以前も含め、10年弱の社会人人生を全否定した。たった30分の最終面接でそれを見抜いたのである。内定をいただいたのは奇跡だった。
「現状維持では駄目だ」
現職に入社してから何度も言われた言葉。コンビニ時代とは真逆だった。同じ小売業なのにコンビニの経験が全く活かせない。即戦力という中途採用の本来の意味はあっさり消え去り、期待外れのレッテルを貼られた。そして4年9ヶ月経過した今でも平社員から脱却できずにいる。それどころか、10歳以上年下のアルバイトスタッフからも怒られる始末。肩身がどんどん狭くなっている。
5年半という長い期間を、20代後半という若かりし日々を、猿でも出来るコンビニの仕事に費やしたのは勿体なかった。否、コンビニが悪いのではなく、現状維持の4文字に甘んじて、あまつさえ下にクズが何人もいるからと安心した結果、ろくすっぽ成長しなかった私自身が招いた惨状である。
現状維持ではなく、日々成長しなければならない。それに気付いたこと自体が「ちょっとだけ成長した」と言えるのかもしれない。そもそも思い返せば、成長はそんなにしなくとも、得るものは少なからずあった。数多の尊敬する人たちとの出会い。特に何人もの女性社員やスタッフとの出会い、時には片想い。こっ酷く怒られ続けたことで身に付いた忍耐力、激務の先に得た精神力、ちょっとやそっとでは風邪を引かなくなった強い肉体、エトセトラ。
36年の人生で少しずつ大人になっていると自分に言い聞かせ、37年目からは下を見るのではなく上を見て、ちょっとどころではない成長を遂げたい。
あとがき
何とか目標の3本は達成しました。他の参加者のように奇抜なタイトルを思いつかなかったのは心残りですが。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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