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「赤と青とエスキース」と、ちょっとだけ恋バナと

*今回の記事は青山美智子さんの著書『赤と青とエスキース』(株式会社PHP研究所、2022年)のネタバレを含みます。未読了の方はご注意下さい。

今日はちょっと読書感想文のようなものを。



本日のご挨拶

こんにちは、雪猫なえです。

昨日からこっちのアカウントを再起動させ始めたのですが、意外なことに今日も執筆をしています。
こっちのアカウントでは雑談の量がそこそこあるので、ネタがないときは頭の中をひっくり返す勢いです。もう一つのアカウントでは一言で済ませているのでむしろ厳選作業が大変なんですけどね(笑)

そういえば昨日前髪を切りました。すっごく邪魔だったのとまぶたが痒くなっていたので、現在非常にスッキリしています。鏡に映る自分がしばらく新鮮です。毎回そこそこ切ってしまうタイプです。すぐ伸びて来るので。

ここ二日間寝つきが悪くて悩んでいる雪猫です。「ネルノダ」も服用したのですが効かず……いや、少し効いていた気はするのですが眠るに至らず……。
あと、歯でも噛みしめてしまっているのか起きた時の頭痛が酷くて。歯のところもやや痛いんですよね。うーむ、夜事情が不安定なのは相変わらずです。

今日は送付物が多い一日です。先日、遠方に住んでいる親友の誕生日だったのですが、体調を崩したこともありプレゼント等の郵送が間に合わなかったんですよね。昨日プレゼントを選んでポチったので、今日支払いに行って参りました。プレゼント、第一希望の色は売り切れだったので、第二希望の色を選びました。
もう一つは父に送らなければいけない書類がありまして。これも以前から頼まれていたのですが熱でダウンしたので結局締め切りギリギリになってしまいました。間に合うか正直不安です。父の日なのに何も準備できなかったことが申し訳ないので、今度サプライズでも仕込んでおこうと思います。母の日は祝ったのに父の日はあまりお祝いしない、という例年コースになってしまっております。お花より……お菓子でも贈るか。


それではそろそろ本題に入りましょうか。



『赤と青とエスキース』

青山美智子さん著書の『赤と青とエスキース』を久しぶりに読み返しました雪猫です。感極まったので放出したくなりました。諸々が後ろ倒しになっているので早々に寝たいところですが、自業自得なので仕方ありません。それでも今日やるべきことは大方完了させたのでマシな方です。

『赤と青とエスキース』は、雪猫が青山美智子さんにハマってから何作目かの作品でした。つまるところ、結構後になって出会いました。

まずその表紙に目と心を奪われ、とたんに興味が湧きました。創作が趣味であることも、この作品に惹かれた理由の一つかもしれません。とても綺麗ですよね、表紙の装丁。「とても綺麗」という表現が雪猫としては一番似合うと思っています。それ以上の形容が邪魔な程に、綺麗な表紙だと思います。

出会って気になって、ずっと気になって、ある日ついに買ってしまいました。そのまま少しの間眠らせた記憶がありますが、今では雪猫宅の本棚の看板になっています。表紙が見えるように飾って置いてあるんです。

それくらい、お気に入りの本です。

……ちなみに余談ですが、もう一冊の表向きの本は、好きな人から貰った本です(笑)ちなみにちなみに武田綾乃さん著書の『世界が青くなったら』です。



引用オンパレード

ではここから引用多用で語りに入ります。

いやだな、と思った。
私は彼を、異性として意識しはじめていた。

29頁

主人公が留学先で知り合った「ブー」への恋心を自覚している場面でした。

この「嫌だな」という感情には覚えがあって、いたく共感しました(苦笑)恋に落ちるときは割と瞬間的に行く雪猫です。自分の意思とは無関係に来る暴力的なその感情は、「落ちてしまった」と言った方が正しく思えて、「この人を好きになったら辛そうだな」という場合もあります。あるんです。あったんです(笑)
でもそういう予感のようなものほど的中しがちで、まんまと落ちるんですよね(苦笑)

 私が怖いのは、終わりになることじゃなくて、終わりになるんじゃないかと不安になるあのぞわぞわとした時間だ。相手に対して猜疑心がめばえたり、知らないことが増えたり、わかってくれていると思っていたことがぜんぜんけんとうはずれだったり。そのころにはもう、どちらかが熱くて必死で、どちらかが冷めてしらけている。

 どちらの立場になっても、私はいつも自分から先に手を放してしまう。持っていられないのだ。熱すぎるのも、冷たすぎるのも。

30頁

雪猫は、前半というか「終わりかけの期間」については、共感できるほどの経験がないのでわかりかねますが、猜疑心や見当外れについては少しわかると気がしました。
猜疑心……まぁ疑いたくなる気持ちはわかります。その対象は、お相手さんではないかもしれないんですけどね。二人の未来を疑いがちな雪猫です。

どちらの立場になっても、とは余裕なものだな、と少々主人公に毒づいたのもこのシーンです。「熱すぎる」ほどの好意を、持っていられないなんて贅沢な奴だ、と内心で「ケッ」と思っていました(笑)
その行為を受け取るほどのものがないなら、応えて付き合わなきゃいいのに、なんて思って。「冷める」という行為に対して、「贅沢だ」なんて感想を抱いてしまう小さい雪猫です(苦笑)

 まず驚いて、すぐに納得した。ああ、そういうことが簡単にできてしまう人なんだ。遠距離恋愛は彼にとって野暮ったくて、別れるときに泣くのはダサいことなんだ。
(中略)
私はその程度にしか思われていないのだ。軽んじられている。好きだと言われてちょっとでも嬉しいなんて思ってしまって、どうしようなんて戸惑ってしまって、ばかみたい。その憤りの感情が高ぶる前に―――――なんだか、ほっとした。
 今、終わったと思ったから。始まる前に。

31頁

このシーンで、読者は二手に分かれるんでしょうか。わかってる人と、わからない人と。それともほとんどの読者が気付くんでしょうか。ブーの本心に。後者のような気もしますけど、真相は統計を取らないとわかりませんね。

雪猫は非常にもどかしかったですよ。やっぱりこの主人公は嫌いだ!なんて少し叫びました。だって、だって、こんなにわかりやすいのに。こんなに二人ともわかりやすいのに。
言えばいいのに。そうも思いました。「遠距離恋愛は野暮ったいことなの?別れるときに泣くのはダサいことなの?」って。それとも、ここで踏み込むような子だったら、ブーは惹かれなかったのでしょうか、逃げ出したくなってしまったのでしょうか。ガンガン進んでしまう雪猫のような奴では、駄目だったのでしょうか(笑)
「好きだと言われて嬉しい」って、「でも怖い」って、「嬉しかったのにそんな風に軽い告白だったのが悲しい」って。これを言えない心理も、わかるつもりですが……やっぱり、もどかしかったです。

全部訊いてしまって、それこそ野暮なんでしょうか。
でも、雪猫は思うんです。すれ違うくらいなら、野暮でもいいって。
雪猫のポリシーは、幸せになれるならなる、です。

好きな人が自分のことを好きだと思ってくれることは、奇跡なんです。それが手に入るのに、かっこつけてみすみす逃す人たちのことが、雪猫は大嫌いです。どんなに大切で大好きな人でも、嫌いだ!って言ってやりたくなります。
それは、雪猫が喉から手が出るほど欲しいものだからです。貰える幸せを大切にしないなんて、と思います。
まぁ、違う分野においては雪猫もこれをブーメランで喰らうんでしょうけど(苦笑)

人間、ないものねだりな生き物だとつくづく思います。

「でもね、描いているうちに、自分でも予想できなことが起きるんだ。筆が勝手に動いたり、偶発的な芸術が生まれたり。思ったとおりにすらすら描けたらそりゃあ気持ちいいだろうけど、どちらかというとそっちのほうがおもしろくて、絵を描くことがやめられない。たとえ完璧じゃなくても」

33頁

画家を志す大学生ジャックの言葉は、どれもこれも共感でした。新たに刺さるんじゃなくて、隣で頷いてしまうような、そんな気持ちになるんです。

引用文のちょっと前にある、下書き段階が一番完璧な傑作だ、というような台詞とか(笑)

完璧にいかない芸術性を楽しもう、と初心を思い出させてくれる文章です。

 彼のどこが好きかと訊かれたら、私はまっさきに「親指」と答える。
 ブーは私と手をつないでいるとき、絡めた指から親指だけ少し離して、その腹でそっと私の手を撫でる癖があった。私はそのしぐさがとても好きだった。ただ無条件にかわいがられている猫みたいな気持ちになった。
 ブーの親指の先はスクエアな形をしていて、短く切りそろえられた指はいつも健康的な優しい色だった。
(中略)
 ぴんと張られたその隆起は力強くて、彼のそばにいれば怖いことはなにひとつ起こらないように思えた。

35~36頁

いやぁ優しい場面の切り抜きだなぁとほっこりするところです。雪猫、ここ結構好きです。

好きな人・大切な人と手を繋いだときに手の甲を撫でてしまうのは、そうだここから来ていたんだった、と今日思い出しました(笑)
わかる人にしか伝わらない、雪猫なりの、いつくしむ愛情表現です。

最後の一文がいいなぁと思います。隣にいて無敵だと思える・思わせてくれる人はそれこそ貴重で大切な存在で、守ってくれている有難い存在だなぁと感じます。

「あの、ユリさんは彼とは……」
私がおずおずと切り出すと、ユリさんはカラカラと笑った。
「何も決めてない。なるようにしかならないわよ」

38頁

こういう人も、雪猫は結構嫌いだなと思ってしまいます(苦笑)
こういう人が、雪猫のような人を傷つけるんだろうなぁ、と少々感傷に浸ってしまいます。ちょっと古傷がうずきます(苦笑)
もちろん雪猫のような人が傷つけてしまう人たちも大勢いるとは思っていますが。

「そのときはそのときだ」という言葉は雪猫もよく使います。「なるようにしかならない」とも。
でもそれは「割とどうでもいいこと」に使う表現であって、どうなってもいいと思っていることに対して感じる感情であって、大切な人に向ける言葉ではないんです。少なくとも雪猫の中ではそうなんです。
なので、こういうことを平気で人に向ける人のことを、睨みたくなることも、まぁちょっと許してほしいです。

「まあでも、誰でも玉手箱を持ってるものなんじゃない?ただ、玉手箱を開けたらあっというまに老人になるっていうのは違うと思うの。そうじゃなくて、箱を開いて過去をしみじみ懐かしんでいるときに、自分が年を取ったことを知るのよ、きっと」

39頁

上で散々毒づいておいてユリさんの台詞を結構引用していることについては笑ってくれて結構なのですが。良いものは良いので。

玉手箱理論は完全に共感しているわけではないですが、最後の一文が一理あるなと感じています。「そうかもしれないな」と。

「お友達に伝えて。どこにいても何をしていても、いつの世でも、人のやることは同じよ。食べて眠って起きて、好きになったり嫌いになったりするのよ」

40頁

これも、そうかもしれないな、と思いました。そんなシンプルなことなのかもしれないな、と。

そして、愛をテーマ(の一つ)にいくつもの作品を書いている青山さんらしいな、と思いました。
好きになったり嫌いになったり、するんですよね。そうだと思います。

ぽかぽかと陽気な天気だったのに、私は気分がすぐれなかった。いろんなことが重なっていた。大学の教授に違う学生と間違われて遅刻を注意されたこと、寮に新しく入ってきたドイツ人のドアの開け閉めがうるさいこと、課題のレポートが難しすぎること、それらによって寝不足だったこと。

42頁

彼は時々、ワライカワセミのものまねを突然やりだすことがあって、私はそれがあまり好きではなかった。

43頁

「これ、実はふたりが同一人物だってびっくりしたよね」
あろうことか、それは私がまだたどりついていにないトリックだったった。ブーはもうこの本を読み終わっていたらしい。私は息ができないぐらいに激しく怒鳴った。
「なんで言っちゃうのよ!楽しみに読んでたのに!」
(中略)
「もういいよ、読まない。先がわかってたらぜんぜんおもしろくない」

43~44頁

この後二人が喧嘩をする場面ですね。
雪猫は相変わらず主人公に突っ込んでいました。それくらいでイラつくなとか、それを八つ当たりするなとか、嫌なことをきちんと正確に伝えられなかった自分の責任をブーにぶつけるなとか、しかもそれ今爆発させるのは理不尽極まりないだろう考えろとか(笑)もうボロボロに言ったかもしれません。それは、雪猫の近くに同じようなタイプの人がいるからかもしれません(苦笑)理不尽反対です。

まぁ、雪猫の友達にもネタバレ警察がいるので気を付けようとは思いますが……。嫌いな人は本当に嫌いですよね、ネタバレ。
でも、やっぱり、もちろんブーも無神経だったとは思いますが、さらっと勘違いして言ってしまった側の状況も理解できないもんかなぁ、と思わずにはいられないです。

今日、ワライカワセミの鳴き声をYouTubeで調べました。思っていたより全然可愛くて、全然馬鹿にしたようでもなくって、胸がざわつくようなものではなくて、雪猫のその感想が主人公嫌いを地味に加速させました(笑)

この後出てくる「ブーの瞳が揺れた。」には心臓をぐしゃっと掴まれたような感覚になりました。悲しい感情に強く移入してしまいがちな雪猫です。

この後ちゃんと仲直り(?)した展開に、雪猫がどれほど安堵したことか。本当、こういう些細なことから関係が壊れるとか勿体なさすぎて、しかも癇癪かんしゃくでとか……絶対嫌ですから。

「欲がないなあ、レイは」
 違う。私はきっと、ブーよりもずっと強欲だ。傷つかないで、自分も悪者にならないで、ただ平穏無事でいたいのだ。

49頁

「平穏無事を願うことは、強欲なのか」と思わされた一文です。雪猫自身の欲の深さを今一度見つける契機を貰いました。
もっとも、他人に迷惑を掛けなければ、どれほど強欲だって構わない、と雪猫は思いますけどね。

「(中略)…………俺は本当は、レイにだけは、ワライカワセミじゃなくてカワセミでありたかった。おちゃらけて笑ってるばっかりじゃなくて、もっとスマートにレイに寄り添いたかった。できなかったけど。だからその気持ちだけ、贈らせて」

55頁

「いや『できなかったけど』じゃねーよすればいいじゃん!!」と叫んだシーンです。どこまでも野暮野郎でしょうか(笑)

 今まで私は、形に残るものはブーからもらわないようにしていた。ブーはやたらと写真を撮りたがったけど、私は一枚も欲しくなかった。

55頁

これは……わかると思いました。
雪猫も、結構警戒心が強いところがあって、すぐ壊れるって当面の間は思っているんですよね。それは自分に対する一種の保険で、「ほらね」って言えるように、引き返してこれるように、そう思っているんだと思います。大切であれば大切であるほど、じっくり見極めて、慎重に慎重にって。この人は大丈夫なのかなって。いなくならないのかなって。信用してもいいのかなって。そう観察しながら見ているんです。

だから、安易に残した物で傷つくのは怖すぎるから、「残したくない」という気持ちは、わかる気がしました。

 たとえばここで私が少しでもつらそうなそぶりを見せてしまったら、すべて台無しになる。ブーがきれいに引いてくれたラインを踏み越えるのは、それこそ野暮でダサいことだった。そんな無責任なことはできない気がした。

56頁

出た、と思いました。ドラマや小説でよくある、かっこつけ、と思いました。「台無し」「野暮」「無責任」「資格がない」「どのつら下げて」、そんなんどうだっていい、そう叫びたくなるような場面です。

まぁこの後ちゃんと飛びついてくれたので安心したんですけど。



エピローグ

エピローグではもう爽快でした。青山さんの作品は、答え合わせとも感じられるこの瞬間も大好きです。

好きになったのはブーも同じだったこと(むしろ先かな?)、
レイのことを描いてほしいと言ったのはブーだったこと、
レイが出ていくのを引き止めないブーの心中、
どれもこれもが、雪猫を納得させる材料になって、スッキリさせてくれる要素でした。

青山さんの小説はいつも、終わり方が温かくて、ハッピーエンドの安心感があります。それが、雪猫としては大変有難いんです。



全部において言えること

色々言いましたが、否定しているわけでも、物語の流れを訂正してほしいというわけでもありません。青山先生のシナリオが正解オリジナルですから。全部込みで『赤と青とエスキース』ですから。

現実世界で友達がそうだったらとか、自分だったらとか、そういう投影をしただけで、ただそれだけのことです。

これからも、素敵な作品に出合いたいなと思います。

少々書き足りないのですが、ここらにしておきます。日付が変わってしまいます(笑)



終わります

それでは今日はこの辺で。

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