英語&翻訳解説【Crazy Baldhead】
まず曲を理解する
この曲のテーマは抑圧的な社会体制に対する「抵抗」です。
曲タイトルはラスタ用語です。ドレッドヘアではない連中=非ラスタの人たちを指します。
ラスタを嫌って社会から排除しようとする「体制側」の人間すべてをそう呼んでいます。白人だけでなく、同胞を支配している権力層の黒人も向こう側です。
やつらはアフリカの伝統や価値観を守って欧米式ルールに縛られずに自由に生きているマイノリティ=ラスタを敵視し、ラスタコミュニティを潰そうとしている。
そんな連中は自分たちの「街」から追い出さなければいけないと歌っています。
ラスタであり続けるためには「狂ったハゲ頭」によるあらゆる企てに抵抗していかなければならない。主張がはっきりと打ち出されたメッセージ色が強いナンバーです。
英語表現と訳し方
Them crazy
パトワです。
標準英語に直すとThey are crazyになります。
Chase ~ out of town
「~を街から追い出す」、「~を街から追い払う」という表現です。
動詞chaseには「追跡する」、「追い求める」、「追い回す」という意味もあります。
Chase a criminalと言えば「犯人を追跡する」、chase a dreamと言えば「夢を追い求める」です。
Crazy baldhead
「ラスタではない人たち」を指すラスタ用語です。
白人だけではなく、体制側(権力を持った側)にいるアフリカ系の人たちも含みます。
ラスタ=髪の毛が豊かな民、非ラスタ=ハゲ頭、あるいは髪の毛が乏しい連中という発想から生まれたフレーズです。
ラスタを攻撃する者、ラスタと敵対する者という否定的なニュアンスで使われます。
Cabin
「小屋」のことです。
基本的には質素な丸太小屋を指します。
「船室」、「客室」という意味もあります。
Cabin crew(飛行機の客室乗務員)のcabinです。
Corn
北米やオーストラリアでは「トウモロコシ」という意味ですが、イギリスでは「麦」、特に「小麦(wheat)を指す名詞です。
集合名詞として「穀物」という意味で使われます。
例えば、a corn fieldと言えば、イギリスでは「穀物畑」という意味です。
ジャマイカは旧イギリス領なので、生活用語はBritish Englishがベースとなっています。
Slave for ~
「~のために奴隷のようにあくせく働く」という意味です。
アフリカ系ジャマイカ人の先祖は奴隷としてアフリカから強制的に連れてこられた人たちです。「奴隷のように」ではなく、「奴隷として」働かされていました。
ジャマイカで奴隷が解放されたのは1838年です。それ以降はアフリカ系の人たちは主にサトウキビのプランテーションで「奴隷のように」働かされました。
身分が変わっても過酷な労働が続いたわけです。肉体的にハードな働き方を表現するために「身を粉にして」と訳しました。
ちなみに「〜を奴隷にする」はenslave 〜と言います。
Scorn
「軽蔑」や「さげすみ」を意味する名詞です。
With scornで「軽蔑の目で」という意味になります。
Penitentiary
刑務所のことです。
口語では通常prisonと言います。Penitentiaryはかしこまった言い方です。
よく似た言葉にinfirmaryというのがあります。
こちらは病院(hospital)のフォーマルな呼び方です。
Bumpheads
Bump(突起)とheads(頭)から成る合成語です。
辞書には載っていません。あまり使われない口語です。
デコボコ道のことはbumpy roadsと言います。
Here comes ~
ビートルズの名曲Here Comes the Sunと同じ形です。
「~がやって来るぞ」という注意を喚起する表現です。
キリスト教式結婚式で定番の「花嫁入場曲」はHere Comes the Brideと言います。
Con man
Con(騙す、欺く)+man(人)で「詐欺師」、「ペテン師」という意味です。
鮮やかな手口のハイレベルな詐欺師は、con artistsと呼ばれたりします。
Bribe
「賄賂」のことです。
Take a bribeで「賄賂を受け取る」という意味になります。
Accept a bribeも同じ意味です。
「賄賂を渡す」はgive a bribeとかpay a bribeと言います。
韻を踏んでいる箇所
以下の5か所で韻を踏んでいます。
翻訳する上で苦労した点
曲タイトルのCrazy Baldheadの訳し方が難しかったです。辞書的に訳すべきか、それとも意味を重視して意訳すべきなのか、前者に決めるまでかなり悩みました。
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