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Who the Cap Fitに関するあれこれ


鳴き真似の有無

この曲は1970年に Wailersがリリースした旧作Man to Manのリメイクです。

 歌詞はほぼ同じです。でもオリジナルにはあの印象的な鶏の鳴き真似がありません。

鶏の鳴き真似を加えただけでまったく別の曲に変えてしまうボブのアレンジセンスが光るナンバー、それがWho the Cap Fitです。

最後の晩餐

「英語&翻訳解説」でも触れましたが、歌詞のモチーフとなっているのは新約聖書の有名な場面、最後の晩餐(the Last Supper)です。

(参考画像)

マタイによる福音書(the Gospel According to Mathew)だと26章、マルコによる福音書(the Gospel According to Mark)だと14章、ルカによる福音書(the Gospel According to Luke)だと22章に出てくる新約聖書の中で最も重要なエピソードです。

「信頼していた仲間による裏切り」を扱ったこの曲をボブは世界的スターになって生活環境や経済状況がガラっと変わり、周囲に「取り巻き」や「知り合い」が続々と出現した激動期に敢えて再レコーディングしました。まるで自らに「警告」を発するかのようにです。

そんな背景知識から、最初はボブの周りに続々と集まった連中について簡単にまとめておこうかな~と考えていました。

でもジャマイカの「ことわざ」について書くタイミングはそんなには無いような気がしたんで、Throw me corn, me no call no fowlが登場したタイミングで今回はそちらを紹介していこうと思います。

(イメージ画像)

ジャマイカ式ことわざ

それじゃ一気にどんどんいきますね。

Hog say, ”de first dutty water mi ketch, mi wash”
標準英語に直すと、The hog says, ”the first dirty water I find, I wash”です。

「たとえ完璧でなくても、チャンスは逃してはならない」という意味です。

One, one coco full basket
標準英語に直すと、One by one, the coconuts fill the basketです。

「素晴らしい結果を得るには努力と時間が必要だ」という意味です。

Mi cum yah fi drink milk, mi no cum yah fi count cow
標準英語に直すと、I came here to drink milk, I didn’t come here to count cowsです。

「大切なのは目的であり、細部や過程ではない」という意味です。
 
Wah sweet nanny goat ago run him belly
標準英語に直すと、What tastes good to a goat will later upset his stomachです。 

「今は良くても、のちに害をなすものもある」という意味です。

Puss and dog nuh have the same luck
標準英語に直すと、Cats and dogs don’t have the same luckです。

「ある人にとっては良いことでも、別の人にとっては良くない場合もある」という意味です。

Pit inna de sky, it fall inna yuh y’eye
標準英語に直すと、If you spit in the sky, it falls into your eyeです。

「他人にしたことは自分に返ってくる」という意味です。

Cockroach nuh business inna fowl fight
標準英語に直すと、A cockroach has no business in a chicken fightです。

「他人の争いごとに関わってはいけない」という意味です。

De olda de moon, de brighter it shines
標準英語に直すと、The older the moon, the brighter it shinesです。

「年齢と共に知恵や理解力が増す」という意味です。

Rock stone a river bottom nuh know sun hot
標準英語に直すと、A rock at the bottom of the river doesn’t know the sun is hotです。

「状況と無関係な人は状況に苦しめられている人の苦難を知らない」という意味です。

When spider web unite, dem can tie up lion
標準英語に直すと、When spiderwebs unite, they can tie up a lionです。

「小さな者でも力を合わせれば大きな事を成し遂げることができる」という意味です。

ジャマイカ式のことわざは上記以外にもたくさんあります。

もっと知りたい方は手始めに次のサイトをチェックしてみてください。

ボブはこうしたジャマイカのことわざを英語圏で知られている格言や聖書からの引用箇所と巧みに組み合わせ、言葉の裏に別の意味が隠された非常にオリジナリティの高い歌詞を生み出しました。

謎だらけの歌詞

実はボブが作った歌詞は、イギリスやアメリカで生まれ育った英語のネイティヴ・リスナーにもすんなりと意味が理解できないものが多いんです。

英語でネット検索してみればすぐに分かりますが、ボブが歌詞で表現しようとした内容について大勢の熱心なファンが今でも「ああでもない、こうでもない」と活発に意見を交わしています。

歌詞で使われている言葉をいろんな風に解釈できるし、パトワの部分はネイティヴにしか正確に意味を把握できないからです。

そのことを常に頭に置いて、ジャマイカ人が管理・運営しているサイトでパトワやことわざの意味を確認しながらこれからもボブの奥深い歌詞をていねいに翻訳していこうと考えています。

Every mickle mek a muckle(小さな努力の積み重ねが大きな結果を生み出す)と信じて・・・

それじゃ今回はこのへんで~

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