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【30分エッセイ】 自分の仕事を誇りに思いたいから!


プロ意識、倫理、義務感、勇気、そして、責任。
これらは、測ることができないと思ってる。
目に見えないし、測れないのに、現実として確かに存在してる。
そして私は、そんな目に見えないモノを頼りにした仕事をしている。

「俳優」という仕事を始めて13年が経った。

この仕事を始めてよかったことは沢山ある。
それが、冒頭に述べた、プロ意識、倫理、義務感、勇気、そして責任。これらを得たこと。まあ、測ることはできないから、果たして自分が本当に手にしているのかは分からないんだけどね! 思ってるだけという可能性も大いにある! 

私の仕事の実態は、ものすごく曖昧だ。
仕事の前には必ず大人たちの掛け声が入る。

大きな声で「本番、よーい・・・、ハイっ!」の時もある。
囁き声で「開演1分前です。本番、お願いします!」なんてこともある。

そこから先の演技の話は、プロ意識、倫理、義務感、勇気、そして、責任で仕事が進んでいってしまう。俳優の仕事って、すごく曖昧なんです。先日もワークショップを開いて、同じ話をしてました。俳優のお仕事って曖昧なんです。
とにかく実態がありません。

俳優の仕事はザックリいうと、物語に出てくる登場人物たちの言葉(セリフ)を覚えて演じることです。この「演じる」ってことが難しいんですよねぇ。始めの頃はいいんですけど、何年も俳優を続けていくうちに「演じるってなんだ?」という迷宮に陥ってしまいます。そうして、見えてくるのが、またまた冒頭の話。

プロ意識、倫理、義務感、勇気、そして、責任なんです。
演じている間って、“ランナーズハイ”のような状態になるんです。サウナでいうところの“ととのう”状態にも近いと思います。でも、気持ちよさとか、そういう話ではなくて。ちょっと世界から離脱したような感覚というかね!

そんな無我の境地を支えてくれているのが、プロ意識、倫理、義務感、勇気、そして責任。実態がないからこそ、そうした精神的な支えがないと完走することができません。目に見えない彼らが並走してくれるから、なんとか続けてこれるんです。

もちろん、無我とはいえ、考えながらお芝居と向き合っていますよ。
特に舞台であれば、お客さんとの空気がありますから、「今日は客席の空気が重いから、テンポを上げてみようかな」とか、目の前の俳優に対して「さては昨日、遅くまで呑んでたな?」なんて思うことも。もっと真面目に「言葉を届けるためにはどうすればいいか」と悩んで、まばたきの回数を多くしてみたり、呼吸の位置を変えてみたり、あえて沈黙を作ってみたりと試行錯誤もするんです。

でもね、どれも曖昧でしょ?
そうなんです。俳優って、とっても曖昧な仕事なんです。だから私はずっと考えています。「演技ってなんだろう?」って。本当にずっと!

天職の定義は難しいと思います。

巷で言われているのは、
「自分にできること」と「自分のやりたいこと」が一致していること。
それが天職みたいです。

では、自分に置き換えて考えた時、どうでしょうか。

ちなみに、私にとっての「俳優」は天職ではなさそうでした。ガチョーン。
自分に出来ることが「演技」っていうのも変な話だし、自分のやりたいことが「演技」っていうのもどこかしっくりこない。
なんたって人は日常から演技をしていますからね!

では、なんで私がこの仕事を続けているのかというと、今日は何度も出てくる彼らのおかげ。プロ意識、倫理、義務感、勇気、責任。そして、実は言っていなかった、もう一つの大切な要素がありました。

それが「自分がやらなければならない」という不思議な使命感です。

私は、まさにこの「やらなければならない」という強迫観念じみたモノに背中を押されている節があります。そして、この不思議な使命感のおかげで、性懲りも無く、夢を追いかける仕事を続けているのだと思いました!

天職は英語で「calling」というらしいです。
つまり、誰かから呼ばれること、誰かの声を聞くこと。
その声に気づくことが出来るかどうかが重要になってくる。

色々な考え方はあると思うけど、私はそんな声が聞こえたのかもしれない。と思ってる。たまたまね。本当にたまたま。なんともお恥ずかしい話だし、信用ならない話なんだけど。これが私が、自分の仕事を肯定するために頭をひねって出した結論!

自分の仕事を誇りに思いたいからさ!

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