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【エッセイ】 世界が変わらないことへの安心感。


世界がなにも変わっていないことに安心した。

自分の存在が世界に影響がないことに、ウチは安心したんだ。

ちょっと時間を遡るけど、この年末、自分の人生史上、最も移動した時間を過ごした。飛行機に乗って、新幹線に乗って、特急電車に乗って。とにかく移動、移動、移動の日々だった。各地で、いろいろな出会いがあった。久々に祖母たちにも会うこともできた。家族が増えたり、家族が減ったり。自分の世界が大きく動いた時間だった。

でも、いざ、日常生活に戻ってくると、世界はなにも変わらず、無関心を貫いていた。電車に乗り合わせた他人。すれ違う人々、仕事現場に行っても、みな、通常運転。視線を落とし、ここにはいない。誰も自分を見ていないし、興味なんてもってない。まして、ウチの内側の変化になんて、気付けるわけもない。そのことを実感した時に、ジュワジュワした安心感が胸に宿ったんだよね。

たまにスマホを開いてみると、ウチの知らない世界になっていた。サッカーで人々は熱狂していたし、お笑い芸人さんがバッシングされていた。理由は分からない。周りを見渡してみたけど、やっぱり、世界はなにも変わっていないみたいだった。たぶん、今日も、そんな話題が1日を彩る刺激として消費されてしまうんだろうなあ。

ちっちゃい頃は、世界を変える、なんて大きなことを考えたこともある。でも、外側の世界が変わる前に、自分の中身が大きく変わってしまった。自分が変わると世界が変わる。視点が増えたり、視線の位置が上下したりするせいで、景色が変わる。風景が違って見える。それだけで、世界が変わる。その意味で、ウチは、世界を変えることができた。

日常世界と、自分の見えている世界は違う。一致してるところもあれば、違うところもある。これは他の動物だって同じだと思う。魚もそう、虫もそう。同じ世界に生きているけど、住んでる世界はまるで違う。

どうしようもなく孤独を感じたんだけど。同時に安心感もある。今はそんな心持ち。


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