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誇りと本音。映画『日の名残り』

こんばんは。きなこもちです。

私はどちらかといえば仕事人間な気がします。そうなることは何となく学生時代からわかっていて、仮に誰かと付き合うことになっても仕事を優先しちゃうかもなーと思っていました。結果をぶっちゃけてしまうと、その時の真剣度合いでフラフラしてましたねー😅我ながらひどい。

今回は仕事と本音の間で揺れ動く人間の心を描いた映画『日の名残り』を紹介します。

あらすじ

スティーブンスはダーリントンホールに長年務める執事で、現在のダーリントンホールの所有者であるファラディ氏の勧めで小旅行に出かけていた。目的はかつてダーリントンホールで一緒に働いていたベン夫人に会うこと。ダーリントンホールは前の主人が亡くなられてから多数の辞職者が出て、大変な人手不足に陥っていた。ベン夫人から昔のことを思い起こす手紙が届いており、うまくいけばダーリントンホールでまた働いていてくれそうだった。

ただスティーブンスにはもう一つ目的があった。ベン夫人がまだミス・ケントンと呼ばれていた時代、スティーブンスは敬愛するダーリントン卿の元、精力的に屋敷を切り盛りしていた。ミス・ケントンが新しい女中頭としてやってきて、また違う風が屋敷には流れた。スティーブンスにとって忘れがたい、過去の美しい思い出とミス・ケントンへの想いを清算するため、彼女との再会に向かうのだった。

誇りと本音

今から思うとこの映画は陰キャ同士の大人の恋愛映画だと思います。陽キャカップルの典型例がこの映画には出てくるのですが、彼らの振る舞いそのものがスティーブンスとミス・ケントンをあざ笑うようなのです。

でも彼らのように振る舞うのははしたないようにも思いますし、そもそも若いからできるんでしょ?と思うところもあります。実際スティーブンスは執事という仕事にとても誇りを抱いているので、それ以外の瑣事にかかずらっている場合ではないです。一方で本音はミス・ケントンをただの女中頭とは見られない。一見すると内心がわからない、スティーブンスの心の動きがこの映画の見どころです。

ミス・ケントンは良くも悪くもいろんな人を見ていて、中でもスティーブンスのことはよく観察していました。その中で厳格な中にもおちゃめなところがあるスティーブンスに好意を寄せていきますが、スティーブンスは鈍感というか、安心しきってしまっていて、ミス・ケントンが自分に好意を寄せているなど思いもしない。そのスティーブンスにしびれを切らすところは、個人的に陰キャだからこその破滅だと思っています。

わかるんですよ。何歳になっても、嫌われず側にいられるなら別にそのままでもいいかなと思う気持ちが。でも本人がそのままでもいいと思ってても周りがそれを許さないこともあるわけで。ミス・ケントンはそれをわかってましたが、スティーブンスは本当にわからなかったろうと思います。

スティーブンスは父のことを尊敬していましたが、父が死ぬ前に遺した言葉はスティーブンスにとっては呪いになったように私には思えます。誇りを大事にするように言われて、その言葉を大事にしすぎたな、と。

おわりに

この話はとても美しい舞台とともに語られる静かな恋愛映画です。落ち着いてきれいな映画を見たいときにオススメです。


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