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新人

タイトルを何にしよ?
と全く違う話を書こうと思った時に、
ふと中学生の頃のことを思い出した。 

中学2年だったと思う。
田舎の中学に転校生がやってきた。
田舎も田舎、ボンタン履いたヤンキーがいて、
卒業式には長ラン着てきたりする子がいるほど。

そんな田舎の中学に、理由は覚えてないけど
突如現れた転校生。
彼はカッコイイとか、
面白いとか、
そういう目立つ要素はなく、
風変わりな人だった。

メガネを掛けており、
口周りにはヒゲなのか産毛なのか、
もさもさしていた。

背は真ん中だが、痩せ型で
ヒョロリとしている。
運動は得意でないタイプ。

周りに馴染もうとかそういう気配もなく、
休み時間はひたすら読書。
(いや、休み時間以外も読んでいたかも)
いつの間にか彼には
“新人”
というあだ名がついた。
そう、ただの新入りってだけのあだ名だった。

私も本は好きだったが、学校の休み時間に
読むほどではなく。
漫画もたくさん読んでいたし、
なにせ思春期まっただ中。
ひたすら部活に燃えていて、
学校で本は開かなかった。


夏休みの宿題では、お決まりの
読書感想文があった。

たしか私は
志賀直哉の「城の崎にて」
にした。
一部には〰と◎くらいは付いてたが、
大した感想は書けなかった。
そもそもセレクトが良くない。

新人は
カミュの「変身」
を読んだらしい。

新人の読書感想文は優秀なものとして
選ばれ、彼はみんなの前で発表した。

素晴らしかった。
普段から読んでいるだけあるな、と
軽く衝撃を受けたことを覚えている。

私はその後、
部活にひたすら情熱を注ぎ、
高校に入ってからは
友人との貸し借りから読書熱再燃。

就職活動中や転職活動など
何か転機があると図書館に通うことになる。

会社員になると
通勤中の読書が当たり前になり、
同級生と飲みに行くたび
それまでに読んだ本の貸し借りをしていた。

まだ赤ちゃんの息子が
お祝いでいただいた絵本を破いたことは
私には衝撃で(当たり前なのに)、
破らないと確信が持てるまではあまり絵本は
読まなかった。

子どもが絵本を破らなくなってからは
児童書コーナーにはお世話になりっぱなし。
今も子どもたちとのお出かけスポット1位は
図書館である。

仕事では端くれだが「ライター」と名乗る
なんてことも始めている。
本は憧れであり、日常でもある。
結局、ほとんどずっとそばにある。

新人はその後どんな本を読み、
何を思ったか。
読書好きはその後どうなったのか。

大人になって随分経つが
会ってみたい同級生の一人である。

あれだけ書けた文章力を活かす
仕事に就いているのか。
今になって気になっている。 

もちろん全く違う道に進んでいるかも
わからないけれど。

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