13.ヒューマン・コミュニケーション【DX】的確な質問でコントロールする
一年前「Tokyo 2020 パラリンピック」が開催されました。
私は今まで、殆どと言っていい程、パラリンピックの中継を観たことはありませんでした。というのも、海外の開催での時差、テレビ局の都合と相まって、中継があまりにもなかったので、というのが正しいかも知れません。
視覚や聴覚に障害を持った方の競技を観た際、視覚障碍者は聴覚で、聴覚障碍者は視覚でと、それぞれの手段で、コーチ・他選手とほとんどロスが無いくらいの意思疎通をしているのに感心しました。
特に競技に臨む選手に対してのコーチングの場合、的確なアドバイス/コーチングをしているはずです。選手(競技者)にとって、なくてはならないコミュニケーションです。
今回のテーマは「ヒューマン・コミュニケーション」です。
今まで、何度もお伝えしてきた通り、本テーマでも相手の状態を知るにも、
「質問」→「的確な質問」をツールにします。
「相手の状態(考え)が明確になれば、最適な手が打てる」
また、「相手とのコミュニケーションをコントロールする」というスキルも紹介します。これは相反する相手であっても、競わず(互いに傷つけず)、「気付いてもらい、考え直してもらう」スキルです。
相手/お客様は、ご自身で答えを持っている(答えが解っている)ことに気付いていない場合があります。この場合、この「答え」に気が付いて貰えない限り、スムーズなコミュニケーション/商談にはなりません。お客様と、上司と、部下と、家族とのスムーズなコミュニケーションにお役立てください。
コミュニケーション
「マーケティング」においても、「セールス」においても、「社会生活全般」においても、コミュニケーションが基本で成り立っています。
コミュニケーション(広辞苑)
「社会生活を営む人間の間に行われる知覚、感情、思考の伝達」
言葉、文字、その他視覚、聴覚に訴える各種のものを媒介とする。
それを言葉と言葉以外の文字や視覚・聴覚をも媒介にして訴えるものであることが理解できます。
コミュニケーションは従って、『時間的相違における移動のなかで、情報やデータが「共通のものとなる」という一般現象のこと』と定義することができます。
理想的な日本語翻訳は、、「伝達共有過程」「伝達の共有」・・・?
シャノンとウィーバー
「コミュニケーション」を初めてテーマとして研究し、論文を発表したのはシャノンとウィーバー(1949) によるコミュニケーションの図式です。
その中で人間が行うコミュニケーションは、「ヒューマン(人間)・コミュニケーション」として、これを成り立たせる媒体は社会であるとしました。
特に教育、医療、コンサルテーションが表されました。
その際にコミュニケーションがうまく成り立たない状態をコミュニケーション不全 → ディスコミュニケーションと位置付けました。
シャノンとウィーバーのコミュニケーションの図式を、現在の私たちの置かれた環境で媒体/メディアを補足すると、次のようになります。
正確な情報伝達はなかなか難しく、本来の情報を「理解したつもり」「伝えたつもり」「伝えたはずだ」「こう言っているはずだ」・・・と、ディスコミュニケーションにならない様、心がける必要があります。
そのキーワードとして、「キャッチボール」があります。
キャッチボール
1. 「始めようと」意図
2. 相手の同意が取れている
3. 適度な距離をとる(物理的・心理的)
4. 完了させる
→ 1~4 までが「キャッチボール」の1ユニット
5. 受け入れる。同意することとは違う → 話の内容を受け入れる
6. 受け取りやすいボール(言葉)を投げる
受け取りにくいと、キャッチボールがドッヂボールになってしまう
必ず相手が存在しているので、「キャッチしているか」の確認の繰り返しになります。投げる情報が「間違っていないかの確認と、正確な情報の認識」が必要です。共に、目的地に向かうこと
再度、質問のスキル
「セールス特集(2)」で、お客様のニーズには、「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」があることをお伝えしました。商談の最中にお客様は様々な(買いにつながる)信号を出し、キャリアがあればあっただけ、経験値からお客様のニーズ信号を敏感にキャッチする(気付く)ことができる、と。
しかしながら、ニーズ信号でも「潜在ニーズ」の信号に反応し慌てて売りに走らない。我慢してニーズが「顕在化」してお客様の明確な宣言があるまで、更に商談を進める。
→ 明確な宣言「顕在化」→ クロージングへ
商談をクロージングまでスムーズに進めるためには、如何にしてお客様の困りごとまでを含めた正確な情報を引き出すか。そのためには、状況にあった「的確な質問」が重要な武器になり、商談を有利に進めるツールであることは伝えました。
そこで、あらためて質問のスキルをシンプルに確認します。
正確さの質問
「質問を聞き忘れた」とか「この担当者は気難しいのでこれ以上聞くと不機嫌になるかも・・・」とか、コミュニケーションにより収集した情報が、不正確なままとられる場合がありますが、時には曖昧なままにせず、正確な答えを得るための質問が必要です。
それが『正確さの質問』です。
フレーミング
さて、次はコミュニケーションをコントロールする「気付きを与える」「視点を変えさせる」という視点でお伝えしましょう。
「人/ヒューマン」は必ず自身の「見方」「感じ方」「教え方」・・・それぞれ、独自のものを持っています。
例えば「同じ出来事」「同じコミュニケーションの中身」であっても、人の受け止め方は違ってきます。これは、すべてのコミュニケーションには「壁に掛けられている絵」に【額】が掛かっている状態と同様ということです。(額 → フレーム:人には独自のフレーム【額】が掛かっている)
このフレームを場面毎に自由に使うことで、相手のペースに飲まれずに自分のペースに引き込んで、意図通りに進めることが出来ます。
フレーミングは総じて「リフレーミング」と言われますが、必要とされるスキルを使うことで、スムーズに進めやすくなる場面を想定し、分かりやすく伝えるために場面毎に紹介します。フレーミングには、使う目的がそれぞれ違う3つのフレーミングがあります。
1.プリフレーミング
2.リフレーミング
3.デフレーミング
「プリフレーミング」とは
こちら(投げかける側)の「一番伝えたい」「最も重要なポイント」を
事前に期待を明確にし、相手の理解や集中するところに導くための
「フレーミング」
【サンプル・シチュエーション】
~ 何度も商談を重ね、やっとプレゼンテーションのチャンスを獲得した~
【例】あいさつ: 「本日は、このような機会を頂きありがとうございます。今からご覧頂くプレゼンテーションでは、如何にして【 御社の強みを活かし、更に差別化を創造するか 】に注目して、お聞きください。」
このように、プレゼンテーション開始のあいさつで「一番のアピールポイント」「きも」の部分 に集中してもらう、事前にフレームをかけること。
「リフレーミング(狭義)」とは
状況:お客様/相手が現状の状況に「縛られている」「左右されている」
額(フレーム)が掛かっている状態。
今掛かっている額(フレーム)を外し、違う額(フレーム)をかけ直すことで、現在の状況を違う目で見られるようにすること。
【例】
相手:コロナ禍で受注が激減し、会社をリストラになりました
本人:そうですか、、、良かったじゃないですか。〇〇さん、以前から興味があってやりたい事業だと言っていたこと。チャンスですね。この事業に集中できますね!
この様なケースで他の人に話した場合、ほどんどが「慰めの言葉」「会社批判」とネガティブな言葉ばかりを受け取っていたが、
「良かったじゃないですか」 「チャンスですね!」 「集中できますね」
初めに聞いた際はむしろ「え!!」とビックリする筈だが、「は!!」と気づき、視点を変える「基点」に「きっかけ」を与える事になります。
「デフレーミング」とは
状況:相手が「リフレーミング(狭義)」の状態以上に「頑固な」「ガチガチ」の額(フレーム)に掛かっている状態。
この場合、今掛かっている額(フレーム)を壊し、相手が作ろうとしている額(フレーム)を力強く壊してあげる。
【例1(良く起こるやりとり)】
【サンプルシチュエーション】顧客から依頼されたデザインを、デザイン室のデザイナーに、期限(納期から見て)を切って依頼してある。
本人:以前お願いしてある○○社の△△デザインの期日が今日なんだけど(もう出来上がっていますか)、何時に受け取りに行けば良いですか。
デザイナー:それなんだけど、、、多数のデザイン依頼とデザイン変更が重なり、バタバタしていてまだ完成していないんだ。
本人: そうですか。○○さん、いいですか。デザイン室にとっては、1案件(デザイン)の完成が遅れただけかもしれません。会社的にはこの次の案件等、大きな案件の機会損失になっている事を、考えたことはありますか?
このような事例(やり取り)の場合、相手を直接的に責めてしまう場合が大いにあります。
【例2】
デザイナー: ――――で、まだ完成していない
本人: 困るよ! あれほど期日を守ってくれと言ったのに!
相手を直接的に責めた場合、人間は防御(反発)する為、壁を作ります。
壁を作らせずに、戦わずに、相手に事の重大さを気付かせる場合に使います。コーチングで言えば「エッジを立てる」です。
マーケティングは魔法の言葉ではありません。
マーケティングは、市場とのコミュニケーションです。
次回はこのことを詳しく掘り下げていきます。
お楽しみに!
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