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はじめに:経営を始める冒険者たちへ

元投資銀行マンとして、元コンサルとして、元有名IT企業の経営企画として、そして今は良い投資先・提携先を探したら、自社サービスも持つある企業の日本法人長として良い会社も悪い会社も含め、様々な会社を見てきた。こういうバックグラウンドがあるため、周りの知人からの相談も多い。

「社内移動となり、これから新規事業を作らないといけないのです。どうすれば良いですか」
「うちの会社なんかうまくいかなくて…少し見てくれませんか」
「来月から独立して自分のお店を作ることになりました。アドバイスください」
「この業界は差別化が難しく、価格もほぼ決まっているため、どうすればお客様を増やせるのでしょうか」
など

別に私に聞くことに対して別に不満はないし、むしろ学ぼうとする姿勢は評価できると思っている。しかし、何かアドバイスをしたくてもご飯やお茶を一緒にしながら2~3時間話すことが精いっぱい。こういうアドバイスを求める人って、大体経営関連の知識があまりなかったり、今まで何となくの流れで経営をしてきていたりする。また、人によって経営関連知識量のバラつきが大きいので、場合によっては2~3時間話しても不完全燃焼の気持ち悪さが残るだけの結果となることが多い。になることも多々ある。

これから新規ビジネスの開拓、会社の立ち上げ、独立など、経営者になりたい若い冒険者たちよ、君たちはひとりひとり能力の個人差はあるものの、この険しいビジネスの世界で戦っていける武器は持っているのだろうか。ゲームの中でもそうだ。ひとりひとり与えられたHPやMP、特殊スキルは違うけれども冒険を始めるために必要な最低限の武器がないと荒野に出て経験値を積むためのスタートラインにすら立てない。本書ではその冒険を始めるための最低限の武器つけてあげたい。この短剣があれば自分の特殊スキルに合わせた武器が見つかるまで十分な経験値を積むことはできるだろう。

この短剣に期待できることは以下のようなことである。

1. 良いビジネスモデルを作れる
ビジネスの世界において独自性があり、収益性も成長性もあるビジネスモデルを作るのは何より大事なことだ。良いビジネスモデルがあれば冒険の仲間も募集しやすいし、構成員を養うための資金調達もしやすい。いや、資金調達なんかしなくても勝手に収益がたまっていくので外部の資金への依存度も低い。放っておいても経験値は勝手に増えていき、いつの間にかレベルアップしているし、優秀なパーティメンバーも多いのでとにかく全てがやりやすい。
しかし、良いビジネスモデルを作るのは至難の業だ。作り出したモデルはどこかが欠けていたり、うまくいきそうなモデルを考え出したと思ったらすでに誰かがそれをやっていたりする。それでも諦めず偉大な冒険者になるため、ビジネスモデルを磨き続けてほしい。きっといつかは自分のモデルが作れるはずだ。

2. ビジネスを軌道に乗せる
せっかく作ったビジネスモデルを活かせるのは管理の力である。素晴らしいビジネスモデルを持っているのに管理が出来なくて消えた会社は少なくない。これまで世の中に存在しなかった素晴らしいサービスが一夜で倒産してしまったケースは冒険者のみなさんにも聞き覚えはあるだろう。特に最近のIT企業だと売上が発生しないのにマーケットシェアを確保するための赤字競争が多いので、こういうケースは多い。IT企業だけの話ではない。近所のお店でどう考えても打算性の合わなさそうな太っ腹な店長がやっていたお店が開業早々つぶれてしまうケースも一度くらいは見たことあるだろう。
本書では経営を管理する際において最も大事と言われる「収益性」、「成長性」、「安定性」にフォーカスを置きながらチェックすべきポイントを整理しておきたい。

3. 売り方を工夫し、成長をブーストアップさせる
良いビジネスモデルがあり、そのビジネスが軌道に乗り、簡単につぶれなくなったとしてもそのままでは生き残ることがやっとだ。ビジネスというのは顧客にいっぱいお金を払っていただき、どんどん収益を増やして行くもの。
それを実現するために必要なのが「マーケティング」という知識である。マーケティングというとチラシを配ったり、電話営業を回したりする常に断れる地味で嫌な活動を思い浮かぶ冒険者も多いだろう。こういった活動はあくまでも最終的にやること。まずは考えよう。

・顧客にお金を出していただくため提供するもの(=バリューのあるもの)は何なのか
・誰にそれを売りたいのか
・どうすれば最も効率的に潜在顧客にアプローチできるのか
・顧客に競合他社のサービスではなく、わがサービスを使っていただけるためにはどうすれば良いのか

こういうことを常に考え、自分の中で答えが出ているのであれば日々やっている多少地味な活動は苦ではないはずだ。ゲームでも同じだ。レベルアップを目標とする経験値稼ぎはいつも地味で時間がかかるものだ。

4. 未来を考える
ここまでが出来たらあなたのビジネスはしばらく安定的に成長できるはずだ。しかし、常にマーケットは変わっていくし、そこでうまく適応できてビジネスが成長し続けるとしてもその向こうにある景色が見たくなる。
そこで冒険者は思う。旅立ちたいと。その行き先に正解はない。
本書の最後にはその冒険者たちを次なるステージに模索する際参考できるアプローチ方法を伝えたい。

本書の目的はタイトル通り、これから冒険を始める若い経営者たちに必要な最低限の経営知識を伝えることだ。もしあなたがすでにロングソードなど、短剣より良い武器を持っているのであれば本書で伝えようとする知識はもう知っているだろう。本書が初心者の経営者にはこれからの冒険に必要な武器に、基本装備を持っている冒険者には知っていることを頭の中で整理できるきっかけになってほしい。

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