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三円小説のスゝメ 終〜アナログと「人間賛美」に繋がる"三円小説出版プロジェクト"〜(後編)

レコードに見られるアナログ志向

私ごとで恐縮ですが、私はアナログレコードが大好きです。ここ10年ほどずっとレコードを聴いていますが、昨今、レコードやテープといったアナログが復活してきています。

図1

出典:一般社団法人日本レコード協会HP

また、最近では若い子が、わざわざフィルムカメラを購入し、フィルムカメラで撮った写真をインスタにアップしたりしていますよね。

私見ですが、だんだん世の中は「物」に戻っていくのではと思います。特に、日本人は「物」好きです。レコードの値段を釣り上げたのは日本人と言われているくらいです。

アナログレコードの需要が、右肩上がりに増えていることを誘導した要因の一つには、音楽家や音楽制作者サイドがアナログを見直し、再びアナログレコードをリリースし始めたのも大きいと思います。

肌感覚で恐縮ですが、水面下では20数年前から、そしてそういった動向が活発化してきたのは7〜8年ほど前からだったように感じています。同時に、中古市場でも、レアだったレコードが、あちこちの店舗で見られるようになったと記憶しています。

(アナログレコードの新譜リリースは、90年代初頭位から復活してきたのではないでしょうか。私が覚えているのは小山田圭吾(コーネリアス)のアルバム。あの頃は本当に珍しくて、つい買ってしまったのを覚えています。特にファンじゃなかったんですが笑)


発信側の真摯な姿勢が、文化の受け手・土壌を育てる

発信側が本来の音楽、文学などを忠実に、丁寧に伝えようとした時、結局はアナログになっていくのではないかと思うのです。そして、その真摯な姿勢は、アナログなものを通じて(デジタルな光の刺激ではなく)受信側の身体にしっかりと刻まれていく。

例えば、言いたいことをしっかり伝えようとして、発信側が紙の書籍を選んだならば、それは読者を育てることになると思います。

発信者には、だからこそ発する責任があると思うのです。

発信者がそのような意識を持ち、こつこつと未来の文学好きを育てていけば、市場が豊かになるという可能性も大いに考えられます。
『三円小説』出版プロジェクトは、活字好き、文学好きを育み、新しい出版文化を創出するきっかけになるのではないかと期待しています。


人間賛美に繋がる『三円小説』出版プロジェクト

『三円小説』は、InstagramやTwitterを中心に、ネットプロモーションや、読者とのコミュニケーションに力を入れています。しかし、それは単なるネット小説の書籍化ではありません。それゆえ、デジタル本は発売せず、あくまでも紙にこだわる、という話を前編でさせていただきました。

それはなぜなのでしょうか。

「人間の『物』に対する絶対的な信頼性に未来を見ているんです。
実際に手に取って、あくまでも紙の本として親しんでほしい」

これが、当プロジェクトに関わる人たち(作者や出版社)の願いだそうです。


変わるものと変わらないもの

変わるものは変わるが、どんな時代も変わらないものは必ずあります。それは、人間の身体構造が原始時代からほとんど変わらないのと同じです。
どんなにデジタル化が進んでも、人間自体がデジタルになることはありません。

「今回のプロジェクトを通じて人間そのものへの信頼感、人間賛美、自己肯定につなげたい。新しい出版流通の型となるべく、社運をかけています。
新しい文学の形態である三円小説は、その第一弾として非常に相応しいと考えています」と金風舎さん。

書籍には、紙/電子どちらも発刊することで相乗効果があるそうです。デジタルだけでなく、紙の書籍が書店に並ぶ訴求力や価値は、ネット社会になった今なおダントツに高いとか。
確かに、初めてお会いした方が、「最近出版した本です」と言って紙の本を渡してくれたら、「お!」と思いますよね。
名刺の裏に「kindleで発売中!」と、販売サイトのURLと一緒に記載されているのを見るより、訴えかける力は圧倒的に大きい。

「もう一度、作者の原田さんとともに、『物』としての本の力、そして人間の紙の本への信頼感のルーツや原理を確認し、活用し、書店さんの本当の価値を引き出したい。また、それを世間に再確認したい」と金風舎さん。

人間賛美がテーマである『三円小説』。その出版プロジェクトに関わる人たちは、文学や、活字、そして本への愛情に溢れています。だからこそ、紙の書籍を見直し、書店さんとともに新しい出版文化を創出することを目指しています。


ライター:榎田智子
石川県出身、鎌倉在住。自宅出産を経て3人の子育ての傍ら、夫と情報デザインの会社を経営。各種マネジメント・ディレクション、取材撮影…と出来ることは何でもやってきました。不登校だった長女は、現在豪州留学中。何事においてもLet it happenを大切にしています。保護犬、猫、亀と同居、5人と7匹家族。

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