見出し画像

キックオフ対談『情報整理大全』を考える(4)〜自分に合った情報整理を考えるきっかけに〜

今年9月に「情報整理大全」シリーズ創刊にむけてのキックオフ対談が行われました。本noteは、対談を振り返りながら「情報整理大全」とはなんぞやをお伝えするシリーズです。今回は最終回(4回目)です。

スピーカーは第3弾執筆者であり、本シリーズ監修者でもある佐々木正悟氏と、「シゴタノ!」管理人でタスク管理ツール「TaskChute(タスクシュート)®」の開発者、サイバーローグ研究所代表取締役大橋悦夫氏。
ホストは弊社社長の香月登です。
*対談中のスピーカーの敬称は略しています。

*キックオフ対談「情報整理大全」を考える(1) はこちらから
(2)はこちらから
(3)はこちらから


情報整理ツールを使う上で最も大事なこと

香月:情報整理のセンスというのは「実践の中で獲得するもの」ということですね。教養としてのアナログ情報整理を学ぶ以外に、デジタルツールを使う初心者の方にお勧めする本などのコンテンツや、注意してほしい点等はありますか。

 

大橋: 一番は、デジタルツールの本を読むような人は、本を書くとかプレゼンをするといった情報発信をする予定がなくても、自分が取り入れたものに対して、何らかのリターンがあることを期待して読み始めるわけです。

こういう人たちに注意してほしいことは、「いやこんなこと誰もやってないな」と「自分だけこれをやるのはアホかと思われるんじゃないかな」という不安に負けないことなんですよね。

情報整理しようとする時、誰もが、「君、明日もこの記録取り続けるの?」という風に、自分の中のもう1人がささやいてくるような経験しているわけじゃないですか。

そうすると、頭の中の何人かのいじめっ子がいて、「こいつ、こんなのを記録に残してるんだ」みたいに馬鹿にするんですよ。

で、馬鹿にされても、めげずに机に向かって記録を続ける。いじめに屈して仲間に入ってしまうと、せっかく自分独自の研究発表ができるチャンスを逸してしまうので 。

でも当然、実際に無駄なことをしている可能性もあるわけです。確かに今年いっぱいに関しては無駄かもしれないけど、10年後になった時に貴重な資料になる可能性もあるわけですよね。

だからと言って、貴重になるかもしれない可能性があるということで、全てを記録しようとしても、多分時間が足りない。だから、賭けなんですよね。その時にどれを選ぶかというのは、例えば、投資の世界だったらリターンがあるかないかのチョイスになります。

このアウトプットに関しては、自分がそれに惹かれるか惹かれないかだと思っています。そこは、損得勘定じゃなくて、好きか嫌いかとか、気になって仕方がないとか、そういう世界だと思っています。

そういうものがあるならば、ほかの人からの「やめたほうがいいんじゃないの」とか「意味ないよ」というようなノイズに勝てるわけですね。自分が惹かれるものをチョイスすることが非常に重要な選択だと思います。


 香月:そこですね。自分の興味には歯止めをかけない。ブレーキを踏まない


 大橋:そうなんです。人って損をしたくないので。yahoo知恵袋とか見てると、「こういうやり方は間違ってますでしょうか」みたいな事を聞いている人がいっぱいいる。みんな不安なんですよ。

最近、健康診断があったんですが、健康診断には検便があるじゃないですか。で、調べたら、「検便 一日二回 バレる」っていう検索候補があったんですよ。

検便って二回採るわけなんですが、二回採らなきゃいけないのに、あんまり出ない人は、一回しか出なくて困ってしまうことがあるんですね。

そしたら、一日の排便から二回採るしかないんですけど、それはみんな不安なわけですよね。ばれたら怒られるんじゃないかって。そういうことだと思うんですよね。そこにも現れているので。

二日前と一日前に採るのがいいのか、という正解をネット検索で見つけようとしているわけですよね。それは、すでにその自分のデータベースの外に探しに行ってるわけじゃないですか。

ではなくて、過去に自分がどうしたかがデータベースに残っていれば、「自分は健康診断の三日前、二日前、一日前に検便の日を設けていて、出なければその三日分のバッファーがあるから三日のうち二日出ればいい」という風にプランすればいいってことがわかって、乗り切れるわけですよね。

ですから、他にそういうことをやっている人がいないかと、一応確認はすると思うんですけど、自分の経験が大切だということです。このあたり、梅棹先生が「本はすでに書かれて無いかどうかを知るために読む」って書かれているところに通じるわけですよね。

「発見だ」と思って勢いよく発表してみたら、すでにそれはみんなの既知のことだったら残念なので、自分のこの発見が本当に新発見なのかどうかを確かめるために本を読む、そういう本の読み方もあるよね、ということを書いている。

僕も同じように思っていて、結局、本を読んで正解を探すのではなくて、自分が見つけた正解である可能性があるものを、本当に世に出しても恥をかかないために、本を読むとかインプットするということなのかなと。
 

香月:情報整理のセンスを得るのに、そもそも整理するべき情報をインプットするっていうところに何らかの制約とか変更があったら意味がない。というより、検索すべき情報をインプットしていなければ、そもそも整理できないという話。なんか深いですね。

私はデジタル情報整理の教養を学ぶために、本を読んで体系的に知識を積み上げようと思っていたのですが、そうではなくて、人間の心理的な障壁をとるほうが先というわけですね。

大橋:そうですね。「これとこれにヒットするキーワードをEvernoteに残しなさい」と言われてやるとすれば、それは仕事じゃないですか。
「知的」の後にくる言葉として、「興奮」というのがある。知的興奮ドリブンでデータを集めていけばたぶん間違わないと思うんですよね。

香月:その時に一瞬迷いがあったりすることもあるということですね。 

大橋:ファーブルはフンコロガシをずっと飽きずに眺めていたから、ファーブルなわけじゃないですか。でも「なんでこいつ、こんな虫を一日中見ているんだ」ってバカにされていたかもしれませんよね。

だけど、それに打ち勝つぐらいの知的興奮があったんです、きっと。あらゆる学者がそうだと思うんですよね。やっぱ変人だったはずなんですよ。

でも、これからはみんなそういう変人性をどんどん出していくことが大事。 YouTubeとかtiktokとかも全部そうだと思うんですよね。変人性を全開にするからこそヒットしている。

香月:元々の情報を、どうフローからストックにしていくかという流れも、ツールをどう運用していくかというところも、その人の自身の知的興奮のところが大切であると。ざっくりいうと、情報整理には正解がない、ということですね。

であるなら、「情報整理大全」は、情報整理の研究発表の場ということかと。執筆者のみなさんがそれぞれ見出した、それなりのノウハウが蓄積されている情報整理術を発表して、情報整理に興味がある人には、その中からその人にあったものを見出してもらう。

要するに、それぞれの情報整理術を読んで、読者の皆さんは、知識として生かしたり、逆に「あ、これちょっと自分とは違うな」と思ってもらったりして、さらに自分の道を発見してもらうっていうようなことですよね。

*****

「自分はこれがいいなという人もいれば、こういうことができるんだったら、自分の場合はこうだなという風に、メタに応用できる人もいると思います。おそらくその辺がノウハウ書と『情報整理大全』との違いになるんじゃないでしょうか。」と大橋さん。

そのツールが自分にとってどういう活かし方ができるか、ということを読者の皆さんがご自身の日常を振り返って照らし合わせたり、応用したりしていただく。

そういう一つのキッカケになれば出版元としてもこの上ない喜びです。
「情報整理大全」シーズン2を執筆するのは、もしかすると読者のあなたかもしれません。


「情報整理大全」マガジンもぜひ↓

大橋さん、佐々木さんTwitterはこちら:


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?