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キックオフ対談『情報整理大全』を考える(1)〜きっかけは”ポストEvernote”〜

 11月2日から発売された「情報整理大全」シリーズ。

情報整理環境の大きな変動の中で、いま改めて「自分の情報整理体制」を検討する人たちの「再構築のプロセス」を現在進行形でまとめた電子書籍シリーズです。2021年11月より月1回1~2冊ずつ、2022年2月まで7回にわたって発刊する予定です。

第1弾のTak.氏著「思考のOSとしてのアウトライナーを通じて『個人的』情報ツールについて考える」、第2弾のyoshinon@情報管理LOG氏著「書き出す・見直す『アウトプット思考』を通じてGTDを実践するiPad手帳術」、そして今月18日からは第3弾、佐々木正悟氏著「最小の整理で100%役立つノートシステムを手に入れる!」と続々と刊行、好評発売中です。

今年9月、シリーズ創刊に先駆け、同シリーズの位置づけとポストEvernoteについての対談が行われました。

スピーカーは第3弾執筆者であり、本シリーズ監修者でもある佐々木正悟氏と、「シゴタノ!」管理人でタスク管理ツール「TaskChute(タスクシュート)®」の開発者、サイバーローグ研究所代表取締役大橋悦夫氏。
ホストは弊社社長の香月登です。

本noteでは、対談を振り返りながら、ポストevernoteという視点から、今回のシリーズ全体を発刊するに至った経緯や、第3弾のデジタルノート活用術のご紹介につながるエピソード等を数回に分けてお届けしたいと思います。

*対談中のスピーカーの敬称は略しています。

ポストEvernote

香月:まず、ポストEvernoteについてお伺いします。
私も2008年からEvernoteを使い続けているのですが、最近、かつてのEvernote一択という状況は崩れて、使い勝手の悪いツールと化してしまいました。

さらに、さまざまな情報整理ツールが世に出て、混とんとした状況になっています。そこで、20年以上情報整理を専門とされておられる大橋さんに、悩めるビジネスパーソンに向けて、ポストEvernoteの展望をお伺いしたいと思います。 


大橋:まず、どんなツールもそうなんですけれど、そのツールを使わなければできないことってあるわけですよね。

Evernoteの場合は、画像の中に含まれる文字もOCRで検索対象になります。これまでは、検索することを想定して、検索しそうなキーワードを別途手入力して検索に備える必要があったわけですが、それをしなくて済むようになったわけです。

するとデータが増えれば増えるほどブラックボックスになって、何の気なしに検索したときに「ああ、こんなことがあったんだ。」といったセレンディピティの頻度が上がります。そういうことを最初に実現できたツールがEvernoteだったわけですね。

けれども、だんだん重くなってきたり、インターフェースの部分で求めていたものと違うものが実装されたりと、わずらわしさを感じて離れていく人も多いわけです。

一方で、僕はEvernoteに10万件ためているのですが、機能ではなく本質的なところで、そこさえ探せば必ず見つかるという唯一性はこれしかないので、情報を溜めていくという点に関しては、このツール一本にしたほうがいいと思っています。

昨今、便利でクールな後発のツールが色々と出てきましたが、彼ら(開発者)は、Evernoteにはできないことをやってやろうじゃないかという野心を持って作っているわけです。

そうなると、その点で比べてしまえば、Evernoteが見劣りしてしまうのは当然なわけです。しかし後発のツールが「今風じゃないよね」と言って切り落としている部分が、Evernoteには当然残っています。こういった点で、完全にEvernoteから乗り換えることは難しいのではないかと僕は思っています。

ただし、Notionから入った世代にとっては、Evernoteって何?といった断絶もある。こういった人たちにとっては、Notionだけで何の躊躇もないでしょう。

Evernoteには、Notionにはないどんなメリットがあるのか、ということを把握すれば、こんなことをしたい時はEvernoteのほうがいいんだな、と分かるとより豊かな情報整理ができると思います。

大事なことは、アプリだけを見るのではなく、自分がどんなことを知ろうとしているのかとか、どんな悩み事や困りごとがあるのか等を言語化する習慣だと思うんですよ。

ただ、漠然と「できるEvernote」「できるNotion」みたいなノウハウ書を読んでいると、自分がやりたいことが見えなくなっちゃうんですよね。そのツールの自分なりの使い方が思いつけなくなって閉じ込められてしまいます。

そういう意味では、梅棹忠夫先生の『知的生産の技術』を読んでいただくのが良いです。デジタル技術がない時代なので、今だったらものすごく楽にできることや、今ならする必要のないことが書かれているのですが、こういったものと比べることで、ノウハウ書を読んでいるだけでは気づけないようなことも見えてきたりします。


非デジタル時代の情報整理術の本には、むしろ情報整理術の教養課程のようなものが書かれている。それを読んで情報整理ツールに向き合うと、今まで見えなかったものが見えてくるわけです。

香月:なるほど。本来、情報整理についての問題意識があって、そこから情報整理ツールにたどり着くはずなんですね。ところが、Evernoteが「どーん」と出てきたことによって、私もそうなのですが、そういうことを知らずに使い始めた人もたくさんいるわけです。

だけど、使っているうちに、ツールに使われるような状態に陥ってしまう。本来は情報整理をすることで自分は何がしたいのかという本質的な部分の問いが大切なのですね。

情報整理において重要な視点 

香月:こういう話題になると、「紙の方が有用性がある」という意見が出るわけじゃないですか。ただ、現実的に考えたとき、10万件のデータを紙にしてどうするんだと。検索できないわけですし。紙に戻すというのは現実的ではない。


大橋:いまからアナログに戻るのは大変なので、デジタル前提でその先をどうするかですね。

香月:そのためには二点のポイントがあるわけですよね。データを溜め、それを引き継ぐという点。自分がどういう情報整理をしようとしているのかが大切であるという点。

このような状況だからこそ、デジタルで情報整理はしつつも、情報整理の原点であるアナログな情報整理術の視点に立ち返って、広い視点を持つことが大切である、ということですね。

                              <(2)に続く>


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