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面白い新刊がいつでもどこでも読める、図書室みたいな空間があったらいいよね、という話。

高校生のとき、図書室が数少ない居場所の一つだった。
一人ぼっちの昼休み、部活のない日の放課後、しばしば図書室に行って、なんの目的もなく本棚を眺めていた。

図書室の、静謐でゆったりとした時間の流れ。少し古くなった紙の匂いが好きだった。本棚に所狭しと並んだ色とりどりの本たちは、新たな世界、新たな自分へ至る無限の入り口のように思えた。

ただ、図書室に置いている本はほとんどが古典や既刊本だった。
それはそれで不変の価値を持った宝の山なのだけど、やはり新しい本、今話題の本を読みたいという気持ちは少なからずあった。

司書さんのセレクトや、生徒からのリクエストでたまに新刊がまとまって入荷してくることはある。だけどそういう本の宿命として生徒から大人気で、ちゃっかりしたやつらが何日も前から予約して抑えておくものだから、読むまでに何週間もかかったり結局読むのを諦めたりもした。

図書室に、ワクワクするような新しい本がたくさん集まって、誰でもそれを読めるようになればいいのに。

そんな思いを、ずっと抱いていたような気がする。

読書というのは、新しい思考をインプットし、自分の中で深めていくための良質な学習ツールの一つだと思う。
とくに情報が溢れかえって誰もが疲弊気味のこの時代、じっくり腰を据えて本に向き合う時間はとても貴重で価値のあるものだ。

でも、今の若者達にとって(自分の高校生時代も含めて)読書に集中して取り組めるじゅうぶんな環境があるとはいえない。

そもそも本を読める場所がない。
読みたい人の数に対して本の数が少なすぎる。
本を集中して読む時間がない。

いろんな現実的な理由が、若者から読書の機会を奪っていく。

曲がりなりにも本づくりに関わる一人として、その現状は悲しい。

こういうときこそ、日進月歩の最新テクノロジーさんの出番なのではないか?

読める場所がないなら、オンラインでどこでも読めるようにすればいい。
学校の図書室みたいなリアルな空間やそこに並ぶ紙の本だけが持つ存在感みたいなものはとても大切だけれど、「どんな形でもいいから本に触れる機会をつくる」ことが今一番大切だと考える。

電子書籍はどうだろう?
電子書籍なら、冊数にとらわれず誰でも好きなだけ読むことができる。
スマホやタブレットで読めるようにすれば、隙間時間や移動時間にも読める。本を必要とするあらゆる若者に、読書という学習機会を届けられる。

幸い、世の中には面白い人がたくさんいる。
人の心を打つような情熱や経験を持っている人たちがいる。
そういう人たちから抽出した学びを、本にして、誰でもどこでも読めるようにする。

そういう仕組みづくりこそ、次世代にむけて現役世代の私達が残せる価値なのではないか?

常識や形式にとらわれすぎず、柔軟に必要なものを作っていく。

そういう試みを、始めている。

それは、あのころの図書室で得た体験とは別の形だけれど。
「面白い新刊がいつでもどこでも読める、図書室みたいなデジタル空間」を作っていきたい。



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