うしと目があった日
うしがいた。
かおが、私の5倍くらい大きかった。
大きな目玉が、私をみつめていた。
うしは、なんでも知ってるみたいだった。
生きることは、ごはんを食べて、子うしを産んで、お乳を出すことだと。
そんなの当たり前でしょ、って言ってるみたい。
すごくシンプルだ。
そしてまっすぐで、力強い。
ただ、生きている。
それに比べて、人間はふくざつだ。
ごちゃごちゃしている。
生きる理由を求めて、死ぬ理由を見つける。
"快"に条件をつけて、"不快"に言い訳をつける。
ただ"生きる"ができない生き物。
そんなことを考えていたら、うしと目があった。
そのとき。
私の頭の中のごちゃごちゃがふっと消えた。
うしも私も同じ動物だ。同じ、生き物だ。
うしと、私の境界線があいまいになった。
うしは、鼻を私の足にすり寄せた。
愛おしい。そんな感じが身体中にひろがる。
これが、"生きる"か。
うしと目があった日、私は"生きる"をみた。
言葉を綴ることで生きていきたいと思っています。 サポートしていただいた分は、お出かけしたり本を読んで感性を広げるのに使います。 私の言葉が誰かに届きますように。