映画#146『007 スカイフォール』
ショーン・コネリーを主演にスタートを切った映画『007』シリーズも、遂に50周年という節目を迎えた。今作『007 スカイフォール』は、ダニエル・クレイグ扮するジェームズ・ボンドを主役としたシリーズの第3作目であり、ジェームズ・ボンド50周年を記念して制作されたタイトルだ。
公開当時、シリーズ歴代最高のヒットを記録。イギリスの歴代興行収入ランキングでは『スターウォーズ/フォースの覚醒』に次ぐ第2位の座を、公開から10年経った現在も守り抜いている。
この物語は言わば「リターンズ・オブ・ボンド」だ。トルコのイスタンブールにてターゲットを追跡するも失敗し、行方不明になった後ボンドは酒浸りに(この辺の設定は原作と同じ)。
銃の腕前も落ちてしまい、若干髭の生えたボンドの風貌はまさに「落ちぶれた英雄」を想起させられる。まぁ物語の進行に応じて、徐々にいつものボンドへと戻っていく訳だが………。
そんなボンドに相対するはラウル・シルヴァ、まさかの「元」MI6の諜報部員。自らを見捨てたMに異常なまでの執着心を抱いており、シリーズを通してもかなりイカれた雰囲気を纏った悪役だ(流石は『ノーカントリー』にて狂気の殺人鬼を演じ、助演男優賞を受賞したハビエル・バルデム)。
また「現・諜報部員vs元・諜報部員」という対立構造もまた新しい。駅にて人混みに紛れながら変装などして逃亡を図るシルヴァと、それを追跡するボンドのシーンは非常に良くできたシーンだと今更ながら思う。
また「ボンドカー」の代表的な車種であるアストンマーチン・D85が『ジェームズ・ボンドのテーマ』と共に現れるサプライズ、など今作はとにかく「『007』50周年記念作品」ということを意識した演出が多数登場する。先述したシルヴァという元MI6諜報部員という悪役も、シリーズの節目として非常に適役だったと言えるだろう。
またMI6のボス・Mの存在感が1番大きかったのも今作『スカイフォール』だ。彼女はダニエル・クレイグのシリーズにおいて一貫してあまり良い印象を抱かれないようなキャラクターだったが、今作でイメージがひっくり返ったという人も一定数いることだろう………かくいう私もその1人だ。
特に裁判所にてMが「MI6の存在意義」を述べるシーンは必見だ。「かつての勇姿は見る影もなく、最早世界は我々を必要としていないのかもしれない。だがそれでも、国でもなく地図にも載っていない隠れた敵の為に、我々は戦い続ける」………今作だけでなく、50年もの長い歴史を持つ『007』に通ずる名言に痺れること間違いなしだ。
個人的には『007/カジノ・ロワイヤル』と同じぐらい面白かった………あるいはそれ以上かも。『007』シリーズをよく知らない私でも楽しめたのだから、『007/ドクター・ノォ』からシリーズを追っている指折りのファンからすれば堪らない映画だろう。
そんな『007』も、去年で60周年を迎えているのだから本当に長寿な映画シリーズだなぁとつくづく思う。できれば私の映画愛が冷めぬうちに、シリーズ100周年記念の作品を拝めれば良いのだが。
それではまた、次の映画にて。
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