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映画#141『007/カジノ・ロワイヤル』

『007/カジノ・ロワイヤル』(”Casino Royale”)

監督:マーティン・キャンベル
原作:イアン・フレミング『カジノ・ロワイヤル』
出演:ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、ジャンカルロ・ジャンニーニ、カテリーナ・ムリーノ、シモン・アブカリアン、イザック・ド・バンコレ、イェスパー・クリステンセン、イワナ・ミルセヴィッチ、トビアス・メンジーズ、クラウディオ・サンタマリア、セバスチャン・フォーカン、ジェフリー・ライト、ジュディ・デンチ、他
主題歌:クリス・コーネル『You Know My Name』
製作会社:イーオン・プロダクションズ、ダンジャック、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー、ユナイテッド・アーティスツ、コロンビア ピクチャーズ、スティルキング・フィルムズ、バーベルスバーグ・フィルムズ
配給:ソニー
公開:2006年11月16日(英国)11月17日(米国)12月1日(日本)
上映時間:144分
製作国:イギリス、アメリカ合衆国、チェコ、ドイツ

Wikipediaより引用

【あらすじ】
まだ、殺しのライセンスを取得する以前のジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)。プロとしての暗殺のミッションを重ねることでライセンスを取得し、晴れて“007”のコードネームを手にするのだった。ボンドの007としての最初のミッションはテロリストのスパイ。マダガスカル、バハマへと渡って探り当てた人脈をもとに世界中のテロ組織の資金源と噂されるル・シッフルズ(マッツ・ミケルセン)へと辿りつく。さらにル・シッフルズがモンテネグロのカジノ・ロワイヤルの高額ポーカーで資金を調達しようとしていることが判明し、ボンドは任務としてその対戦相手に選ばれる。ボンドが勝てばル・シッフルズの組織を壊滅させることになるのだが…。

シネマカフェより抜粋

画像出典:シネマカフェ

俗に言う「スパイ映画」を確立させた金字塔的作品である『007』シリーズ。1962年に記念すべき映画シリーズ第1作『007/ドクター・ノオ』が公開され、主人公ジェームズ・ボンドをショーン・コネリーが演じた。

そこから60年もの長い年月が経った今も尚、制作が続いている『007』シリーズ。だが当然、ジェームズ・ボンドを演じる男は1人ではない。初代、二代目、三代目………と、ボンドの名は長きに渡って継がれ続けてきた。そうして2006年、実に六代目となる新たなジェームズ・ボンド………ダニエル・クレイグが誕生した。

金髪に青眼という、従来のジェームズ・ボンドとは大きく異なる容姿(今までのボンドは黒髪だった)で良くも悪くも話題となったが、今作『007/カジノ・ロワイヤル』にてその演技力が大きく評価されることとなった。実に15年間にも及ぶ、六代目ジェームズ・ボンドの新たなる伝説の始まりである。


原作である小説では、この『カジノ・ロワイヤル』こそが第1作のタイトル、すなわち原点中の原点なのだが、このタイトルはドラマ版では使用されたものの劇場版では今まで使用されていなかった。故に今作が、新たなる『007』の幕開けとなる、いわばリスタート的な立ち位置を有しているのは言うまでもない。

その例として、今作のオープニングは従来のシリーズのとは少々異なっている。いつもは丸い円形の左側からボンドが歩いてきて、真ん中に辿り着きいきなり振り向いたかと思いきやボンドが発砲、まるでこちらが撃たれたかのように画面上から血が流れ始め………というシリーズ恒例のオープニングシーンがあるハズなのだが、今作はモノクロの映像からスタート(今思えば、同じ作品名であり『007』初の映像作品でもある、ドラマ『カジノ・ロワイヤル』(1954)の再現なのかもしれない)し、ボンドが如何に「007ダブル・オー・セブン」の称号を手に入れたのかターゲットに話す場面からスタートする。

「一度目は分かった。二度目の殺し方は何だったんだ」と問いかけるターゲットの頭を即座に撃ち抜き、「ああ、実に簡単だったよ」と答えるボンド。そして回想シーンでのボンドがこちらを振り向き銃を構え………というところで、主題歌である『You Know My Name』が流れ始める、という痺れるほどにカッコ良すぎるオープニング。

私はこの時点で「これは絶対面白い映画だ」という確信に至った。「序盤から観客をぶち上げてくれる映画は最高」………これはもしやするとこの世の真理なのかもしれない。


「カジノ」ということで、今作は恒例のスパイ・アクションに加えてポーカー・ゲームでヴィランと決闘するシークエンスが挿入されている。

序盤の疾走感溢れるチェイスシーンをはじめとする「動」のアクション。
マッツ・ミケルセン演じるル・シッフルとの「静」のポーカー対決。

これら二つの相反する要素を今作は非常にバランスよく配分しており、それぞれが別の映画として成立できてしまう程。まさに新生『007』の幕開けに相応しい作品だ(公開当時も絶大な人気を博し、シリーズ最高の興行収入を叩き出した)。


『007』では必ず「ボンドガール」なるメインヒロインが存在する。だがボンドの女癖は壊滅的なほどに悪い。出会った美女を抱いては乗り換えて、また抱いては乗り換えて………を繰り返すような、THE・女たらしのどうしようもない男なのがジェームズ・ボンドなのだ。

だがしかし、今回のダニエル・クレイグ版ボンドは一味違う。ル・シッフルの企てを「カジノ・ロワイヤル」にて阻止する任務にて、ボンドの会計係として付き添うことなったヴェスパーという女。最初はソリが合わず2人の相性は最悪に思われたが、案の定というべきか互いに恋に落ちることとなる。

最終的にル・シッフルを始末し、見事任務を完遂したボンドは、何とMI6の辞職を決意。007の称号を捨て、完璧に足を洗いヴェスパーと共に暮らすことを選ぶ。従来の作品では任務一筋だったボンドが初めて「女性との愛」を優先した、ある意味衝撃的な瞬間である。

そのままボンドは、ヴェスパーと共に幸せな暮らしを送りました、めでたしめでたし………なんてそう簡単に行く訳もなく、終盤にてヴェスパーが裏切り者だという事実が発覚。組織の回し者との激戦の末、ヴェスパーは命を落としてしまう。その後すんなりとMI6へ復帰し「あの女はただの裏切り者だった、それ以上でもそれ以下でもありません」と淡白に言い放つボンド………しかしその裏には、生涯最も愛した女を奪われたことに対する、復讐の炎が燃え盛っていた。

任務か復讐か、ボンドの選択や如何に………というところで、ボンドは今後のシリーズにおいてず〜〜〜っとヴェスパーのことを引きずることとなる。ヴェスパーは任務のためにボンドに近づいていたけれど、本当はボンドのことを愛していた、という何ともほろ苦い真実が告げられた後、名言「The name is Bond. James Bond.」からの『007』メインテーマが満を持して流れる、という粋なラストシーンに痺れること間違いなし。

従来のシリーズから大きく逸脱した「異例」の連続………これは今作だけでなく今後のタイトルにおいても続いていく、いわばダニエル・クレイグ版『007』が「007の再始動」であるが故の特色だと言える(こういった違いがあるのを知ると「やっぱり前の『007』シリーズも観ておくべきだったか………」と少し後悔しそうになってしまったのはまた別の話)。


余談だが、ダニエル・クレイグ版『007』をレビューしていくにあたって、5作品全部まとめてレビューしちゃえば良いんじゃね?と一度思い立った………のだが、やはり1作品ごとにじっくり振り返ってレビューしたいなぁと思い、こうして執筆するに至った次第だ。

そのおかげで元々記事にする予定だった作品も含めて下書きの数がとんでもないことに。こりゃー毎日一本書き上げる勢いでやらなきゃ今月中に終わらねぇぞと思い、急遽キーボードを一心不乱に打ち続けている状態だ。最近WordPressにて個人用のブログも立てたため、そのうち告知する予定なので乞うご期待………

もう、本当に、やりたいこととやるべきことが大渋滞してる。切実に時間をください。

それではまた、次の映画にて。

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