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 NHKのホモ・フロレシエンシスのDVDを見た。とても好奇心をそそる面白いDVDだったが、一番印象深かったのはチンパンジーと人間の脳の違いの話だ。


 チンパンジーは瞬間記憶が優れている。それは木を見上げたときにどこの実が熟しているのか、どこに自分より強い個体がいるか記憶しておかなければならないため発達したと映像中で語られていた。つまり、チンパンジーには「今ここ」「現在」を生きる能力が長けていると言える。この瞬間記憶は一般的に人間は持ち合わせていない。

 その代わり、人間には人間の発達した能力がある。それは、想像したり、イメージをしたり、感情を生み出す能力だ。人間は将来の不安を持つ。不安を持つからこそ対策する。苦しみながらも現在を抱えて生きる。今を生きるチンパンジーにはないものだ。


 こう考えると、禅の考え方は野生動物に近づくための考え方なのではないかと思う。人間に発達した想像力は、恐怖を通して身を守ったり美しい芸術を生み出したりする反面、不安というあまり気持ちの良くないものも残した。そんな人間だからこそ「宗教」が生まれた。


 想像力が生んだ宗教を通して、想像力を制限する考え方が生まれたのだ。そう考えると、何とも言えない美しさを感じる。

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