「時間がない」は書くための武器になる
論文を書くための「まとまった時間」って永遠に来ないんですよね。
僕はいつも「時間がない、時間がない」と考えるようなタイプの人間です。
なので、いつも「まとまった時間が取れたら、論文が書けるのになぁ」って思っていたんです。
大学教員は「書く」ことが多い仕事です。論文、研究費の申請書、学会の要旨、依頼された原稿、教科書の執筆など、常に「書く」機会に恵まれています。しかし、これらの作業を進めるためには、集中的な思考と時間が必要です。「書く」ことの重要性を理解していても、日々仕事をしていれば、学生の相談に乗る、会議の予定の調整をするとかで、なかなか筆を進めることができないのが現実です。
こうした日々を過ごしていると、まとまった時間があれば論文を書けるのになぁっていう思考になってきます。
まとまった時間が取れる、は幻想
書く時間がないなと考えていた時の僕は、「いつか書くためのまとまった時間がとれるといいなぁ」と考えて日々の業務をこなしていました。でもこれって書かない理由を探しているようなものなんですよね。
大学院生の時は研究と論文を書くのためだけに、ほとんどの時間を使えたわけです。でも今は論文を書くも仕事ですが、他にもたくさんの仕事があります。
論文を書くためだけの時間を十分に取ろうと言うことを期待していましたが、これは無理だとあるときに気づきました。論文を書くために、まとまった時間が取れる日が来るというのは幻想だと考えるようになりました。
幻想を追いかけるから、いつか現れる論文を書けるまとまった時間が取れる日を期待して、書き出すことができなかったんです。幻想を抱くことで書くためのブレーキをかけてしまっていたんですね。
時間がないから書けるようになる
まだ、まとまった時間を追い求めている人に良い情報をお伝えします。
それは「締め切り」があると書けるようになるということです。
時間が無限にあるという前提では、書く必要性が薄れ、結果として筆が進まないことになると思います。先延ばししてしまいますね?
締め切りがあるから書くことができる。原稿を完成させることができると考えています。
いつか来るまとまった時間という幻想を待つよりも、締め切りが大事です。
時間があれば書くのではなく、時間がないから書けるようになるんです。
締め切りがあるというのはプレッシャーの源と捉えがちですが、時間がないと嘆く僕がいつも読んでいる『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』という本には、締め切りには時間の欠乏を作り出すことで、その人に集中ボーナスをもたらすと書かれています。
締め切りのある仕事をしたことがある人は、この集中ボーナスを感じたことが何度もあるはずです。
この毎日noteも24時という締切があることで書き進めることができています。締め切りは作業を前に進めるための強力なツールになり得ます。
締切などの集中ボーナスをもたらす「時間の欠乏」には、「トンネリング」という締め切り仕事に関係のない大切なことが無視される負の効果も有するとも前述の本には書かれていますが、この話はいつか別の機会に。。
頭を使わない内容を書いておくことと「小さな成功」を積み上げること
締め切りを設定することに加えて、書くために僕が大事にしていることは、忙しさの合間を縫って頭を使わない内容を書いておくことと「小さな成功」を積み上げることです。
論文で言えば、実験の方法や結果については、深い思考を伴わずに書ける部分です。これらの頭を使わない部分の執筆を少し時間が取れたところで進める、を積み重ねることで原稿を作り上げていこうとしています。
以前は、頭を使う部分も使わない部分のどちらの部分の執筆も論文執筆時間と考えていたので、論文を書く時間がないと考えてしまっていました。
書く内容によって、執筆にかかる時間は異なるので、思考を伴わずに短い時間で執筆可能なものに関して、早い段階で積極的に筆を進めていこうとすることが有効です。
完成した原稿を思い浮かべて作業を始めようとするから書けなくなるので、机に向かう、PCを起動する、wordを開く、一文書いてみる、といったスモールステップに分けて、それぞれの段階でできたことを認識する「小さな成功」を積み重ねることで、原稿の完成という大きな成功に繋げようとする考え方です。多くのビジネス書で書かれていることかと思います。論文を書く上でもとても有効だと思って実行しています。
時間がない中でも大事な「深く思考する時間」と「書く理由」
これらの方法で時間のない中をすり抜けて書き進めることができるようになりました。
とは言っても、やはり、しっかりと深く思考する時間も必要です。細切れでないまとまった時間が取れるタイミングがあれば、そこでは書く行為ではなく、考える時間を取ることにするようにしています。深く思考することも論文を「書く」ことの一部です。
ここでの思考時間が取れれば、あとは細切れにした作業として論文を書くことができます。
これらのhowを使えば、論文を書き進められるようにはなりますが、もう一つ大事なことがあります。それは、「なぜ書くか?」を考えることです。むしろこちらのが大事かもしれません。書く方法が身についたとしても書く理由がなければ、書き続けることはできません。理由を考えずに、書かなきゃいけないと焦っていることもあるかもしれません。
書く理由がしっかりと分かっているならば、「時間がない」は執筆を強力に進めることに繋がります。
このように時間が限られているからこそ、「書く」ための強い動機付けが生まれます。そして、時間のない中で書くことを受け入れることで、どうすれば書けるようになるかを考えるようになりました。時間の制約を受け入れ、それを自分のために働かせることで、結果的にはより多くの成果を出すことができるのです。
論文を書くことのできるまとまった時間という幻想を捨てて、時間がないを味方につけてこれからも書き続けていこうと思います。
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