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忘れがちな弓の重要性


最終的に音を出しているのは弓

左手に気を取られていないか

ピッチやビブラートを司るのは左手です。
超絶技巧も、左手技術のウエイトが大きいのも事実です。

しかし、最終的に音を出しているのは弓だということを忘れていませんか

というのは、私が音大時代先生に一番注意されたことなのです。

バイオリンの矛盾

バイオリンは「擦弦楽器」と呼ばれ、その名の通り「弦を擦って」音を出します。その擦る道具が弓です(Pizz.は除く)。
ちなみに、同じ弦楽器群でもギターやハープは「撥弦楽器」と呼ばれます。

そもそもバイオリンは音を出す過程で、ある矛盾が生じています。

擦らなければ弦が震えないので音は出ない
しかし、擦る力が過ぎると弦の振動を止めてしまい、良い音は出ない

弓はものすごく繊細なバランス、力加減が必要なのです。

ビオラ、チェロ、コントラバスよりもバイオリンの弓が長いです(*^^*)

「A」しか弾かせてもらえなかった

レッスンで指摘されたこと

中学3年生の時、音楽高校入学を目指し、月に1度地方から上京してレッスンを受けることになりました。
課題曲を弾き終わった後、先生からこう言われました。

「弓の基礎から始めましょう」

私は「??」となりました。
曲のディティールを指導されるような、華やかなレッスンを想定してたからです。

開放弦「A」を弾き続ける

以下の目標を達成できるまで、続きました

弓元、弓中、弓先どこで弾いても
【音量】【音質】が一定になること

目をつぶって聴いている人には
弓を返す瞬間がわからないくらい滑らかになること

この2つをクリアするためには、右手の些細な重心移動、すべての指先の動きを制御する力、何より「自分が出す音にこだわる」ことが必要でした。

クリアしたあとは明らかにクオリティが上がった

「A」を出し続けるという練習は、左手の練習をまったく含んでいません。
開放弦なので、押さえてすらいません。

先生から「大分きれいになったので、もう一度曲を弾いてみて」と許可が下り、弾いてみたとき、自分が一番驚きました。

格段に音がきれいになっていたからです。

そして、音にこだわる習性がつきはじめたため、左のピッチの狂いにも敏感に反応できるようになっていました。

お勧めの教本

最後に実際に私が使用した教本を挙げていきます。

セヴィシックは世界で愛用されている名著です

セヴィシックOp1-1、No.11

移弦に特化したエクササイズです。
テーマに対し、ボーイングが64パターンあり、コンプリートできた暁には、移弦マスターになると思います。
が、地味に難しいです(T_T)

セヴィシックOp1-1、No.29

テーマ曲に対し170通りの弓使いやリズムパターンが提案されています。
移弦だけでなく、弓のどこを使うか、まで指定があり、こちらも骨太なエクササイズです。

クロイツェルNo.1

有名な中級エチュード本のクロイツェル。
2番から始めることが多いのですが、理由は1番の弓がすごく難しいからです。全音符を中心に描かれており、弓の配分、スピード、強弱のつけ方、すべての練習ができます。

カールフレッシュ

スケール(音階)教本ですが、調によって弓使いが異なります。
通常はハ長調の弓使いを他の調でも使うことが多いのですが、一度教本に書かれている通りの弓使いでやってみると、たくさんの発見があります。
ただ、重音もありますので、左手の難度も相当高いです。


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