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ただ褒めてほしいだけ

一生懸命、練習したピアノ。
両手で1曲通して弾けるようになるまで、難易度にもよるけれど、3ヶ月以上かかる。
練習中は途中でつまずきまくる。それを聞いている父親に「下手くそ」と言われる。
ピアノを弾いても誰も褒めてはくれなかった。
そんな言葉しかもらえないなら、やめる。
と、ピアノから離れた。
でも、何年か経って、また弾きたいと思った。
ピアノは習っていたけど、親子で練習したことは一度もない。褒められたこともない。
それでも、やっぱり、褒められたくて弾いていた。

大人になって、結婚して家を出た。
20年以上ブランクありながらも親がいない新居で毎日、ピアノを練習した。
そしたら、ショパンの曲をいくつか弾けるようになった。
その頃には父も母も年老いて、病を患い余命わずかだった。
私が実家に帰ってピアノを弾いたら、母が「いつの間にそんなにピアノ上手になったの?」と驚いていた。
父も「ピアノやっぱりいいな。上手になったね」
と、褒めてくれた。

今は褒めてくれる両親はいない。

それでも、誰かに褒められたくて、今でもピアノを弾いているんだと思う。
そういうこともあって、子どもが生まれてからも、息子と一緒にピアノを弾いている。
もちろん、息子のピアノには、かなり大げさに褒める。
ゲーム大好きな息子。でも、ピアノの練習時間をちゃんと作ってくれる。
毎日、練習して5年経つ。
発表会でも立派に弾いてる息子。ぐんぐん成長する息子。
やっぱり、ピアノ続けててよかった。
誰かに褒められたくて、今日もピアノを練習する。






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