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金は必要だが重要ではない。

「仕事は給料で選べ」
 私が十代のとき、就職活動中だった兄に父がそう言った。
 父は戦後に幼少期を送り、就職して経済成長、バブル経済とその崩壊を経験した会社員。恐らくお金というものはツラい仕事の対価としてもらうもの、という考えを持っていたのだろう。そして経験上、楽しい仕事などはない。ならば給料がよい企業に就職しろ、という意味だったのだと思う。
 
 父が生きた時代と今とでは人々の価値観は変わったが、基本的に人は仕事が嫌いでお金は好きだろう。そこは恐らく変わらない。仕事をして金を得る=嫌なことをする対価として好きなものを手にする、という感覚の人がほとんどだと思われる。 

なぜ金が欲しいのか?

 金というのはサービスや製品と交換可能なものであるほか、生活するにも、ただ部屋で寝ているだけでも家賃などの必要最低限の固定費や光熱費、税金や保険料などの義務的なものが発生する。生活しているかぎり自然にお金が出ていくものであり、それを賄うお金は会社員など企業に所属し仕事を得ていれば毎月、自然に決まった金額が入ってくるという人がほとんどだろう。人間は生きるためにお金を必要としている。そして少しでも優雅な生活をするために金はいくらあっても邪魔になることはない。

 私の経験上、独身で一人暮らしならば年収1,000万円もあれば、自分の中で金の概念はなくなる。800万でも十分。外食するときに注文する料理の値段を気にすることも久しぶりに会った友人との交際費や女性とのデート代をすべて自分が支払うことにためらいもなく、仕事があるかぎり銀行口座の残高を確認することも少なくなってくる。ある程度、年齢を経た会社員などはほとんどがそうであろう。

 それにも関わらず、書店に並んでいる書籍やネットで発信されている情報にはお金に関するものが非常に多い。それだけお金は多くの人にとって大きな悩みとなっている。その深層心理は「欲しいものを買いたい」というより「金のことを心配せずに生きていけたら、どれだけ楽だろう」という願望だと筆者は感じている。十分な貯蓄が楽で幸せな生活を送るための土台と考えられているようだ。それは事実だろう。ある程度は。

 しかしお金を持ってる=幸せ、とは限らない。たとえば「欲しいもの、行きたい場所、やりたいことがあるのに金がない人」と「金はあるのに何も楽しめない人」のどちらが幸せだろうか?
 私は断然、前者と考える。なぜなら今の自分が後者だからだ。お金はがあること必ずしも幸せに繋がらず、さらに言えば仕事をすることと潤沢な貯蓄があることは関係がない。

 実際、昨今よく聞く言葉であるFinancia lndipendence Retire Early、いわゆるFIREだがそれを達成した人は多くの場合、働きつづける。お金の心配をしないかわりに自分の本当にやりたい仕事をやる、と言ったほうがしっくりくるかもしれない。彼らはやりたいことをやるために金を増やしたのだろう。働きたくないからではない。

 数ヶ月前に「年収500万円で貯蓄1億円を目指す会社員」の記事を見かけた。彼は趣味もなく食にも興味がないため贅沢をする機会どころか金を使うこと自体が少なく、自然に貯蓄が増えていくそうである。
 これをうらやましいと思う人は果たしているのだろうか?この会社員は目標としている1億円が「貯まってしまった」とき、どんな気分になり、その後の人生をどのように過ごすのだろう。二度と戻すことができない時間を悔やむことにならないことを願いたい。

 私がお金について考えたときに行き着くのは「金よりも大事なものが見つからなければ、人生は虚しい」ということだ。それが愛する家族との生活であったり、車やバイクやギターなど趣味であったり、女性にモテるためでもなんでもいいのだが、この記事を読んでくださっているあなたは漠然とお金が欲しい、またはお金に不安がある方なのだと思う。
 ぜひ何のためにお金が欲しいのか、何が不安なのか根本的なことを掘り下げてみてほしい。そしてお金がある場合に想定できる最高の状態とお金がなくなった場合に想定できる最悪の状況がそれぞれ、どのようなものかを考えてほしい。さらに言えば自分の銀行口座に5億円は入っていると思って生活してみてほしい。
 そうすることで自身のお金の概念は変わるだろう。幸せにやりたいことをやって生きるためには実際にあるかないかに関わらず、お金のことを気にすることなく生きられる思考が大事だと筆者は断言できる。

 なお父に「仕事は給料で選べ」と言われた兄は現在、写真家という職業に就き、家庭を築いて堂々と人生を歩んでいる。
 当の著者はといえば中学を出てから音楽で夢を叶えたのちに脚本家として悠々自適な独身生活をしている。

 著者自身、気分的にも現実的にもお金の心配をすることがなくなってから10年以上が経ったが、音楽への情熱を失ってから「幸せだ」と胸を張れるほどではなくとも貧困状態ではない。それどころか、いつ死んでも悔いがないほど人生に満足している。

 お金が幸せを左右することは否定できない。だがお金は必要だが重要ではない、ということを忘れずに生きたほうが有意義だ。悩んでいるだけ時間の無駄である。
 そのためには金を稼ぐか、金の概念を忘れるかの二択しかない。後者は気の持ちようだ。

お金なんかなんとでもなる。今の日本のシステム的に本当にどうとでもなるのだ。それがわかれば、あなたも思い切り情熱をぶっ放す人生を送ることができると著者は信じている。

#お金について考える


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