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人が映画に出会うための「クワトログラフ」

こんにちは。モダンエイジの映画大好きマーケター栗原です。

突然ですが、皆さんが映画を知るきっかけって何でしょうか?
それはTVCMだったり、友人のクチコミだったり、映画雑誌を読んだり、主題歌が話題になっていたり、色々とあると思います。

私はというとSNSのクチコミを参考にしたり、映画専門メディアで情報収集したり、「映画秘宝」を毎月熟読していたり(余談ですがまた休刊になるとのことで非常に残念です)、色々なタッチポイントで映画に巡り合っています。

映画を知ってもらう切り口やフックは本当に多様ですが、だからこそその類型を理解して、タッチポイントを上手く作っていく必要があります。

今回は映画に人が出会う入口となる、4つのグラフ=「クワトログラフ」について書いてみたいと思います。

※ここでいう「グラフ」は、関数の棒グラフや折れ線グラフのことではなく、「点と点との結合関係」を表しています。
※クワトログラフの考え方はモダンエイジ代表、高野の提唱するフレームを映画に転用したものです。

■「人から映画を知る」ソーシャルグラフ

一つ目に紹介するのが「ソーシャルグラフ」です。これはリアル、ソーシャルメディア上に関わらず、直接繋がった友人・知人たちで形成される人間関係図のことで、「人から映画を知る」というものです。

自分の付き合いのある実際の友人や知人たちからのクチコミなので、その信頼性は非常に高く、企業からの一方的な発信である広告とは比べ物になりません。友人や知人が強くオススメしている作品を思わずレンタルして観てしまった、友人に強く誘われて観に行った映画が凄く面白かった、といった経験は誰にでもあるでしょう。

ソーシャルグラフの声は非常に強く、必ず欠かすことのできないタッチポイントです。映画情報のセレンディピティ(偶然の出会い)が高いので、特に日頃映画にそこまで関心がない潜在層に対して有効でしょう

主にソーシャルグラフの効果について分析したのが下記の記事です。熱量の高い知人のクチコミに出会い、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観に行った人のエピソードを紹介しています。


■「人から映画を知る」インタレストグラフ

続いてご紹介するのが、「インタレストグラフ」です。ソーシャルグラフと同じく「人から映画を知る」ものではありますが、同じ趣味を持っていたり、好きなものが共通しているということが、インタレストグラフの条件です。

同じ趣味趣向なので情報交換や入手したい情報も似通っており、信頼性が高かったり、共感も集めやすいことから、拡散性も高いグラフです。

特にインタレストグラフが強いメディアが、Twitterでしょう。Twitterは複数のアカウントを所持することがスタンダードであり、リア友限定のソーシャルグラフ専用アカウントもあれば、趣味や「推し」用のアカウントを持ち、インタレストグラフで繋がっているユーザーも非常に多いです。

私自身も映画好きの方しかフォローしていない映画アカウントを持っており、自分から映画の感想や情報をシェアしたり、フォロワーの方のレビューを参考にして観に行く映画を選んだりしています。

このインタレストグラフで繋がっている人々は、いわば「同志」であり、時にソーシャルグラフよりも強い影響力を及ぼすことがあります。

私も直近、映画好き「同志」”高濃度なクチコミ”に出会って、『コーダ あいのうた』の上映に駆け込んできました。そのようなクチコミを生み出す「琴線スイッチ」について、気になる方は下記を覗いてみてください。

■「映画から映画を知る」シネマグラフ

次に紹介するのが、「映画から映画を知る」=「シネマグラフ」です。

映画を観て感銘を受け、その監督や役者の別の作品を観てみたくなったり、その作品が影響を受けていたり、逆に影響を及ぼしている作品を観たくなったり……、そういった「映画から」無限に広がっていく切り口です。

映画を探しているときに目にするレンタル店の陳列や、映画を観終わった後に出てくるNetflixのレコメンドもその一つですし、それこそ映画秘宝を読んで情報収集したりも、シネマグラフに当てはまるでしょう。

デジタルが発達するまでは、「映画から映画を知る」ことは、映画のコアファン以外は難しいことでした。

ただ現代では、Netflixのようなサブスクでも、スタッフ欄から監督名や役者名をタップすれば、その人が関わっている作品(そのサブスクにある範囲で)が表示されるようになっています。

中でもシネマグラフの力を最大限発揮しているのが、映画レビューサービスのFilmarksです。作品名検索、スタッフ名検索、近日公開作品検索…etc、作品を調べる手段が多様であり、作品詳細ページからスタッフ作品一覧に飛んだり、スタッフの作品一覧から気になった作品に遷移したり、「映画から映画を知る」動きが無尽蔵に可能です

視認性の高い映画のジャケットと、評価・評価数が一瞬で観ることができるのも素晴らしいポイントでしょう。

例えば私は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が大好きなのですが、そこからジェームズ・ガン監督の過去作を調べたり、調べているうちに、「あれ、マイケル・ルーカー毎回出ているな」と発見があって、彼の過去作も漁ってみたりと、その一連の「映画に出会う」動きを、スマホ上のワンタップでできてしまうのが本当に凄い。

余談ですが私のFilmarksはこんな感じで、ジェームズ・ガン監督のルーツであるトロマ映画も含めて、完全制覇を目指しています(笑)。『トロメオとジュリエット』超面白かったのですが、これもシネマグラフを活用できるFilmarksがなければ出会えていなかったと思います。

筆者のFilmarks(トロマ時代も含めジェームズ・ガン制覇中です!w)

あとは一人でケヴィン・ベーコン・ゲームに興じることも(暇か)。

■「映画以外から映画を知る」リレーショングラフ

ここまでソーシャルグラフ、リレーショングラフ、シネマグラフと3つ紹介してきましたが、これだけではタッチポイントとして足りません。最後が「映画以外から映画を知る」=「リレーショングラフ」です。

映画の直接的な情報がどうしても届きづらい層も多いですから、映画を知るきっかけは映画じゃなくてもいいと思います。最もポピュラーなのは、例えばマルーン5から「はじまりのうた」を知る、クリスティーナ・アギレラから「バーレスク」を知るなど、映画の主題歌や音楽から映画を知るパターンです。

昨年ですが、私は上記記事にある、フジロックの菅田将暉×RADWIMPSのパフォーマンスが素晴らしすぎて、主題歌となっている『キネマの神様』を劇場まで観に行ってしまいました。

他にも、映画とは直接関係がないIT企業のSKYから、映画『ノイズ』や『鳩の撃退法』を知ってもらうといったリレーショングラフの活用法もありました。

それから自動車メーカーのヒョンデと長期的な契約を締結し、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』含めた、ソニー・ピクチャーズの作品をヒョンデ経由で知ってもらう切り口を作っているような事例もあります。

「昭和40年代の浅草」をアピールした、『浅草キッド』のプロモーションもリレーショングラフを上手く活用しています。

もっと言ってしまえば、ディズニーランドだって、ディズニー映画の世界観を追体験させるリレーショングラフですよね。

こうして映画に紐づくあらゆる関連性の要素を作り出すことで、多くに人に作品を知ってもらう可能性を高めることができるのがリレーショングラフの特徴です。

■グラフを組み合わせる「クワトログラフ」

4つのグラフを紹介してきましたが、大切なことは一つのグラフだけではなく、4つのグラフを組み合わせて展開していくこと=「クワトログラフ」です。言い換えると、「人」と「映画」と「映画から派生するもの」をまとめ上げて、繋げること

当然ながら、人の好みや嗜好は千差万別です。映画をそこまで好きじゃない人、映画館に年1回行くか行かないかみたいな人がほとんどを占めるのが事実です。

そのため「映画」という一つの大きな括りだけでは、映画を知ってもらい、観たいと思ってもらうことはハードルが高い。でもその人は音楽が好きかもしれないし、人からのオススメされることが好きかもしれない。

だからこそ様々な「好み」という点を集めて、広げて、繋げて、一つの線(「グラフ」)にして、さらに「クワトログラフ」として、その多重性を持たせていくことが重要です。

『ゴーストバスターズ』のピーター・レイモンド・イゴン・ウィンストンの4人組は誰か一人でも欠けたら、それはゴーストバスターズじゃないですよね?

クワトログラフも同じように、その活躍の濃淡はあれど、ソーシャル・インタレスト・シネマ・リレーション4人組セットで考えておいてください。(流石に強引過ぎましたかね、、?でも「スタンド・バイ・ミー」や「ストレンジャー・シングス」といい、4人組の作品って多いですよね)

クワトログラフで映画を知ってもらう(「認知」)だけでもダメで、「観たい」という鑑賞意欲も上げていくためには、クワトログラフを理解したうえで、「トライブ」の考え方が非常に大事なのですが、それは文字数の都合上また今度じっくりとお話します。

クワトログラフのようなタッチポイント戦略と、トライブのようなターゲット戦略、琴線スイッチのようなコミュニケーション戦略の合わせ技が、映画×マーケティングのキーになってくると考えています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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