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約70年前の傑作『地下水道』はなぜ時間軸を超えたのか

こんにちは。モダンエイジの映画大好きマーケター栗原です。今回の記事は少し短めです!

7月末にTwitterで興味深い現象が起こりました。
とある映画を紹介したツイートがプチバズりをし、その作品の「意欲」が瞬間風速的に高まるという現象です。

その映画とは、1956年に製作された『地下水道』という作品です。

1944年9月末、ドイツ軍に占領され荒廃した旧市街を、ポーランド国内軍の中隊が行軍している。中隊長のザドラ中尉(ヴィェンチスワフ・グリンスキ)、副官のモンドリ中尉(エミル・カレヴィチ)、連絡係の女性ハリンカ(テレサ・ベレゾフスカ)、記録係のクラ軍曹、小隊長のコラブ(タデウシュ・ヤンチャル)とその部下“ノッポ"(スタニスワフ・ミルスキ)、そして民間人の作曲家ミハウ(タデウシュ・シェイバル)が主要メンバーである。そこへ、連絡係のデイジー(テレサ・イジェフスカ)が加わる。度重なる攻撃で遂に進退きわまった隊員たちは、下水道を使って撤退するべくマンホールを降りてゆくが……。
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ポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の第二作で、迷路のような地下水道の中で繰り広げられる兵士たちの絶望のドラマです。全編にわたって漂うのは、逃げ場のない閉塞感と、悪臭までも漂ってきそうな圧倒的な臨場感。救いのなさ過ぎる物語。

私も大学生の時に鑑賞しましたが、まさに戦時中の"生き地獄"を描いた映画で、数日間気分が落ち込んだことを覚えています。

こんな映画(お世辞にも万人受けはしない)が、なぜ公開から60年以上経たいま、注目を浴びているのでしょうか?

そのきっかけは、やはり"高濃度なクチコミ"でした。以下のツイートが口火を切ったのです。

・もう二度と観たくない
・今までで1番怖くて辛い映画だった

こうした主観的な熱量をまとったクチコミは、1万5千件以上のRT、7万以上のいいねを獲得。このツイートの接触した『地下水道』を観たことのある人たちも、同調や共感、補足説明のクチコミを投稿することによって、さらに本作のネタは盛り上がっていきました。

(キャプチャ撮るのを忘れてしまったのですが、)一時は公開されたばかりの『ジュラシック・ワールド』最新作など注目の新作を抑えて、フィルマークスのトレンドで1~2位まで上がってくる事態に。

下記のように、このクチコミに出会って、『地下水道』を初めて観た、という人もTwitter上で沢山みられます。

繰り返しになりますが、『地下水道』は60年以上も前の作品です。ましてやNetflixやAmazonプライム、Huluなど、主要な動画配信サービスでも配信されておらず、簡単に観ることはできません(フィジカルアベイラビリティが弱い)。

上のツイートの方たちは、わざわざTSUTAYAやGEOなどに行って、DVDをレンタルして観たのでしょう。同じく7月話題になったNetflixオリジナル映画『呪詛』のように、サブスクに入ってさえいれば簡単にサクッと観ることはできる、というような作品でもないのです。

そうした色々な側面から鑑賞ハードルが高い(年代・内容・リアルのレンタルのみ)作品でさえも、思わず「観たい」と思わせ、実際に行動変容まで促す”高濃度なクチコミ”。その影響力は、改めて計り知れないなと実感しました。

60年以上前の映画である『地下水道』でも、ここまでの行動変容を起こせるのであれば、公開館数が少なく”マイナー”で、PA費がほとんどないような新作映画だって、”高濃度なクチコミ”の力で劇場に来てもらうことも可能だとは思いませんか?

もちろん作品力が高いのは前提かつ、生活者のクチコミなので、完全にコントロールすることなど到底できませんが、マーケティングの力で”高濃度なクチコミ”が生まれることを、アシストすることはできるのではないかなと思っています。

”高濃度なクチコミ”についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひご覧いただければ幸いです。

広告を大々的に打てないような、予算のない作品の中にも、誰かの人生を変えてくれるような、本当に素晴らしい作品は沢山あります。僕にとっては22歳の時に劇場で観た『ブラインドスポッティング』という作品がまさにそうでした。

そんな映画がもっともっと多くの人に届くように、埋もれてしまわないために、クチコミを戦略的に設計するような考え方も、検討の余地があるのではないかなと思います。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!良ければフォローお願いします!

PS
アンジェイ・ワイダ監督作はあまり多く観れてないのですが、『カティンの森』や、遺作である『残像』も自分に大きな影響を与えた作品です。関係ないですが、ポーランドの監督だったらクシシュトフ・キェシロフスキ監督(言いづらいw)のトリコロール3部作も大好きです!

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