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PJW17 国譲り

天稚彦(あめのわかひこ)が死亡し、高天原(たかまのはら)の神々は、新たな神様を派遣することにした。

次に指名されたのは武甕雷神(たけみかづちのかみ)(以下、タケミー)であった。

早速、地上世界に向かう「タケミー」。

その途中、経津主神(ふつぬしのかみ)(以下、ふつ)がやって来た。

ふつ「おいらも共に参るぞ。」

タケミー「なぜじゃ? 命じられたのはわしじゃぞ?」

ふつ「実は『日本書紀(にほんしょき)』の方では、おいらも同行しておるのじゃ。」

タケミー「ならば致し方なし。」

こうして二柱(ふたはしら)は地上世界に向かった。

出雲(いずも)の五十田狭小汀(いたさのおはま)に降り立ち、十握の剣(とつかのつるぎ)を逆さに突き立て、その上に坐る二柱。

柄の部分を底にし、切っ先を上にした状態の剣に坐っているのである。

そして、地上世界を治めている、大国主命(おおくにぬし・のみこと)(以下、くにやん)に言った。

タケミー「地上世界を・・・。」

ふつ「天上の神々に譲れっ!」

くにやん「あ・・・あの・・・肛門に突き刺さって痛くないんですか?」

ふつ「おいらたちは神じゃぞ! 痛いわけがなかろう! それより、神秘的とか、奇跡的とか、もう少しマシな感想を言えっ!」

くにやん「い・・・いや、でも、そんな体勢にする必要あったの?」

タケミー「無駄な質問は禁止!」

くにやん「じゃあ、解説だけでも・・・。」

タケミー「解説じゃと?」

くにやん「ちなみに『古事記(こじき)』では、降り立った場所は、伊耶佐小浜(いざさのおはま)と記載されてる。同じ場所なんだけどね。現在は、稲佐の浜(いなさのはま)と呼ばれてるよ。島根県出雲市大社町にある砂浜のことさ。」

タケミー「そ・・・そうか・・・勉強になったぞ。」

くにやん「それから、十握の剣(とつかのつるぎ)は、拳(こぶし)十個分の長さの剣ってことだよ。」

ふつ「もう分かった。それより、国を譲る気はあるのか?!」

くにやん「いきなりやって来て、そんなことを言われても・・・。」

タケミー「汝(いまし:あなたの意)の一存次第ではないか・・・。」

くにやん「いや、僕の一存では決められないよ。」

ふつ「なにゆえじゃ?」

くにやん「僕には、事代主神(ことしろぬしのかみ)と、建御名方神(たけみなかたのかみ)っていう、跡継ぎ候補が二柱もいるんだよ。あの子たちにも聞かなきゃね。」

こうして「くにやん」は息子たちに国譲りについて尋ねた。

事代主神(ことしろぬしのかみ)は、すんなりと受け入れたが、もう一方の建御名方神(たけみなかたのかみ)は断固拒否の態度を示した。

建御名方「父上、そんな無礼な奴は、こらしめてやりましょう! 俺の怪力で、ぶちのめしてみせますよ!」

こうして、建御名方神は「タケミー」に力比べを挑んだ。

結果は惨敗!

建御名方神は信濃(しなの)の諏訪湖(すわこ)まで逃亡し、恐怖に震えながら国譲りを承諾したのだった。

くにやん「ちなみに信濃は、今の長野県のことです。」

タケミー「では『くにやん』よ。国譲りを承諾するのじゃな?」

くにやん「分かったよ。その代わり、条件がある。」

ふつ「なんじゃ?」

くにやん「僕のために、大きな社(やしろ)を建ててくれないか? そこに隠れて、国の行く末を見守っていきたいんだ。」

タケミー「ふむ。良かろう。のちの出雲大社(いずもたいしゃ)じゃな。」

くにやん「正解!」

ふつ「それから、汝(いまし)の息子たちが、高天原に仕えることを約束せよ。」

くにやん「国譲りを承諾した以上、仕方ないね。分かった。そうさせるよ。建御名方も大人しくなったし、反対する子はいないと思う。」

こうして、高天原による地上世界の征服が完了したのであった。


つづく




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