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PJW19 妻を選んだ男

地上に降り立った、瓊瓊杵尊(ににぎ・のみこと)(以下、ニニギ)は、美しい女神に一目惚れしてしまう。

木花開耶姫(このはなのさくやひめ)(以下、サクヤ)である。

「ニニギ」は早速、結婚を申し込んだ。

ニニギ「結婚しようぞ!」

サクヤ「私からは何とも・・・。父にお伺いを立てないことには・・・。」

ニニギ「では、早速、訪ねようぞ!」

こうして「ニニギ」は「サクヤ」の父親のもとへと向かった。

父親は大山祇神(おおやまつみのかみ)(以下、山)である。

申し出を聞いた「山」は大喜び!

山「うちの娘を選ぶとは、流石はニニギ殿! ちなみに、サクヤは富士山ですぞ。」

ニニギ「ふ・・・富士山?」

山「それから、結納品も、たくさん送りましょうぞ。」

ニニギ「かたじけないことにござりまする。」

山「それと・・・もう一人の姫も嫁にしていただきたい。」

ニニギ「もう一人?」

山「サクヤには姉がおってな・・・。姉とも結婚してくれぬか?」

ニニギ「わ・・・分かりもうした。サクヤ殿の姉君とあらば、何の差し支えがござりましょう。お受け致しまする。」

山「そうか。お受けくださるか。よきかな。よきかな。」

こうして「ニニギ」のもとに、二人の姫がやって来た。

姉:磐長姫(いわながひめ)(以下、磐ちゃん)

妹:木花開耶姫(このはなのさくやひめ)(以下、サクヤ)

ところが、ここで事件が起こった。

というよりも起こした。

「磐ちゃん」が不細工だったので「ニニギ」は彼女を実家に返してしまったのである。

実家では、当然ながら「山」が驚いていた。

山「こ・・・これは、どういうことじゃ?」

磐ちゃん「父上・・・返されたのです。」

山「なにゆえじゃ?」

磐ちゃん「か・・・顔が・・・。い・・・言いたくありませぬっ!」

山「なんということじゃ。二人の娘を妻に迎えれば、子孫の命は岩のように永遠に続き、花のように栄えるというのに・・・。そういう祈りを込めて、『磐』と『サクヤ』を差し出したというのに・・・。」

こうして「ニニギ」の子孫は、永遠の命を失い、寿命を持つことになったのであった。

それからほどなくして「サクヤ」は懐妊した。

だが「ニニギ」はこれを怪しんだ。

ニニギ「たった一夜の契りで、身籠るはずがない。どこぞの国津神(くにつかみ)の子ではないのか?」

サクヤ「国津神? 地上世界の神様の子だと仰られるのですか?」

ニニギ「そうじゃ!」

サクヤ「姉上の時にも思いましたが・・・あんた、情けないわよ! そこまで仰るんなら、あんたの子であると証明するわよ!」

怒った「サクヤ」は、出入り口のない産小屋(うぶごや)を建て始めたのであった。


つづく

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