JW21 どんがめっさん
【神武東征編】EP21 どんがめっさん
播磨灘(はりまなだ)の中央に位置する家島諸島(いえしましょとう)に到着した、狭野尊(さの・のみこと)(以下、サノ)一行。
小柄な剣根(つるぎね)が解説していた時、筋肉隆々の日臣命(ひのおみ・のみこと)が、島内の大岩について、自慢気に語ってきた。
日臣(ひのおみ)「剣根よ! 家島の真浦港(まうらこう)にある大岩は知っちょるか?」
剣根(つるぎね)「亀の形をした大岩・・・その名も『どんがめっさん』にござろう?」
日臣(ひのおみ)「さ・・・さすがっちゃ。」
そこへ、一代目こと椎根津彦(しいねつひこ)(以下、シイネツ)が加わってきた。
シイネツ「ふっ・・・剣根よ。まだまだ甘いのう。」
剣根(つるぎね)「ど・・・どういうことじゃ?」
シイネツ「わしらが来た時・・・そんな岩はなかったんやっ!」
剣根(つるぎね)「そ・・・そんな・・・なかった?」
日臣(ひのおみ)「じゃがっ(その通り)! おいたちが来た時は、まだ亀やったんやっ!」
サノ「また、亀の話か・・・。」
シイネツ「我が君っ! そんなこと仰らずっ! そこを何とか、あと一回だけっ。」
興奮気味のシイネツに対し、剣根の息子、夜麻都俾(やまとべ)(以下、ヤマト)が尋ねた。
ヤマト「ま・・・まさか・・・それが、二号にござりまするか?」
シイネツ「そのまさかやに!」
すると、見知らぬ男がやってきて、勝手に会話に入ってきた。
見知らぬ男「説明長いんやっ! はよ(早く)セリフ言わさせろやっ! 出番待ちで終わらせるんかいっ!」
サノ「な・・・何者じゃ?!」
見知らぬ男「いやっ・・・あのう、聞いてません? 宇津彦(うつひこ)から?」
サノ「も・・・もしやっ! よ・・・四代目か?」
見知らぬ男「その通りっ! わてが四代目の槁根津日子(さおねつひこ)だす。」
サノ「槁根津日子? 椎根津彦(しいねつひこ)と似たような名前じゃな。」
サノの言葉を聞いて、槁根津日子(さおねつひこ)(以下、サオネツ)は熱く語り出した。
サオネツ「その通り! 『日本書紀(にほんしょき)』においては、椎根津彦として登場し、逆に『古事記(こじき)』では、槁根津日子として登場するんや!」
シイネツ「実は、登場する場所も別々で、うちが速吸之門(はやすいなと)。サオネツが速吸門(はやすいのと)で登場するんやに。」
唐突な展開に、次兄の稲飯命(いなひ・のみこと)が過敏に反応した。
稲飯(いなひ)「ちょっと待てい! 速吸(はやすい)の文字がかぶってるっちゃ! どういうことっちゃ?!」
シイネツ「そこなんですが、うちの場合は豊予海峡(ほうよかいきょう)。サオネツの場合は明石海峡(あかしかいきょう)のことを指すんですな。」
サオネツ「せやっ! わてが思うに、速吸之門も速吸門も、結局、同じ意味で、固有名詞やのうて、普通名詞なんやないかと思ってるんや。」
稲飯(いなひ)「普通名詞っちゅうんわ、どういうことっちゃ?」
サオネツ「流れの速い海峡っちゅう意味なんやないかと・・・。」
そこへ長兄の彦五瀬命(ひこいつせ・のみこと)(以下、イツセ)も会話に参加してきた。
イツセ「じゃっどん、サオネツ殿。結局、シイネツと同じやり取りで、サノから槁根津日子の名前を貰うんやろ?」
サオネツ「せやな。竿を掴んで船に上がったっちゅうことで、名付けられるんや。」
イツセ「なら、この家島で登場してはダメなのではないか? 汝(いまし)が登場するんは明石海峡やろ?」
サオネツ「さすがはイツセ様っ! そうなんですわ。ホンマは明石海峡で登場せにゃならんのに、亀のやつが、家島に伝承残して、大岩になってしもうたさかい、急遽、ここで登場することになったんですわ。」
話題に上るのを待っていたかのように、亀こと二号が、唐突に鳴いた。
二号「ンア~。」
稲飯(いなひ)「おっ・・・おったんか?!」
サオネツ「まあ、我が君。聞いてやってください。亀のやつ、ホンマ、いじらしいやつなんですわ。」
サノ「いじらしい?」
サオネツ「二号・・・もとい亀は、家島の白髪白髭の老人に仕えてたんですが、ある日、老人が水先案内人を頼まれて、サノ様と一緒に向かったんですわ。それで、現地で大活躍しましてな。」
稲飯(いなひ)「ええ話やないか。大活躍したんやろう?」
サオネツ「そのあとが問題ですわ。亀は仕事を終えて、先に帰ったんですが、待てども待てども老人は帰って来(き)いひん。やがて待ってるうちに、亀は石になってしもうたんですよ。」
ヤマト「なるほど・・・。それが『どんがめっさん』と呼ばれし、大岩のことにござるな。」
サオネツ「そうです。まあ、わては、白髪白髭の老人でもないし、どっちか言うたら、ブラッド・ピットみたいな顔なんですけど、『古事記』では、亀に乗って登場したりするんで、類似性(るいじせい)高いやないかっ! 言うて、作者が無理矢理、登場させたっちゅうわけです。」
一同「ぶらっどぴっと?」×13
サオネツ「なんです? よう分からへんけど、おもろいネタ持ってはるんですなぁ。」
サノ「とにかく、実際は、次の明石海峡の件(くだり)で登場するところを、作者の陰謀で、今回の登場に早められたということか。」
サオネツ「そうなんですよ。それもノーギャラですよ。どつき廻したろか思いましたわ。」
サノ「以前、三本足のカラスに遭遇したのじゃが、カラスも、そのようなことを申していたな・・・。」
サオネツ「カラスですか?」
四代目ことサオネツの登場で、一行の旅はどう展開していくのであろうか。
次回に続く。
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