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ウンコ

キクノスケと暮らすようになって4年と8ヶ月が経ち、今僕が感じることは、鳥と暮らすことは鳥のウンコと暮らすことで、鳥を愛することは鳥のウンコを愛することなんだということです。

鳥というのはいつでも空を飛べるよう常にウンコが出るように体ができているので、決まったところでウンコをさせるようなしつけはできないよ

的なことがキクノスケを飼う前に読んだインコの飼育本に書いてあって、ああそういうものなのかという前提知識は持っていたものの、想像以上にインコのウンコにまみれた生活を僕は送ることになりました。

うちでは僕が家にいるときはできるだけキクノスケをケージの外に出してあげるという契約なので(ケージに閉じ込めるとダセダセピーピーうるさいので)おのずとキクノスケのウンコもケージの外に解き放たれます。

頭や肩にウンコされることなんて日常茶飯事で、マンガ、枕、通勤カバン、お気に入りのネクタイ、会社から貸与されたノートPC、湯切り直後のペヤングなど被害者は数しれません。

特に僕の肩はキクノスケのトイレになっているらしく、部屋の中でぼーっとくつろいでいたキクノスケが僕の肩に飛んできて、おっ遊びたいのか?と思っていたら肩にウンコをしてまたもとの場所に飛んで戻っていくということがとてもよくあります。

てことは全然決まったところでウンコするじゃねーかよ、クソ飼育本め。

キクノスケがウンコをするときはお尻がちょっと下がりながらフリフリするので、このモーションが見えたら急いでキクノスケを手に乗せてケージの上など新聞紙が下に敷いてあるところに移動させようとします。

でもウンコが出てくるまで2,3秒しかないのでよくて手のひらでウンコを捕球できる程度でたいてい失敗します。

キクノスケがウンコするたびにウエットティッシュで回収するため、コロナ禍で一時的にウエットティッシュが店頭から消えたときは、本当に我が家が右も左もウンコだらけになるんじゃないかとヒヤヒヤしたものです。

もちろんケージとかとまり木スタンドとかキクノスケがよくいる場所の下には新聞紙を敷いています。

しかし最近ウンコを真下ではなく前方に飛ばすという迷惑この上ないスキルになぜかキクノスケが目覚めてしまい、敷いた新聞紙がクソの役にも立たず、それが新たな僕の悩みのタネになりつつあります。

かくいう僕も小2のときはオシッコをどれだけ遠くに飛ばせるかだけを追求して生きていたので、人も鳥もその精神の成長の過程で一度は自分の排泄物を遠くに飛ばしたくなるものなもかもしれません。(ない)

ちなみに僕は遠くに飛ばすためにオシッコをためすぎたことが原因である日膀胱炎になってしまったのを機に引退し、それからLEGOにハマりました。

ところでウンコとインコといえば、「ウンコした」で”バズった”先輩ヨウムのバズくんに触れないわけにはいきません。

キクノスケとおなかっちにも書きましたが、ヨウムという鳥はただ言葉をオウム返しするだけではなく、意味やシチュエーションを理解したり、自分の感覚と紐付けて、言葉を使いこなすことができる能力があるのですが、バズくんはそのことをこの動画で端的に証明してくれた偉大な先駆者だと思います。

つまりこの「ウンコした」動画からはバズくんの中でウンコが出た感覚と、その時に飼い主さんからいつも言われていたであろう「ウンコした」という言葉が明確に紐付いていることがわかります。(急にクソ真面目な感じになってきましたが)

というわけで、うちのキクノスケにいろいろな言葉の意味を理解してもらう練習として、これほど素晴らしい事例もないので、バズくんと同じようにキクノスケもウンコしたときに「ウンコした」と言えるようになるのか実験してみました。

キクノスケがお尻をフリフリしてウンコをしそうになったら僕はじっと構えてキクノスケの尻に集中し、ウンコが尻から出るその瞬間「ウンコした!」と言うことを、出てくるウンコ出てくるウンコに対してやり続けました。

考えてみたら鳥の”穴”は一つしかなく、ウンコとオシッコは一緒になって出てくるのでこれはウンコでもオシッコでもなく「オシンコ」なんじゃないかと思いましたが、検討した結果ウンコのままでいくことにしました。

ヨウムという鳥はけっこう個体差、性格差があるようで、ほかのヨウムさんがその言葉を覚え使いこなしたからと言ってキクノスケも同じ言葉を覚えるとは限らないので、正直いって半信半疑でした。

しかし、そこはさすがのキクノスケでした。

キクノスケの中でウンコが出た感覚と「ウンコした」という言葉が紐付いた瞬間でした。

しかしここからが教養あり分別あるバズくんの家庭と、無教養で幼少期はコロコロコミックを愛読し、おしっこを遠くまで飛ばすために人生をかけていた僕との分かれ道です。

ウンコという言葉には1回口にだすと2回、3回と言わずにはいられない文化や言語や時代を超えて人間を魅了する不思議な力があります。(ない)

キクノスケがウンコをしたときに合わせて僕が「ウンコした」と言うときはついつい2回3回繰り返してしまい、キクノスケが自分で「ウンコした」と言おうものならこちらもつられて5回6回と「ウンコした!」と言ってしまいます。

そしてさらに応じるキクノスケ。

一人暮らしを初めてはや10数年、見た目は大人、頭脳は子供、たしなめる人など誰もいないマンションの一部屋で、ウンコウンコウンコウンコと盛り上がる30過ぎのデブと無垢なウンコ。じゃなくてインコ。

しかしそのウンコールアンドレスポンスが実はキクノスケの脳に着実に刺激を与えていたらしく、ある日全く予想外の展開を引き起こしてしまいました。

キクノスケはなんとウンコの連呼によって、ウンコが出る前の便意も表現できるようになってしまったのです。

上の動画でもだいたいウンコをする10秒ほど前に「あ、ウンコ」と最初に言っていることから、そのときすでにキクノスケは便意を感じていていることがわかります。

てっきりキクノスケにとってのウンコはプロシュート兄貴みたいに、

「ウンコ」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!

的な感じだと信じて疑わなかったのですが、それは全くの間違いであるということがわかったのです。

キクノスケはもしかしたら自身の内なる便意を言葉で伝えた最初の鳥なのかもしれません。

そしてこのウンコミュニケーションの進化は、僕が悩まされ続けきたキクノスケのウンコについての問題の解決をも示唆しています。

つまり、ウンコをする2,3秒前にするお尻フリフリに気づいてもどうすることもできなかったのですが、10秒前にキクノスケが「ウンコ!」と便意を伝えてくれれば僕はゆうに対処することができるのです!

10秒あればキクノスケをケージの中に戻すこともできるし、ゴミ箱のふちにお尻をゴミ箱の中に向けて立たせることもできますし、嫌いな人がいればその人の頭の上にキクノスケを乗せることすらできます。

もうこれからは一日何十回もウンコを拭き取ったり、大事なものにウンコされることもないのです。

グッバイウンコ。ノーモアウンコ。レストインピースウンコ。

そしてキクノスケが便意を表現するようになってから半年が経ちました。

キクノスケは僕がウンコウンコと盛り上がり過ぎたせいか、ウンコをしないときでも「ウンコした!」と言うフェイクウンコを連発するようになってしまいました。

だいたい8割の「ウンコした」はフェイクで、それにいちいち反応していると逆に疲れてしまいます。

「ウンコした!」の声を合図にティッシュを持ってキクノスケの前に行ってその後しばらく無言で見つめ合っています。

フェイクウンコのときの方が元気よく「ウンコしたー!」と言っているような気がします。

意味なく「ウンコ」と言えばわけもなく気分がアガるのは人も鳥も同じなのかもしれません。(ない)

今はホンモノのウンコに加えて架空のウンコへの対応にも追われる日々です。

そして極めつけになぜか僕の肩の上では一言もしゃべらずに、いつも無言でウンコをしていきます。

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クソが!

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