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オナカっち

 えー、まずはこちらをご覧ください。

うちのキクノスケは控えめに言って天才インコなので、このように自分の頭を足でタッチしながら「アタマタッチ」と言うことができます。

「クチバシタッチ」と言うときはちゃんとくちばしをタッチします。

「アシタッチ」も言えますが、さすがに自分の足で自分の足にタッチすることはできないので、これは言うだけです。

最近では自分の足で頭をタッチではなくカキカキしながら「アタマカキカキ」と言えるようにもなりました。

そもそもなんでうちのキクノスケがこのような「○○タッチ」ができるようになったかというと、発端はキクノスケがうちにやってきたときにさかのぼります。

"ポーーポーー"、"ピヨー"などまだいわゆる鳥っぽい鳴き声しか言わない生後5ヶ月のキクノスケを前にして僕は、おしゃべり上手な鳥として有名なヨウムのキクノスケが、これからどんな言葉を覚えてくれたら僕らの毎日が楽しくなるかをまず考えました。

平家物語を語りだすヨウム(祇園精舎の鐘の声〜)、50セントのラップを口ずさむヨウム(Motherfu××er!!)、談志の芝浜を完コピするヨウム(〜呑むのはよそう、また夢になるといけねえ)、「早く人間に戻して」とつぶやくホラーなヨウム、右翼の街宣車の大音量を真似するアナーキーなヨウム、あえて絶対にしゃべらない沈黙のヨウム(……。)、、

でた結論は、まあ普通なんですけど、キクノスケにはただ僕の言った言葉を”オウム返し”するだけじゃなくて、”一つ一つの言葉には意味があって、それは時や場所や気持ちで使い分けるものなんだ”、ということをなんとなくでもわかってくれて言葉を話せるようになってほしい、ということでした。

ヨウムが言葉の意味を理解し、使い分けることができる能力があることはアイリーン博士と元祖天才ヨウムのアレックス先輩が証明していたので、キクノスケもやっぱり同じようになってほしいな、と。

しかししょぼい太った近視の独身激務会社員がたった一人ででそれを教えるのは簡単ではありません。

先のアイリーン博士がアレックスに言葉の意味を理解させるために行ったモデル/ライバル法という方法もありますが、それを実行するのにも二人の人間がキクノスケの前でコミュニケーションをしてみせることが必要で、僕一人じゃできないのです。

そこでキクノスケに言葉を教えるためだけに婚活して一緒にモデル/ライバル法でキクノスケに言葉を教えてくれるパートナーを探すことまでも意識した末に僕が考えた方法の一つが

キクノスケ自身の感覚と組み合わせて言葉を覚えてもらうことでした。

頭を触られた感覚、足を触られた感覚、おなかを触られた感覚、タッチされた感覚、カキカキされた感覚、その感覚の違いと僕が言う言葉の違いが対応している、とキクノスケが気付いてくれれば言葉に意味があることを理解するきっかけになってくれるんじゃないかな、と思ったからです。

それからとまり木にとまったキクノスケと向かい合って「アタマタッチ」と言いながら頭をタッチする、「アシタッチ」と言いながら足をタッチする、ということを毎日繰り返しました。

キクノスケの方はというと最初はなんのこっちゃだったと思いますが、家の中のオモチャに見えるものと同じくらい僕に対しても興味を持ってくれる” 人間大好き”な性格も幸いして、「アタマタッチ」「アシタッチ」と言いながら体をペタペタとタッチしてくる僕のことをじっっと観察してくれていました。

いつかは僕が頭をタッチしたときに「アタマタッチ」と言ってくれる、足をタッチしたときに「アシタッチ」と言ってくれる、みたいなコミュニケーションが成立すればいいなあ、楽しいなあ、くらいに思っていました。

なので教えはじめて半年くらいたったときのこと、すでにいくつかの言葉も覚えて言葉の自主練に励むキクノスケが自分の足で頭をタッチしながら「アタマタッチ!」と元気に言っていたときは僕が豆鉄砲くらったハトみたいになったし、鳥肌もたったものでした。

これはキクノスケが言葉に意味があることを理解している証明、というよりは言葉にプラスして触られたときの感覚も再現する”ちょっと高度なオウム返し”をしているだけだと思います。

しかし頭とくちばし、タッチとカキカキなどの言葉の表現と感覚の表現の紐付けがしっかりできているのは事実で、ヨウムという鳥の表現力の高さを身をもって知ったはじめての体験でした。

でもここで一つ問題があって、キクノスケは「アタマタッチ」も「クチバシタッチ」も「アシタッチ」も「アタマカキカキ」もちゃんと言えるのですが、なぜかおなかだけは「オナカっち」なのです。

ここまで長々長々書きましたが、僕は「〇〇タッチ」を通して言葉の意味を学んでほしいというキクノスケへの強い想いからこの練習をずっとしてきました。

なので「オナカっちカワイイからいーじゃーん」などというのは僕には到底受け入れられませんでした。オナカとタッチは絶対に分けられるべきなのです。

オナカっちはキクノスケのこれからの長い言語学習において致命的なバグになるのではないか。

キクノスケには絶対に「オナカ・タッチ」と言わせなければならない。

そこで僕はあるときから”タ”をとても強調して言いながらキクノスケにタッチをするようにしました。

以前にもまして僕の情熱的なタッチ指導がキクノスケに行われるようになりました。

結果こうなりました。

というわけで僕はこのことについて深く考えたり悩むのはもうやめようと思いました。

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