第3章 「未練の館」
あの事件以降、数日間特に変わった様子はなかった。とはいえ、通常業務が無くなるということではないので、平常運転で1人のホテルマンとして勤めていた。
この数カ月間で沢山の出来事があり、社会人1年目としては非常に疲弊していた。その様子を見て、何かを感じ取った副支配人が声をかけてくれた。「菊田さん、有休残っていますよね?色々ありましたし、少し息抜きしてみてはどうですか?」といつもの優しい声質で語りかけてくれた。確かに、勤務表を確認すると有休残数が4ほど残っていた。なので、私は副支配