第2章 「相棒 下」


 とりあえず、私達は様子見をすることにした。彼女のチェックアウトは、1週間後だからまだ時間あるね。と言ってこの日の話し合いを終わらせた。
 次の日の夜勤明けの朝、日勤の人達に渡す引継書を作成していた時に6つ上の女性の先輩が突然、「菊ちゃん、新絡美女泊まってるの!?てか、あの人って自殺で亡くなったんじゃなかったのかなぁ?生存していること隠して密かに過ごしていたのかなぁ?」と矢継ぎ早に聞いてきた。私はその勢いに押されていた。「先輩、落ち着いてください。というか、新絡美女のこと知っているんですか?」と聞くと、「美女が出てるドラマを何年か前にたまたま見て、いいなぁって思ったんだけど翔斗君と熱愛発覚してからあまり見なくなったんだよねぇ。」と答えてくれた。私は続けて、「え?輝翔斗も好きなんですか?」と聞くと、「うん。何なら、スパビのファンクラブ入ってるよー」と言いながら会員証を見せてくれた。話の続きをしたかったが、先輩は着替えなくてはならないので「また、あとでね」と言いながら更衣室に向かった。
 その後、引継ぎが終わった直後先輩に連絡先だけ聞いて私は退勤した。そして、私は帰宅後すぐに動画サイトでスーパービター略してスパビの動画を見た。ファンの人の中にはメンバーの紹介動画を掲載してくれている人や各メンバーのまとめサイトを作ってる人も居たので、探しやすかった。そして、私はとあるまとめサイトに出会った。そのサイトのタイトルには、「スパビ 輝翔斗と女優 新絡美女の馴れ初め」となっていた。私はすぐにそのサイトを開き、一通り読み終わった直後、家のコピー機でコピーした。さらにそのサイトには関連記事もあったのでそれもコピーした。ちなみに、善ちゃんは疲れたのか横でスヤスヤ寝ている。その間に私はやれることをやっていた。その上で、多数の関連記事やサイトをまとめてみた。
 「2人は5年前にドラマで共演してから付き合うようになった。しかし、輝の事務所は付き合っていることに反対した。そして、事務所にも極秘で付き合うようになった。しかし、付き合って2年後。あるファンのネットの書き込みによって付き合っていることがバレてしまい、無理矢理別れさせられてしまった。それから、美女はそのショッキングな出来事から抜け出せなくなり、1年後に抗精神薬の過剰投与で入院したのと同時、治療に専念するために女優業を休業した。しかし、治療も上手くいかず入院先の病院の屋上から飛び降りてしまった。僅か30歳という歳でその障害を自ら終了させてしまった。」と多数のまとめサイトをまとめるとこのように書かれていた。葬式は家族葬であったため、輝は葬儀に出席していないというかさせてもらえなかったとも書いている記事もあった。
 私は、彼女に関する多くの記事を読んでいると確かに、輝に対しての好意は感じるが、依存心とまでは行かなかった。そう思っていると善ちゃんはぬくぬくと起床した。そして、私はあることを思いついた。今日含めた3日間休み。だから、これを実行しようと考えた。いい考えだと思い、ニヤニヤしていると善ちゃんが寝起きの声のまま「ニヤニヤしていて気持ち悪いね。」と少し引き気味に言った。そんな彼にお構いなく私は、「善ちゃん、協力してほしいことがあるの!」と食い気味に言った。善ちゃんは苦笑いをしながらも聞いてくれた。
 私は善ちゃんに自分が考えている作戦を話した。「善ちゃんの姿は今は私にしか見えないんでしょ?そしたら、輝 翔斗を尾行して欲しいの。そしたら、何か分かるかも知れない。美女に関しては、本当に女郎蜘蛛だったら、妖怪同士だとやりづらい部分も出てくると思うから、私がそっちは尾行する。この今日含めた3日間で必ず重要事項掴んで、成仏させてあげよう。」と言った。すると、善ちゃんは、「でも、その輝ってやつのスケジュールとか分からないだろう?どうするんだよ。」と聞いてきた。私はその問いに対して「待ってました。実はも把握済み。さっき、先輩が昼休みの時間を使って今でも輝 翔斗を押していたらマネージャーになってしまったって人と知り合いらしくて、その人から独自に情報貰ってくれたんだって。」と返した。善ちゃんはその話を聞いて、「それって、プライバシー的にアウトじゃん。コンプライアンス違反じゃね?」と返してきた。だが、私は「今はしょうがない。とりあえず、私だったら怒られるけど善ちゃんなら大丈夫。」と言った。善ちゃんは呆れながら「まぁ、これ以上の詳細は聞かないでおくよ。とりあえず、やるか。」と言い、私もその言葉に続けて「オー!!」と言った。そして、壮大な探偵ごっこが始まった。
 私は、新絡 美女の方の尾行を始めた。彼女はホテルを出てそのまま駅に向かっていた。そして、日比谷駅に降りていった。歩いている道中や電車の中などスマホ人間の多いこの世の中で皆彼女に注目していた。散歩中の犬でさえもだ。そんなことを心のなかで実況しながら歩いていると彼女は図書館に立ち寄った。私も一緒に中に入った。すると、彼女は入ってすぐの大階段を上がり、3階に着き、緑色の芸術ゾーン側の景色が見える席に荷物を置きに向かった。私は彼女にギリギリ見えない位置の個別ブースのような席に座った。その後、彼女は立ち上がり何冊か本を持ってきて読んでいた。その本の表紙を見るとなんと、妖怪関連の本ばかりであったのだ。私は自分の席から見える限り、持っていたメモ帳に本のタイトルを書いた。しばらくして、彼女はトイレに向かった。その間に私は彼女が自分の席に持っていていた本のタイトルを全て記録した。そんなことをしている間に彼女は戻ってきてしまったので、急いで自席に戻った。
 その後、彼女は満足したのか本を片付けすぐに図書館を出た。私もその後をついていこうとした瞬間に、彼女はバッ!と突然振り向いた。私は驚いて咄嗟に昨日白に隠れることが出来た。何もないと理解したのか彼女はまた歩き始めた。私も安堵し、後ろを付いて歩いた。
 一方、その頃善ちゃんは輝のマネージャーから貰ったスケジュール表を手に持ち、彼がいるバラエティー番組の現場にたどり着いた。善ちゃんが憑いた時はまだ、撮影中だったので観覧席の隅っこに座って見ていた。数十分後、番組が終わり、輝が移動を始めた。善ちゃんも急いで追いかけた。輝は自分の楽屋に入っていった。善ちゃんは再度スケジュール表を確認した。すると、この日の仕事は終了していたのでおそらく着替えているのだろうと思い、善ちゃんは楽屋の前にある自動販売機の後ろに潜んで、出てくるのを待っていた。眠いなぁ、早く出てこいよ〜。と思いながら待っていると、善ちゃんの予想通り輝は私服に着替えて楽屋から出てきた。善ちゃんも眠い目をこすりながら、彼に付いていった。
 彼は待っていたタクシーに乗ってしまったので、善ちゃんはタクシーのトランクの中に急いで通り抜け、潜むことが出来た。そして、善ちゃんは車の振動が気持ちよかったのか思わず寝てしまった。すると、いつの間にかタクシーが止まっていたので急いで降りると輝を見失っていた。善ちゃんは、「まずい。きくちゃんに怒られる!!」と思いながら必死に探しているとお花屋さんから輝が出てきた。「ラッキー!」と言い、輝が行く方向に付いていった。
 付いていった先は、なんとあるお寺の中にある墓場だった。そのまま輝に付いて行くと1つのお墓に辿り着いた。そのお墓の側面に書かれている名前を見ると、「雲田 美女」と彫られていた。輝はそこに、持っていた花束を置いて泣いていた。善ちゃんは、驚きの表情を見せながらスマホで写真を撮った。ちなみに、このスマホは外出する前にきくちゃんに、「これで、写真として記録して!パソコン使えるのなら、スマホも使えるよね?」と半ば強引に渡されたものだった。そして、しょうがなく連写した。輝はお墓の前で何か話していた。善ちゃんはその口ずさんでいる言葉を聞くため、美女のお墓の後ろに移動した。そのまま持っているスマホで録音もした。録音しながら、善ちゃんは輝の言葉を聞いて衝撃を受けながらもスマホを手放さなかった。
 その後、輝は家に帰っていったので善ちゃんはそれを確認し、自分も帰ろうと思った瞬間にきくちゃんに会ったのだ。きくちゃんが見ている方向に目を向けると、雲田美女が歩いていたのだ。善ちゃんはきくちゃんの方に移動し、彼女の背中をちょんちょんと突っついた。すると、きくちゃんは分かりやすい驚きをしながら「善ちゃん!なんで、いるの?」と聞いてきた。善ちゃんは素直に「このマンション、輝 翔斗の家だぞ。」と答えた。すると、きくちゃんは「てことは、美女さん、輝さんに会いに行くってこと!?」と発言した。善ちゃんもその言葉を聞いてまずいと思い、きくちゃんを引っ張ってマンションの中に入っていった。
 部屋はどこかとポストの名前を二人で探した。この時は冷静ではなかったので(輝 翔斗)は本名ではないんじゃないかというのを気にせず探していた。すると善ちゃんが「あった!」と大きな声をあげた。なんと(輝 翔斗)は本名だったのだ。二人で「不用心だなぁ」とハモった。そして部屋番号を確認後、管理人さんに「私の兄がここに住んでいるのですが、今日会う予定が会ったのに鍵を忘れてしまったので、ここを開けてほしいです。」と言った。管理人は、「あなたの名前教えなさい。」と告げた。名前!?と困っていると、善ちゃんが横から「星に奈良県の奈で星奈だ。あいつがタクシーの中でlINEしていたんだ。」と言ってくれた。私は善ちゃんが言ってくれたことをそのまま書いた。すると、管理人は輝に確認しているのであろう内戦で確認していた。そして、管理人は入口を開けてくれた。私は「ありがとうございます。」と告げ、急いで部屋に向かった。
 輝の部屋に着き、インターホンを押そうとした瞬間に「やめてくれ。」という輝さんの叫び声が聞こえた。輝さんは本当に妹さんと思ってくれたのかドアが開いていた。その開いているドアを申し訳ない。と思いながら、勢いよく開けた。
 部屋に入った瞬間、目の前には蜘蛛の姿になっている美女が輝さんを襲おうとしていた。輝さんは私を見て、目を見開いて「誰?てか、妹じゃないじゃん!」と言った。が、そんなことを気にしても居られずその発言を後に顔をすぐに美女の方に向き直した。私は説明を始めた。「騙してしまって申し訳ございません。ですが、私は今あなたの目の前にいる彼女に関して相棒と共に調べていました。調べていた最中に彼女がこのマンションに入っていったので、気になり入ってしまいました。」と告げた。彼は相棒?と言いながら私の周りをチラホラ見ていた。すると私の後ろに居た善ちゃんがどうも。と会釈をした。その姿を見て輝さんはさらに驚き、そのまま気絶してしまった。
 ありゃりゃと善ちゃんと二人で言っていると、今度は美女さん、いや女郎蜘蛛が話し始めた。「あなた達、何なの?邪魔しないでよ。今から彼も私と同じように殺して、あの世で二人だけで過ごそうと考えていたことを実行しようとしたのに。」とこの前の姑獲鳥のような低い声で話した。
 私はそう話す彼女に「あなたは、女郎蜘蛛という妖怪に取り憑かれています。ですから、今のこの状況はあなたの本心ではないですよね?このようなことは辞めましょう。」と言った。私の発言に彼女は「分かってる。だって、これは私が望んでやっていることだもん。」と答えた。私は善ちゃんと目を合わせ、「どういうことですか?」と聞いた。彼女は輝さんを襲おうとする手を下ろし、私達に自分のことを話し始めた。
 雲田 美女(新絡 美女)は、医者である父親とCAの母親の元に生まれた。彼女の父親と母親はたまたま趣味の映画巡りをしていて、ある映画を見ている時に近くに座っていた母親を見て父親が一目惚れしたことから付き合い始め、結婚したとのこと。ただ母親は美女を産んですぐに病死してしまった。それからは医者の父親がシングルファーザーとなり、親子2人で生涯を過ごすことになった。その後、美女は父親から母親の話をよく聞かされていたのが影響してCAを目指すことにした。そして石川県の航空学校に通い、見事ANAに就職した。母親と同じCAになれた美女は母親によく似ている影響もあり、美人CAとして有名になった。
 そんなある日、彼女にとって転機となる出来事が起きた。彼女は大阪の関西国際空港に向かう飛行機に搭乗した。その時に1人の男性に出会った。それはまだデビュー前の初々しい輝 翔斗だった。彼女は彼に一目惚れした。そして彼も同じだったのだ。すると、その時付き添っていた当時の輝のマネージャーが彼女に「芸能事務所に興味ないか。」と名刺を渡した。その後、彼女はこの出来事を逃してはいけないと思い、すぐにCAを辞めた。そして、名刺の電話番号に電話をしすぐに芸能事務所に入ることになった。彼女の父親は、自分の娘が楽しそうにしていたので快くOKした。
 それからの彼女の芸能生活は華やかなものだった。そして、ドラマの共演で再会した輝と内密に付き合うことも出来、幸せな生活を送っていた。しかし、事件が起きた。それは、ある週刊誌の記事に「輝 翔斗と新絡 美女、真剣交際か。」と書かれていた。そして、その記事には隠し撮りもしっかりあった。それを見た当時の社長が2人を問い詰めた。その時に社長は「輝、お前は今が大切なんだ。小さな時から世話してやった恩は忘れてないよな?美女、お前は最近演技力も落ちていると言われ始めている。俺はお前に関してはもう世話をするつもりはない。今は輝のほうが大切だ。分かるだろう?身を引いて欲しい。少し休め、美女。翔斗はどうする?」と社長は長々と理不尽な発言をして彼らに詰め寄った。
 美女は、きっと彼なら守ってくれると思っていった。しかし、輝は「俺は、これからもずっとこの仕事を続けて行きたい。美女、ごめん。」と美女のことを裏切ったのだ。彼のこの様子を見て美女は、絶望の淵に落とされた。とりあえず、美女は一旦帰宅することになったと同時に文書で活動休止をするという声明文を書くよう、会社側に言われてしまった。美女はもう何もかもどうでも良くなってしまったので、素直に受け入れ書いてしまった。そして、帰宅した。だが、これで美女にとっての地獄は終わらなかった。
 美女が帰宅後、彼女のスマホに何件も着信が入っていた。それは、父型の親戚の人だった。その番号に彼女はかけ直してみたのだ。そして、親戚の人は美女に久しぶりだね〜。と挨拶すると、「実はね、兄さんが今朝方急死したの。クモ膜下出血みたいで。お仕事忙しい時に何回も電話してごめんなさいね。でも、早く伝えなくちゃと思って、」と親戚の方が話しているのを遮って美女は「どこの病院?今から向かう」と焦りながら返事し、電話を切った。病院に着き、受付にて名前を言い病室に案内されるとそこには、幸せそうな顔で横たわる父親の姿があった。美女はその場で膝から崩れ落ち、大号泣した。そして、主治医に亡くなった経緯について聞き、その1週間後に葬儀を執り行った。父親の遺言によって遺産の約7割が美女の物になったのだが、美女は遺産放棄した。そして、その権利を親戚達に譲った。その後、彼女は人の視線や幻聴などが気になるほど精神を病み、部屋に閉じこもってしまった。カーテンも開けずに真っ暗の世界で過ごしていた。外に出るのはゴミ出しと郵便物を取りにポストに行くときのみだった。その時も、周りの目が気になるため、フードを被り、マスクとサングラスをして外出していたのだ。
 そんな生活から1年が経った。何もかも失った美女は、真っ暗の世界での生活を続けていたある日、彼女は闇サイトで抗精神薬を購入しそれを一気に飲み、そのまま永遠の眠りについた。だが、彼女は目覚めた。しかし、その姿は人間ではなく蜘蛛の姿だったのだ。彼女は驚いたが、なぜか、開き直った。そして、自分をここまで追い込ませたやつを殺さなくてはならないという使命感に駆られた。そう、それは輝 翔斗を殺す。そして、自分は成仏するという使命にだ。
 そう、自分のことを語り終えると、美女はその場で子供のように号泣し始めた。すると、きくちゃんが彼女に近づいた。善ちゃんはそのきくちゃんの行動を見て、一度は止めようとしたが、彼は姑獲鳥の時のように解決してくれるという思いからきくちゃんのことを信じて止めなかった。そして、きくちゃんは美女を優しく抱きしめた。美女は驚いていたが、母親に抱きしめられたことがなかったために手を振り切らずに抱きしめ返した。
 その姿を見て、善ちゃんが話し始めた。「女郎蜘蛛、いや美女さん。貴方は誤解している。その男は君のお墓に向かってこんなことを言ってたんだ。―ごめん、美女。あの時は、守れなくて。もう、あの日には戻れないし、俺の罪は消えないよな。けど、俺は誓った。君が大好きだったこのシロタエギクの花の花言葉のように、俺は誰かを応援できるような支えになれるような人間になる。だから、見守ってて欲しい。自分勝手なお願いで申し訳ない。ただこれだけは信じて欲しい。もう、誰も君のようには死なせない。―って言っていたんだ。」そう善ちゃんが話し終えると、美女さんは私の手を振りほどき、輝さんにそっと近づいた。そして、「覚えてくれてたんだ。私の好きな花。私、間違ってたわね。あなたのこともう一回信じていいかな?」と彼の顔にそっと、手をかざした。私はその手の上にさらに自分の手を重ねた。そして、「申し訳ないですが、人間は過ちを犯してしまいます。ですが、その過ちから逃げずに生涯を過ごしていかなくてはなりません。逃げずに良いことをしてルミが消えるということではないかもしれません。でも、必ずその戦っている姿を見てくれている人は居る。だから、諦めずに立ち向かわなくてはなりません。なので、美女さん。彼のことを貴方が見てあげてください。こんな部外者が偉そうなこと言ってしまい、申し訳ございません。ただ、私がさっき伝えたことは忘れないで欲しいです。」と伝えると、美女は優しく微笑んで消えてしまった。
 美女さんが消えた直後、やっと輝さんが目を覚ました。輝さんは驚きながら、彼女は消えたのか?と聞いてきたので、私は自己紹介もしつつ先ほどあった出来事を伝えた。そして、輝さんが美女さんのお墓の前で話していたことも伝えた。恥ずかしそうにしていたが、彼は「伝えてくれてありがとう。彼女のお墓の前で言ったことをしっかり貫き通す。じゃなきゃ、彼女に怒られちゃうからね。」と美女さんが消えていったときのような優しい笑顔を見せた。私はその笑顔を見た瞬間に、2人はそっくりなんだ。運命の人同士なんだなぁ、縁って半端ないなぁ。と思った。
 私と善ちゃんは帰宅し、二人でベッドにバタンキューした。そして、そのまま2人で寝てしまった。そして、あっという間に出勤日になった。それまでの日々は怒涛の日々だった。輝さんはアイドルを辞め、芸能界からも退いた。そして大学に入学し直し、児童養護施設を設立するために福祉学について学び直しているとのこと。
 そして、ホテルに残っている彼女の宿泊記録はいつの間にかNo Foundとなって消えていた。そして、チェックイン対応したアルバイトの人に美女さんのことについて聞いたら、「そんな人いましたっけ?」という回答を言われたのだ。私は、そっか。全部消えてしまったのか。としんみりとしてしまった。
 ただ、1つだけ消えていない物があった。それは、この横に居る善ちゃんだ。善ちゃんに私は「なんで、まだいるの?」と聞くと、善ちゃんは笑顔で「え、俺はずっときくちゃんの傍に居て助手としてお供するって言っただろ?これからもよろしくな。」とキメ顔に追加で親指を立てるポーズをしてきた。私は、「まじかぁ!!」と大きな声で言ってしまった。その瞬間皆がこっちに視線を向けた。私は、あははと苦笑いをした。そして、私も善ちゃんと同じポーズをして「これからもよろしくね。」と小さな声で言いながら、グッジョブポーズをすり合わせた。
 
 そして、また新たな事件が起きる。相棒とともに・・・。

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