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【書評】こんなんいかが?

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忘れた頃になんども読み返す愛すべき紙の束。カバーについた手指の脂、紙の匂いと手触り。それはともに過ごした時間の記憶。本はもはや生きもの。
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#エロティシズム

「装いせよ。我が魂よ」果敢にしてオトコマエな小川洋子と山田詠美。魂が美しくあるには、装いこそ必要。

「装いせよ。我が魂よ」果敢にしてオトコマエな小川洋子と山田詠美。魂が美しくあるには、装いこそ必要。

「文学は懐が深い。テーマにならないものはない」
 作家の小川洋子さんはそう言い切る。それでも自身、苦手な分野があるといいます。
 それが「性・官能」をモチーフとする分野。
 
 なるほど、上品なイメージがある彼女の作品。でもそれとは裏腹に、弟の肉体を密かに慕う姉だったり、妊娠した姉に殺意を抱く妹だったりと、書くテーマは禁断領域に軽々と踏み込んでいます。
 透明感をまとった穏やかな言葉遣いに身を任せ

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エロティシズムをセクシュアリズムから切り分けた男。澁澤龍彦。

エロティシズムをセクシュアリズムから切り分けた男。澁澤龍彦。

「エロティシズム」 澁澤龍彦 (中公文庫)弱さの打破

 エロティシズム3部作を代表する一冊。
 「エロ」と「エロティシズム」はまったく異なるんだと、解説の巖谷國士さんが強調されています。性産業としてのエロは、エロティシズムではなくてセクシュアリティの商品化でしかないというわけです。

 仏文学者・澁澤龍彦の功績は、エロティシズムをセクシュアリズムから切り分け、精神性のものとして表の世界に堂々

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